去る 2017年2月1日(水)~3日(金)に韓国ソウル市のSeoul Jewelry Industry Support Center(SJC)を訪問し、最近の合成ダイヤモンドの現状と鑑別技術の話題を中心に情報交換を行いました。以下に概要をご報告致します。
Seoul Jewelry Industry Support Center(SJC)とは
Seoul Jewelry Industry Support Center(SJC)は2015年6月に開設されたソウル市のジュエリー産業を育成するための総合支援施設です。(https://www.seouljewelry.or.kr/eng/main/main.do)
SJCはソウル市のほぼ中心に位置するチョンノ3街(鍾路3丁目)にあります。この地は韓国ジュエリー産業のメッカであり、製造から販売までのジュエリー関連製品に関わる企業が集積しています。また、周辺には世界文化遺産に登録されている故宮(景福宮、昌徳宮)や宗廟(王と王妃の位牌を祀った儒教の祀堂)、韓国の伝統的家屋である韓屋(ハノク)の密集する地区である北村韓国村があり、朝鮮時代から近代までの歴史的な趣のある文化的地域です。SJCはまさに宗廟の外壁に面した閑静な場所に立てられています。
※Wolgok Jewelry Foundationは、株式会社LeeGoldの創業者として50年以上韓国のジュエリー産業に従事してきたイジェホLee Jae Ho氏が200億ウォンの私財を投じて2009年に設立した公益法人。韓国のジュエリー産業の健全な発展に寄与すべく、傘下にWolgok Jewelry Research Centerを有し、定期的に業況調査を行っている。
ダイヤモンド団体認定制度
韓国では消費者からの信頼を得るための正しいダイヤモンド・グレーディング文化の構築に向けての活動が長年にわたって行われてきており、その一環として2016年11月より「ダイヤモンド団体認定制度」が発足しています。この制度は“研磨されたダイヤモンドの鑑定”に関する韓国標準規格(KS D 2371)を基にしており、ダイヤモンド・グレーディングすべての平準化を目指しています。その最初の試みとして、日本と同様にマスターストーンを統一してのカラー・グレードの平準化が進められています。この制度の主宰は社団法人韓国貴金属宝石団体長協議会です。同協議会は材料、貴金属、研磨、加工、製造、鑑別、デザインなどの韓国のジュエリー産業に関わる10以上の団体から構成されています。カラーグレーディングのマスターストーンの選定を含む認定制度の実務は同協議会の傘下としてダイヤモンド鑑定団体認定委員会が組織され運営されています。このダイヤモンド団体認定制度の適正な管理・運営の活動の一環として2016年9月に社団法人韓国貴金属宝石団体長協議会会長Kim Jong–Mok氏、ダイヤモンド鑑定団体認定委員会委員長Cho Ki–Sun氏、Wolgok Jewelry Research Center所長Ohn Hyun–Sung氏、Seoul Jewelry Industry Support CenterのLee Bo–Hyun氏の4名がAGLを表敬訪問され、一足早く実施されてきた日本のマスターストーン制度について視察されています。
韓国のダイヤモンド・マスターストーンはGIA基準の12石(E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、S、Z)がそろえられており、その原器はSJCに保管されています。現在、この団体認定制度に加盟している鑑別機関は5社あり、加盟機関のグレーディング・レポートはデザインが統一されています。そのため書面を見ればすぐに認定制度によるレポートであることがわかります。この認定制度を推奨している販売業者はすでに10社以上あり、韓国のジュエリー産業で根ざしていくことが期待されています。◆
HRD(Hoge Raad voor Diamant)は、ベルギー・アントワープに本部を置く世界最大のダイヤモンド研究機関で、AWDC(アントワープ・ワールド・ダイヤモンド・センター)によって運営されています。世界で最も高い水準と信頼性をもつ鑑定機関の一つとして知られており、ダイヤモンド鑑別の分野において最先端の技術を有しています。また、世界ダイヤモンド取引所連盟(WFDB)および国際ダイヤモンド製造者協会(IDMA)の2大機関によって承認され、国際ダイヤモンド審議会(IDC)の基準に準拠している国際的研究機関でもあります。さらにHRDはダイヤモンドのグレーディングのみならず、教育、器材、研究の各部門を有しています。
今回の講師はHRDアントワープのチーフエデュケーションオフィサーのKatrien De Corte博士です。彼女はベルギーのGhent大学で宝石学の客員教授もされている第一線の宝石学者でもあります。国際宝石学会(IGC)などでも研究発表をされており、世界各国の業界関係者にダイヤモンドに関する講演を数多く提供されています。今回の講演でも非常にわかりやすくプレゼンテーションを行っていただきました。
後援・協力
本セミナーは駐日ベルギー大使館が後援していました。そしてAntwerp World Diamond Centre(AWDC)、時計美術宝飾新聞社および弊社が協力させていただきました。ベルギー大使館からは一等書記官のBent Van Tassel氏が会場に来られ、セミナー開始前に挨拶をされました。同氏のスピーチとCorte博士の講演は英語で話されるため、その通訳をGem–Aに留学経験があり、宝石学に造詣の深い徳山薫氏が勤めてくださいました。
M–ScreenはHRDアントワープとWTOCD(Wetenschappelijk en Technisch Onderzoeks Centrum voor Diamant’ アントワープのダイヤモンドリサーチセンター)の共同で開発したメレサイズダイヤモンドの全自動スクリーニング(粗選別)システムです。
卓上設置が可能なデスクトップサイズで、超高速(最小でも毎秒3個)でメレサイズのダイヤモンドを粗選別します。対象は0.01ct〜0.20ctのD〜Jカラーのラウンドブリリアントカットされたダイヤモンドです。選別を行う基本原理は波長の短い紫外線による特性と未公開の特許技術が使用されています。選別結果は、「天然ダイヤモンド」と100%確信できるもの、さらに検査が必要な「合成あるいはHPHT処理の可能性がある天然ダイヤモンド」、そして「類似石」に分別されます。
そして2017年1月からは新しくバージョンアップしたM–Screen+を提供しています。この装置はより小さなダイヤモンド(0.005–0.10)にも対応し、さらに早い(1秒間で5石以上)測定が可能となっております。