「68」カテゴリーアーカイブ

ツーソン・ジェム・ミネラル&化石ショーを訪問して

2025年4月PDFNo.68

CGL リサーチ室 江森健太郎

2025年2月3日より7日にかけて、筆者はツーソン・ジェム・ミネラル&化石ショー(以下ツーソンショー)に参加しました。ツーソンショーは、世界最大の宝石・鉱物・ジュエリー・化石の展示会です。本稿ではツーソンショーへの参加方法、ツーソンショーの歴史・魅力や世界の宝石・鉱物市場の状況、現地で出会った研究者たちとの交流を報告します。

アリゾナ州といえばサボテン。
街中のあらゆるところに生えています。

◆ツーソンショーに参加するには

ツーソンショーは、毎年1月下旬から2月にかけてアメリカ合衆国アリゾナ州ツーソン市の複数の場所で開催されます。2025年は1月23日から2月18日にかけて開催されました。日本からアリゾナ州ツーソン市までは飛行機の直行便はないため、乗り継ぎが必要になります。乗り継ぎの空港は、ロサンゼルス国際空港またはサンフランシスコ国際空港を利用することが一般的です。今回筆者はサンフランシスコ国際空港で乗り継ぎを行いました。フライトの時間は合計11~12時間程度ですが、ツーソンと日本の時差は16時間あります。筆者は2月2日17時のフライトで成田空港を出発しましたが、ツーソンに到着したのは現地時刻の2月2日の17時でした!
また、アメリカに渡航するために必要な準備として、最大90日間のアメリカ旅行の際にビザ免除プログラムに基づき、ESTA(Electronic System for Travel Authorization)の申請が必要になります。このESTAは米国国土安全保障省(DHS)より2009年から義務化されており、この申請をしないと航空機の搭乗やアメリカへの入国が拒否されます。ESTAは公式サイトで申請することが一般的で、21 US$(アメリカドル)かかりますが、ESTAの申請を仲介するサービス業者を使用してしまうと何倍もの費用がかかるので注意が必要です(google等でESTAと検索すると仲介業者のサイトが検索上位に表示され、アメリカのESTA登録公式サイトと間違うようなWebサイトとなっています)。
ツーソンショー自体の参加には、一部事業者登録が必要なもの(後述するAGTAジェムフェアー・ツーソンやGJXショー等)もありますが、それ以外は、事前登録は不要(必要な場合は現地の受付で登録が可能です)なものが多く、ツーソンに到着してしまえば、ショーを楽しむことが可能です。

◆ツーソンショーの歴史と魅力

ツーソンショーは、先述の通り、アリゾナ州ツーソン市内の複数の場所で開催される宝石、鉱物、化石の展示会です。世界中からコレクター、ディーラー、愛好家が集まり、多種多様な宝石、鉱物、化石が展示・販売されます。メインショーと呼ばれる「ツーソン・ジェム&ミネラルショー」は1955年に一番初めに開催されたショーであり、今年で70周年という記念の年になります。「ツーソン・ジェム&ミネラルショー」は小学校で開催された小規模なイベントでしたが、年々規模が拡大し、現在では世界最大の宝石と鉱物の展示会の一つとなっています。

アメリカ合衆国の地図とアリゾナ州ツーソンとサンフランシスコ、ロサンゼルスの位置関係

2025年は小規模な展示会から大規模な展示会まで合わせてあわせて46の展示会が行われており、うち2つが今年スタートした展示会です。また、ほとんどの展示会は一般公開されていますが、一部の展示会(GJX、AGTA) は事業許可証の登録が必須となっています。宝石、鉱物、化石、ジュエリーなどの展示と販売が行われるだけでなく、教育プログラムやワークショップも提供されています。ツーソン全体がこのイベントに参加し、街中が展示会場となるため、訪れる人々にとっては一大イベントとなっています。メインショーであるツーソン・ジェム・ミネラル&化石ショーの開催期間の最後の週の開催(2月13日~2月16日)であったため、筆者は参加できませんでしたが、期間中数多くのショーを見ることができました。

◆ツーソンショーガイド

ツーソンショーでは沢山の展示会が行われていますが、今回筆者が訪れた展示会の中からピックアップして、その展示会の様子と特徴を紹介します。なお、写真として掲載したブースの写真またはサンプルの写真はすべてブースのオーナーから許可をいただいております。

今回紹介する主要な展示会のリストとその位置
(A)AGTA ジェムフェアー・ツーソン

ツーソンにおける一部の宝石ディーラーたちは既存のショーへの参加条件に不満を持っていました。彼らには独自のショーが必要であり、ディーラーの利益をはぐくむ協会が必要でした。そのディーラー達によりAGTA(American Gem Trade Associationの略)が設立され、1991年にAGTAとAGTAが主催するジェムフェアー・ツーソンが誕生することになりました。AGTAはアメリカとカナダの宝石業界の色石と養殖真珠産業の長期的な安定を促進することを目的としています。教育プログラムや広報活動、業界イベント、政府および業界との関係、出版物を通じ、その目標を追求しています。現在ではアメリカとカナダで1200以上の会員を持つ大規模な組織で、業界内で最も高い倫理基準を維持しています。
ジェムフェアー・ツーソンは、ツーソン・コンベンションセンターで開催されます。入場に必要となる登録会場は、例年人が非常に多く、列に並ぶため登録に時間がかかると聞いていましたが、ストレスなく登録を終え、会場にスムーズに入ることができました。後に聞いた話では、今年は来場者が非常に少ないとのことです。筆者が今年訪れた他の展示会場においても、人が多くなかなか見ることができない、といった場所はありませんでした。

AGTAジェムフェアー・ツーソンの会場入り口

 
ツーソン・コンベンションセンターの登録会場の様子

ジェムフェアー・ツーソンの会場では、合成石(合成ダイヤモンド等)の販売は完全にシャットアウトされており、販売されているものは天然の色石、ダイヤモンド、養殖真珠とそれらを用いたジュエリーになります。販売されている色石の原産地は、ブルーサファイアであればスリランカ、ルビーであればミャンマーかモザンビーク産、エメラルドはコロンビアまたはザンビア産、パライバ・トルマリンはブラジル産といったものが大多数を占めます。サイズが大きいものに関しては他の原産地のものもみかけますが、相対的にブランドイメージが高い原産地のものが多く並べられているという印象です。


AGTAジェムフェアー・ツーソンの会場の様子(上:メイン会場、下:ボールルーム)

ジェムフェアー・ツーソンでは、GIA、SSEF、Gübelinといったラボが出張鑑別ラボを出展している他、AGTAセミナー・シリーズと称して16件のセミナーが行われました。筆者はGIAのリサーチフェローであるJames E. Shigley氏の「The Changing World of Gemology: A Look Back and a Look Forward」、GIAのAaron Palke、INSTORE誌のマネージングエディターであるEileen McClelland、AGTA、Rapapot、INSTORE、Professional Jeweler誌のJennifer Heebner、GEM-A発行のThe Journal of Gemmology誌編集のBrendan Laurs誌によるパネルディスカッション「From Science to Social Media: How Trade Media Engages With & Covers the Jewelry Industry」の2件を聴講しました。ツーソンショーに訪れている方々は宝石、鉱物を探しにきている方が多いからか、セミナー会場にはあまり人がいませんでしたが、内容は非常に濃いものでした。前者「The Changing World of Gemology: A Look Back and a Look Forward」は宝石学の歴史、それは1920年代の真珠裁判による天然真珠と養殖真珠の鑑別の話に始まり、現代まで、そして近代使用されるようになった新しい機器分析についての使用されるにいたった経緯、そして現在の宝石学において解決しなければいけない諸問題(天然・合成や、処理の看破が難しいもの等)について語られました。また、後者の「From Science to Social Media: How Trade Media Engages With & Covers the Jewelry Industry」は宝石業界、宝石学に関する情報をソーシャルメディアでどう伝えていくかといったことについて4名の意見が交わされていました。宝石業界、宝石学に関する様々な雑誌が発行されていますが、雑誌を発行する諸団体の会員に対するメリットの保護と、オープンアクセスに関する問題、また情報をそれぞれの雑誌がどのような形でソーシャルメディアに発信しているかの意見交換が行われました。

講演を行うJames E. Shigley氏

 
パネルディスカッションの様子

(B)GJX (Gem & Jewelry Xchange) ショー

AGTAジェムフェアー・ツーソンが行われているツーソン・コンベンションセンターを道路で挟んで反対側の大きなテントで運営されているのがGJX (Gem & Jewelry Xchange、以下GJX)ショーです。GJXは1994年にわずか35ブースで初開催されましたが、現在ではカーペットが敷かれ、空調設備が整った超大型施設に700近くのブースが設置されており、ツーソン・ジェムショー史上最も急成長を遂げた宝石ショーと言われています。GJXショーは「業界向け卸売りのみ」のショーで、完成品のジュエリー、貴石および半輝石、宝石彫刻、宝石関連機器とパッケージに限定されており、入場は資格のあるバイヤーにのみ許可されていますが、入場に厳格な審査があるAGTAの入場バッジを有していれば、そのバッジにシールを一枚貼ってもらうことで入場可能になります。
GJXで取り扱う宝石は、AGTAジェムフェアー・ツーソンと同様、メジャーな原産地のものが多いのですが、それ以外の原産地のものもしっかり揃っているという印象を受けました。ブースに並べていなくても、ブースを出している方と直接話をすることで、在庫として持っているサンプルを見せていただけることが多くありました。写真としては掲載していませんが、トランプ大統領のカットが施された合成ダイヤモンド(https://lgdusallc.com/で閲覧可能です)は、筆者がブースを訪れた際は展示されていなかったものですが、ブースの運営者と会話する流れで見せていただきました。

GJXのテントのエントランス

 
GJXメインテントの様子。訪問客が非常に少ないことがわかります。

 
合成ダイヤモンドを取り扱うブースにて。アルファベットのデザインにカットされたCVD合成ダイヤモンド

 
合成ダイヤモンドを取り扱うブースにて。様々なカラーのCVDまたはHPHT合成ダイヤモンド。サイズは0.2ctよりも大きい。
 

オーストラリア産の宝石を取り扱うブースにて、様々な色をしたオーストラリア産サファイア。

 
ジオラマ風のディスプレイで目を引くブース。

(C)プエブロ ジェム&ミネラルショー

Puebloジェム&ミネラルショーは、ツーソンで毎年開催される宝石と鉱物の展示会の一つで、比較的歴史の長い展示会です。会場となるホテルの名称は何度か変更されていますが、現在は「Ramada by Wyndham」という名称です。この展示会場はAGTAジェムフェアー・ツーソンやGJXのテントから徒歩5分の距離でアクセスもしやすい場所にあります。
ホテルを丸ごと一つ使う展示会で、ホテルのロビーや中庭、会議室、さらには屋外のテントまで、広範囲にわたる展示スペースがあります。誰でも事前登録なしに入場可能で、ホテルのゲートをくぐると、いきなり目の前に巨大な鉱物を販売するブースが広がっています。宝石や鉱物の他、スピリチュアルグッズや民族工芸品など幅広い商品が陳列されていますが、主力商品は鉱物、鉱物加工品、ジュエリー、ビーズといったもので、ファセットカットされたルース石の販売は数が少なく、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルドといった四大宝石以外のもの、例えばトルコ石やクォーツ類(アメシスト等)のアイテム数が多い印象がありました。

Ramada by Wyndhamで開催されているPueblo ジェム&ミネラルショーの入口に設置された巨大な看板

 
会場入り口付近に設置された巨大な鉱物オブジェ。

 
入口付近は巨大な鉱物を取り扱うブースが並びます。

 
ホテルの会議室を利用して作られた展示会場

 
中庭に設置された巨大なテント

(D)22nd ストリートミネラル&化石ショー

22nd ストリートミネラル&化石ショーは、ツーソンショーの中でも特に注目されるイベントの一つです。このショーはEons Expos社によって運営されています。Eons Expos社は2009年設立のアメリカ各地で宝石・鉱物・化石の大規模な展示会を運営している企業です。そして、この22nd ストリートミネラル&化石ショーはアメリカで最も来場者数の多いショーとされています。一般に開放されており、誰でも登録なしに開場に入ることができます。会場の正門はGJXショーやAGTAジェムフェアー・ツーソンの会場からは徒歩20~30分ほどかかりますが、この22nd ストリートミネラル&化石ショーの会場は南北に非常に長く、北側にある裏門(正門は南側にあります)は、GJXやAGTAから徒歩10分以内で到着可能だということを知っておくと便利かもしれません。
メインテントとショーケースの2つの大きなテントが建てられており、ショーケースはブースのサイズが大きく、メインテントに比べより高級品が扱われています。どちらも、宝石、鉱物、隕石、ジュエリー、ビーズや恐竜標本まで幅広いアイテムが展示されています。宝石に関してはレアストーンなども売られており、珍しい標本を探すのであれば、訪れる価値ありといった場所です。


22nd ストリートミネラル&化石ショーのショーケース(左)、メインテント(右)の入口。両者は向かい合っています。ショーケース側は入口が1つのみで警備員が常駐しています。

 
メインテントの中の様子

 
販売されている恐竜標本

 
ショーケースで販売されていたベニトアイト。最大のものが0.99 ctで8500 USD、最小のものが0.75 ctで4125 USDでした。

 
メインテントで売られていた蛍石。段ボールに大量に詰め込まれて販売されている様子はツーソンショーの各所で見られました。

(E)JOGSジェム&ジュエリーショー

JOGSジェム&ジュエリーショーは、注目度の高い展示会の一つです。JOGSは「Jewelry, Ornament, Gemstones, and Supplies」の略であり、この展示会が扱う商材を示しています。宝石、ジュエリー、鉱物、化石、ビーズ、民族工芸品など、幅広い商品が展示されている他、ワークショップ等も開催されているようです。多くの展示会が集まる中心部から離れていますが、ツーソンショーでは定期的にシャトルバスが運用しており、JOGSジェム&ジュエリーショーと中心部をつなぐシャトルバスは30分に1本程度運行されているため、アクセスに不便は感じません。一般に開放されているイベントですが、入場には登録が必要であり、入場料が20USD必要でした(筆者が訪問した展示会の中で入場料を徴収されたのは、このJOGジェム&ジュエリーショーだけです)。
このショーでは、マスグラバイトといったレアストーンを中心に販売する業者の他、コランダム、エメラルド、アレキサンドライト等の合成石を販売する業者、メレサイズ合成ダイヤモンド等、さまざまな宝石類を見ることができました。写真で紹介はしていませんが、ミャンマー産のルビーや様々な産地のブルーサファイア等も販売されており、いろんなものがバランスよく揃った会場でした。

JOGS ジェム&ミネラルショーの会場入り口

 
ショーの様子

 
2.02 ctのマスグラバイト

 
エメラルド原石(大きい!)とカット石を販売する業者

 
合成コロンビア風エメラルドという名前の付けられた商材を出品する業者(フラックス法合成エメラルドです)

 
様々なカラーのメレサイズ合成ダイヤモンド(販売者によるとすべてCVD合成とのことです)

(F)G&LW ツーソン・ジェムショー/Gem Mall & Holidome

上に紹介したJOGSジェム&ジュエリーショーの近く(といっても徒歩で20分程度かかります、シャトルバスも有)で開催されていたG&LW ツーソン・ジェムショー/Holidomeは50年以上の歴史を持ち、世界中のバイヤーや出展者が集まる場として有名です。筆者が見た限り、ツーソンショーの中で最大の規模で、Cactus、Fiesta、Ball RoomとMarket、Holidomeの巨大な4つのテントがあります。入場には、Tax IDが求められましたが、海外からの来訪者はパスポート番号の提示でもよいらしく、筆者はパスポート番号を受付で記入し、入場することができました。出展内容は宝石、半貴石、ビーズ、ジュエリーですが、会場のほとんどがビーズを販売するブースで占められていました。

テントのうちの一つ、Fiestaテント。

 
会場の中ではビーズ商品で溢れかえっています。

 
ビーズを販売するブースが殆どを占めるが、ジュエリーを扱うブースも存在。

 
ハーキマーダイヤモンド(クォーツ)専門のブース。10 ct未満のサイズのものは10 pcs 30 USDで購入できました。

(G)RMGMツーソンミネラル&化石ショー

RMGM(Rocky Mountain Gems and Mineral)による55のブース小規模な展示会です。中心部から北に3 kmほど離れており、シャトルバスもありませんでしたが、この周辺では10の展示会が行われており、その中でもこのRMGMツーソンミネラル&化石ショーは最大のものでした。完全に一般開放されており、誰でもテントの中に入ることができ、展示物としては鉱物、化石、宝石、隕石、彫刻、ジュエリーです。中心部から離れた小規模な展示会場では、巨大な鉱物標本か、安価なジュエリー、お買い得な鉱物等を多く見かけることができます。狙ったアイテムを探しに行くのには不向きですが、気軽に入場でき、販売業者の方もフレンドリーな印象です。他、中心部ではあまりみかけないアフガニスタン産アウィンの原石(非加熱)を見ることができました。

RMGMツーソンミネラル&化石ショーのテント外観

 
会場内の様子。来場者は非常に少なく閑散としている。

 
巨大な化石標本を販売する業者

 
巨大なアメシストのガマや群晶

 
グリーン~ブルーのアフガニスタン産アウィン

 
様々な鉱物が量り売りのような形式で販売されているところ

(H)GIGM/ Red Lion Innジェム&ミネラルショー

GIGM (Globex International Gem & Mineral Show)ショーはMotel 6、Quality Innそして紹介するRed Lion Innの3か所で行われています。すべてホテルを使用した展示会で、ホテルの部屋、中庭等を用いて様々な鉱物・宝石・化石・ジュエリーが展示されています。完全に一般開放されており、フリーに入場できます。インドの業者が多く入っており、インド産の鉱物をたくさん見ることができました。

(左)Red Lion Innの外観

 
GIGM/ Red Lion Innジェム&ミネラルショーにて中庭の様子。大量のトルコ石の原石が並べられています。

 
インド産のカバンサイト

 
アメシストのガマに止まる蝶(クォーツ)

 

大量に投げ売りされているアリゾナ産ペリドット(上、下)

(I)グラナダギャラリー/グラナダミネラルショーケース
(J)ファインミネラルインターナショナルショー
(K)ツーソンファインミネラルギャラリー

グラナダギャラリー/グラナダミネラルショーケース、ファインミネラルインターナショナルショー、ツーソンファインミネラルギャラリー、この3か所は「鉱物標本の展示会場」です。宝石・ジュエリーの展示ではありませんが、本当に美しい鉱物標本が複数展示されています。AGTAやGJXがある場所からは徒歩20分ほどかかりますが、この3つの展示場は非常に近い場所にあり、訪れる価値はあります。

グラナダギャラリー/グラナダミネラルショーケースよりカルサイトとクォーツ

 
グラナダギャラリー/グラナダミネラルショーケースよりアズライトとマラカイト

 
ファインミネラルインターナショナルショーよりモルガナイト

 
ファインミネラルインターナショナルショーよりフルオライト

 
ツーソンファインミネラルギャラリーより巨大なクンツァイトの結晶

 
ツーソンファインミネラルギャラリーより巨大なトルマリン単結晶のスライス

(L)アリゾナ大学アルフィー・ノーヴィィル宝石鉱物博物館

ツーソンのダウンタウンにあるピマ郡庁舎の中に設置されたアリゾナ大学アルフィー・ノーヴィィル宝石鉱物博物館は2021年に開設された宝石と鉱物の博物館であり、GJX (Gem & Jewelry Xchange)の創始者であるアルフェナ”アルフィー“ノーヴィルに因んで命名されました。AGTAやGJXの会場から徒歩5分でアクセスでき、1200 m2のスペースを誇る展示会場には世界中から集められた100%寄付と貸出による3000点以上の標本が展示されています。展示は大きく「鉱物の進化」「アリゾナ産鉱物」「宝石」の3つのギャラリーに分かれており、インタラクティブなデジタルコンテンツ(ビデオ、写真、オーディオ)も多数あります。「鉱物の進化」では、地球の歴史でどのような鉱物が順に形成されてきたか、という地球史的な展示方法が行われている点が大変ユニークです。地球の鉱物だけではなく、アポロ15の月面着陸で得たサンプルや、オサイリス・レックスが入手した小惑星ベンヌのサンプル等も展示されています。また、宝石ギャラリーでは大粒のパライバ・トルマリンのネックレスの他、見事なアクアマリンのカービング等を見ることができました。毎年20%程度ローテーションされているとのことですので、ツーソンを訪れる際には、寄っていただきたいスポットだと思います。

博物館の名前の由来であるアルフェナ”アルフィー“ノーヴィルの肖像画

 
アリゾナ産ウルフェナイト

 
オサイリス・レックスによる小惑星ベンヌのサンプル

 
美しいアクアマリン結晶

 
大きなクォーツの日本式双晶、(右)

 
パライバ・トルマリンを使用したジュエリー展示

 
ドム・ペドロ・アクアマリンと名付けられたアクアマリンの見事なカービング

◆現地で出会った研究者の皆さん

ツーソンショーは、世界で一番大きい宝石・鉱物のショーであり、国際的に活躍する有名なジェモロジスト達も数多く訪れています。筆者もツーソンショーの訪問期間中、彼らと出会うことができました。彼らとの交流により宝石に関する情報交換や今後の宝石学についての意見交換等を行うことができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。ここでは、出会ったジェモロジスト達について紹介します。

IGC(International Gemmological Conference、以下IGC)のExective Committeeでもある、オランダのナチュラリス生物多様性センター地質学部門のJ. C. Hanco Zwaan博士(右)とスリランカのMincraft Companyを運営、ICA(International Colored Gemstone Association)のコングレス・コミュニティー委員会、またスリランカ大使を務めるGamini Zoysa氏(中央)。

 
IGCメンバーであり、Gemmological Association of Australia(オーストラリア宝石学会)の主催でオパールに関しての教育に力を入れているTerry Coldham氏(左)。彼はGJXにオーストラリア産鉱物を専門に取り扱うブースを所有していました。オーストラリア産鉱物についての情報は彼に聞くのが間違いないというくらい情報通で、頼りになる方です。

 
Emmanuel Fritsch教授はIGCのExective Committeeの一人でフランス・ナント大学で宝石学を教える大学教授です。先日筆者がGem-A発行のに2024年12月発刊のThe Journal of Gemmology誌に掲載された筆者の論文「Nano-inclusions Associated with Beryllium in Untreated Blue Sapphires from Diego Suarez, Madagascar」についてのコメントをいただいた他、美しい鉱物標本の展示を見ることができるスポット等教えていただきました。

Lore Kiefert博士(右)は、世界的に有名なジェモロジストで、SSEF、AGTA、グベリンで働いた経歴があります。現在はDr. Lore Kiefert Gemology Consultingを設立、彼女が有する莫大な宝石に関する知識・情報を業界に提供しています。

 
GEM-A発行のThe Journal of Gemmology誌編集Dr. Brendan Laurs。The Journal of GemmologyではCGLから複数の論文を出版しています。今後投稿予定の論文の話や、現在投稿中の論文についての話、また、宝石の原産地についての情報交換を行いました。
 

香港と中国でCentre for Gemmological Research (宝石学研究センター、CGR)の設立者のMiro Ng博士(左)とLotus Gemologyを運営しているRichard W. Hughesの娘であるE. Billie Hughes(右)と再会しました。二人ともIGCメンバーで、合成石の在り方や宝石のレポートについての意見交換を行いました。

◆最後に

筆者は、今回2025年、はじめてツーソンショーを訪れました。過去の盛況ぶりを見たことがないのですが、来訪者の数はかなり少なかったように見えました。しかし、展示されている宝石や鉱物の多様性や、その展示されている量はかなりのもので、世界一のショーを見ることができ、また、数多くのジェモロジスト達と交流することができたこともよい経験になりました。
日本国内では入手困難で、このツーソンショーに行かなければ出会うことが困難な鉱物・宝石とも多く出会うことができます。それらを入手することが宝石の鑑別の技術向上、また、CGLで現在行っている原産地鑑別で用いるデータベースのアップデートに繋がります。
来年以降もショーに参加し、引き続き情報を集める予定です。

アウインを含有するソーダライトの分析

2025年4月PDFNo.68

CGL リサーチ室 趙政皓・江森健太郎
CGL 色石鑑別課 岡野誠・胡昱瑩・間中裕二

図1. 3.762 ctの無色のソーダライト。
中には大量の青色のアウインインクルージョンが含まれている。

最近、多量の青いインクルージョンを含む無色透明石(図1)が鑑別依頼のため東京支店に持ち込まれた。この石は、無色の主体部分がソーダライト、青色のインクルージョンはアウインであることが明らかになり、鑑別結果はアウインインソーダライトである。アジューライトインソーダライトという当該石と類似した外観の石は知られているが、アウインインソーダライトは我々の知る限り宝石学的な文献がない。本稿は、当該石について詳細に分析を行ったので、その結果を報告するものである。

ソーダライトとアウインはともにソーダライトグループに属する立方晶系のケイ酸塩鉱物であり、ソーダライトの化学組成は Na4(Si3Al3)O12Cl、アウインは Na3Ca(Si3Al3)O12(SO4)2-である。両者の構造については、Na+ と Ca2+は同じサイトを占め、Clと SO42-は同じサイトを占める。ミャンマー産のアウインとソーダライトの混合物はGrobon & Hainschwang (2006)が報告されているが、今回調査した石は無色透明のソーダライト中にアウインのインクルージョンを含むという点で非常に興味深い。

ソーダライトの屈折率は1.450-1.487、比重は2.26-2.44であり、アウインの屈折率は1.498-1.507、比重は2.46-2.48であることが知られている。当該石は屈折率1.490、比重2.28であり、屈折率はソーダライトに近く、比重はソーダライトの比重の範囲内でアウインの比重とは大きく離れていることがわかった。また、前文で言及したミャンマー産のアウインとソーダライトの混合物は屈折率1.50、比重2.50であり、当該石とは大きく異なっている。

水に浸漬して観察したところ、明白に無色の主体と青色のインクルージョンにわかれており(図2)、青色のインクルージョンは丸みを帯びた薄片状であった (図3)。

図2. 水に液浸した本サンプルの拡大写真。主体のソーダライトが無色で、インクルージョンのアウインのみが青色を呈することが明らかである。

 


図3. 当該石に含まれる青色を呈するアウインインクルージョン。丸みを帯びた薄片の形状をしている。

顕微FTIRを用いた赤外領域の反射スペクトルを測定した結果、無色の主体部分のスペクトルがソーダライト、青色のインクルージョンがアウインのスペクトルと一致した(図4)。また、顕微ラマンスペクトルを用いて、当該石のソーダライト主体とアウインインクルージョンそれぞれ測定した(図5)。その結果、アウインインクルージョンのラマンスペクトルからは青色発色団であるS3•-による強いピーク(Chukanov et al. 2022)が検出されたが、主体のソーダライト部分のラマンピークはS3•-によるピークが検出されなかった。これはソーダライトの部分が無色で、青色を呈するのはアウインインクルージョンのみという観察結果と一致している。


図4. 当該石の無色主体部分と青色インクルージョンの赤外領域の反射スペクトル。それぞれCGLの所有するソーダライトとアウインの参照データと比較した。サンプルのスペクトルは赤色、参照データのスペクトルは緑色で示している。データは見やすくするためにオフセットしている。

 
図5. 当該石の無色ソーダライト主体部分(緑)と青色アウインインクルージョン(赤)のラマンスペクトル。主たるピークはS3•-とSO42-によるもの。データは見やすくするためにオフセットしている。

蛍光X線元素分析EDXRFによる化学組成の分析により、当該石の化学組成はソーダライトの組成Na4(Si3Al3)O12Clに近いことが明らかになった。微量元素として、S、K、Ca、Brが含まれているが、Grobon & Hainschwang (2006)が報告した石と違い、Srは検出されなかった。このことから、当該石と先行研究で報告されたアウインとソーダライトの混合物は違う産地から産出した可能性が高いと推測される。

表1 EDXRFによる本サンプルの化学組成とソーダライト、アウインの参照データ

この石の産地・産状については不明であり、具体的な形成環境については知ることができない。ソーダライトとアウインを共に産出できる地域は知られているが、当該石のように無色のソーダライト中にアウインをインクルージョンとして含む宝石は我々が調べた限り報告がなかった。我々は今後も引き続きこのような石の情報を追跡し、より多くの情報を提供できように努める。

◆参考文献

Chukanov, N. V., Shendrik, R. Y., Vigasina, M. F., Pekov, I. V., Sapozhnikov, A. N., Shcherbakov, V. D., & Varlamov, D. A. (2022). Crystal chemistry, isomorphism, and thermal conversions of extra-framework components in sodalite-group minerals. Minerals, 12(7), 887.
Grobon, C., & Hainschwang, T. (2006). Massive haüyne-sodalite from Myanmar. Gems & Gemology, 42(1), 64-65.