国際宝石学会 (International Gemmological Conference) 通称IGCは、宝石学における国際学会として最も歴史と伝統があります(http://www.igc-gemmology.org/)。この度、フランスのナントで行われた第36回本会議において、次回の国際宝石学会(IGC2021)を日本で開催することが正式に決定致しました。
IGCは国際的に著名な地質学者、鉱物学者、先端的なジェモロジストで構成されており、宝石学の発展と研究者の交流を目的に2年に1度本会議が開催されています。
本学会は、1951年にドイツのイーダーオーバーシュタインにおいてB.W. Anderson, E. Gubelin等によってフレームワークが形成され、翌1952年スイスのルガノで第1回会議が開かれました。発足当初はヨーロッパの各国で毎年開催されていましたが、近年では原則2年に1回、ヨーロッパとそれ以外の地域の各国で交互に開催されています。
日本からは近山晶氏、エドウィン佐々木氏の両名が1970年ベルギーでの第13回会議に初参加されています。1979年のドイツの会議からは宝石学会(日本)初代会長の砂川一郎博士も参加され、以降2007年のロシア会議まで砂川博士と近山氏の両名は日本代表としてご活躍されてきました。
一般講演は28日−31日と4日間に渡り行われました。各講演は質疑応答を含め20分で行われ、計48題が発表されました。うち、コランダム11題、ダイヤモンド8題、歴史・年代測定4題、真珠3題、産地情報3題、エカナイト1題、エメラルド1題、オパール1題、クォーツ1題、こはく1題、スピネル1題、長石1題、トルマリン1題、ハックマナイト1題、ひすい1題、ペッツォタイト1題、ペリドット1題、象牙1題、分析技術1題、その他5題でした。弊社リサーチ室から北脇が「Current Production of Synthetic Diamond Manufacturers in Asia」、江森が「Be–containing nano–inclusions in untreated blue sapphire from Diego, Madagascar」の2題発表を行いました。また一般講演中は会場の一部がポスターセッション会場となっており11件のポスター発表が行われていました。発表について、いくつか興味深いものを次に紹介します。
◆Phosphorescence of Type IIb HTHP Synthetic Diamonds from China
中国武漢にある中国地質大学宝石学研究室のAndy H. Shen教授は中国で製造されたIIb型HPHTダイヤモンドの燐光についての研究を発表しました。中国で製造され、ホウ素を含有したHPHT合成ダイヤモンドは470 nmを中心とする燐光を発します。グリニッシュブルーの蛍光を呈し、燐光時間は5–20秒でした。高濃度の「補償されないホウ素」を有するサンプルは565 nmを中心とする新しい燐光バンドを持ちます。こういったダイヤモンドの470 nmの燐光は時間と共に急速に減衰し、565 nmの燐光はより長く残ることを示しました。
◆Laser damage in gemstones caused by jewelry repair laser
◆Blue sapphire heated with pressure and the effects of low temperature annealing on the OH–related structure
タイのGIT(Gemological Institute of Thailand)のTanapong
3) Musée des Arts Décoratifs
アンティーク(1878年〜)から現在まで、4000点の素晴らしい宝飾品が飾られている。
“Jewelry Galley”として2004年6月にオープン。
江戸時代や明治時代の象牙や珊瑚の根付け、かんざし、くしなどもアールヌーボーやアールデコの作品と共に展示されていた。非常に緻密な象眼細工をパリで見ることができ見学者達の賞賛の声に日本人として誇らしい思いを持った。
2019年6月20日から21日の2日間、米国ワシントンD.C.のカーネギー研究所で開かれたアメリカ鉱物学会 (MSA, Mineralogical Society of America) の100周年記念シンポジウム (MSA Centennial Symposium: The Next 100 Years of Mineral Sciences) に参加した。文字通り、鉱物科学が今後100年でどのように発展していくかを議論するシンポジウムである。会場となったとなったカーネギー研究所のScience Buildingは、ホワイトハウスから真北に1.5 kmほどの距離にあり、Washington D. C.でも閑静な町並みの中にある。研究所に面した歩道の街路樹ではリスが愛嬌を振りまいていた(アメリカではリスは庭を荒らす害獣とみなされているはず)。(写真1,2,3)
初日の夜にスミソニアン自然史博物館で盛大にレセプションが開かれた(写真4)。正面玄関ホールの巨大なアフリカ象の剥製の前にステージが設置され、今回のワークショップのスポンサーでもあるGIA(Gemological Institute of America)のExecutive Vice Presidentを務めるTom Moses氏が冒頭の挨拶を行った。その後は料理や飲み物が博物館の展示ホールに用意され、貴重な鉱物展示をみながら参加者同士で情報交換を楽しむことができた。また、会場ではMSA100周年のロゴが入ったシャンパングラスが参加者に配られ、嬉しいお土産となった(写真5)。◆