(2) 各産地における微量元素の差
図3にマンガン(Mn)と鉛(Pb)濃度をプロットしたグラフを示す。三重県志摩産のサンプルは他産地よりマンガン(Mn)の含有量が多いことがわかる。また、長崎県産の対馬・佐世保産については鉛(Pb)の量が多い。愛媛県蒋渕産と熊本県天草産サンプルはマンガン(Mn)、鉛(Pb)の量が分析した他の産地に比べ少ない傾向にあるが、一部の重複はあるものの個別のグループを形成している。しかし、マンガン(Mn) vs. 鉛(Pb)プロットのみだと、長崎県壱岐産と愛媛県蒋渕産のサンプルはオーバーラップする部分が多く、この2者の区別は困難である。
参考文献 (文献1) 正岡哲治(2005) 分子遺伝学的手法によるアコヤガイ属貝類の系統と種判別に関する研究. 北海道大学大学院水産科学位論文 (文献2) Kinoshita S, Wang N, Inoue H, Maeyama K, Okamoto K, et al. (2011) Deep Sequencing of ESTs from Nacreous and Prismatic Layer Producing Tissues and a Screen for Novel Shell Formation–Related Genes in the Pearl Oyster. PLoS ONE 6(6): e21238. doi: 10.1371/journal.pone.0021238 (文献3) 新井崇臣 (2007) 耳石が解き明かす魚類の生活史と回遊. 日本水産学会誌73(4),652-655
2022年2月2日〜 3日の2日間、GIT2021 The 7th International Gem and Jewelry Conference(国際宝石・宝飾品学会)がタイのチャンタブリとオンラインのハイブリッド形式で行われました。本会議にはCGLリサーチ室から3名がオンラインで参加し、うち1名が口頭発表を行いました。以下に概要をご報告致します。
GIT2021とは
International Gem and Jewelry Conference (国際宝石・宝飾品学会))はGIT (The Gem and Jewelry Institute of Thailand) が主催する国際的に有数の宝飾関連学会の一つです。第1回目は2006年で、以降は2〜3年に1回開催されています。今回は第7回目としてGIT2021が開催されました。本来であれば、2021年中に開催される予定でしたが、コロナ禍により延期となり、2022年2月の開催となりました。
GITはLMHC(ラボマニュアル調整委員会) にも属する国際的に著名な宝石検査機関であり、CGLと科学技術に関する基本合意を締結し、密接な技術交流を行っています。本学会はGITが主催していますが、タイの商務省などが後援しており、国を挙げての国際会議といえます。GIT2021の本会議運営のため、17名の諮問委員会が結成されており、CGLの堀川洋一もその一役を担いました。
講演は2/2(水)はタイ時刻午前10時(日本時刻午後0時)、2/3(木)はタイ時刻午前9時(日本時刻午前11時)から行われました。開催は、現地であるチャンタブリのマネーチャンリゾートとオンラインのハイブリッドであり、当研究所からはオンラインで参加しました。基調講演15件と一般口頭発表20件が行われ、基調講演は講演時間一人20分、一般口頭発表は一人15分でした。これらの発表の中で特に興味深かったものをいくつか紹介します。なお、弊社リサーチ室からは、一般講演で「The origin determination of “Paraiba” tourmaline using LA–ICP–MS-the methods of quantitative analysis and its application to samples with low Cu content-(LA–ICP–MSを用いたパライバトルマリンの原産地鑑別-サンプルの定量分析方法と、銅の少ないサンプルについて-)」というタイトルで江森健太郎が発表を行いました(この発表についてはGIT2021ウェブサイトhttps://www.git.or.th/git2021_en.htmlから視聴可能な他、CGL通信で別途掲載される予定です)。
タイ、チャンタブリで行われたGIT2021の会場の様子。
GIT2021にて発表するCGLリサーチ室の江森健太郎 (オンラインによるリモート参加)
Latest Advancements in Corundum Testing コランダム鑑別の最新情報
スイスSSEFのMichael. S. Krzemnick博士はコランダム鑑別の最新の進歩について発表しました。数十年間、コランダム鑑別は宝石ラボの主要な仕事の一つとなっています。近年、FTIRやRamanスペクトルなどを始め、様々な分析技術が用いられています。今回の発表においては天然と合成、加熱処理(特に低温加熱処理)、Be拡散処理、産地鑑別に用いる技術や手法などが紹介されました。最近SSEFではマダガスカル産ルビー中のジルコンクラスターに酷似したインクルージョンを持つフラックス合成ルビーを検査しました。このように拡大検査において識別が困難な場合でもVやMgなどの微量元素を正確に測定することで確実に識別することができます。また、産地鑑別には顕微ラマンスペクトルによるインクルージョンの鑑別と、LA–ICP–TOF–MSによる微量元素分析の他、現在ではジルコンインクルージョンに対する放射線年代測定が用いられています。年代測定により、鉱床の形成など産地鑑別に有用な情報が得られます。このように、顕微鏡観察などの古典的な方法と最新の技術を組み合わせることで、コランダムに対して細かくアプローチすることができます。
A Gemological Review of Blue Sapphires from Mogok, Myanmar ミャンマー、モゴック産ブルーサファイアの宝石学的レビュー