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ESR分析を用いた放射線照射処理シロチョウ養殖真珠の研究

研究室 江森健太郎・北脇裕士

シロチョウ養殖真珠に対して低線量のガンマ線を照射し、色変化を調べたところ、白色系からシルバー系への変化が確認されました。これらは標準的な鑑別手法において同系色の未処理の白蝶養殖真珠との識別が困難であるため、電子スピン共鳴(ESR)分析、熱ルミネッセンス分析および蛍光分光分析における鑑別の可能性について検討しました。その結果、電子スピン共鳴(ESR)分析に明瞭な差が見出され、低線量のガンマ線照射の検出に有効であることが確認できました。
以下に今回の調査結果について報告します。

 

はじめに

アコヤ真珠や淡水真珠に対する放射線処理は広く知られており、これらは通常高線量で行われています。従来、真珠の放射線照射による色の変化は淡水産貝殻核の含有するマンガンの酸化数に関係するとされてきました(文献1)。そのため、真珠層の厚い白蝶養殖真珠では放射線による色変化はないものと考えられていました(一般にアコヤ養殖真珠を放射線処理した場合は、真珠層ではなくマンガン含有量の多い淡水産貝殻核に黒色の色変化が生じます。アコヤ真珠は真珠層の巻厚が薄いため、核が透けて全体としていわゆるブルー系にみえます。しかし、シロチョウ養殖真珠の場合、真珠層の巻厚が厚いため、核が透けて見えることはほとんどありません)。
ところが、最近になって低線量で照射処理されたシルバー系の白蝶養殖真珠が情報開示なしに韓国の市場で販売され問題となりました。韓国の消費者は有機物質で生成したシルバー色の南洋真珠を好む傾向がありますが、同系色の照射処理された南洋真珠が非開示で販売されたため一部混乱を生じました。 韓国真珠協会は放射線照射で着色された真珠の扱いおよび流通の禁止に関する声明文を出すなどの対応を行い、同国の宝石検査機関からその鑑別手法についての報告がなされました(文献2)。
昨年、三重県伊勢市で行われた宝石学会(日本)2012年においても、放射線照射された真珠について、韓国の韓美宝石鑑定院のLee Bo-Hyun氏が「放射線照射された南洋真珠の電子スピン共鳴(ESR)研究」という発表を行いました。この研究では、放射線照射された南洋真珠について電子スピン共鳴(ESR)分析を行うことで放射線照射された南洋真珠の鑑別が可能であり、韓美宝石鑑定院では放射線照射された南洋真珠のESR分析サービスを行っていることを発表しています。

今回、中央宝石研究所研究室でも白蝶養殖真珠における低線量の照射による色変化と鑑別手法について検討しました。シロチョウ養殖真珠に放射線の一種であるガンマ線を照射し色変化を確認し、放射線照射前後で電子スピン共鳴(ESR)分析、熱ルミネッセンス分析および蛍光分光分析を行い、鑑別の可能性について検討しました。

 

実験に使用した試料と分析方法

実験に用いたシロチョウ養殖真珠は6ピース(1.31g~2.50g、写真1参照)です。試料は国内の大手真珠業者から提供をうけたもので、同社によると調色や処理などは何も行われていない、純粋な浜上げ珠です。

これら6ピース中5ピースについて、ガンマ線照射装置にてそれぞれ0.1kGy、0.5kGy、1.0kGy、5.0kGy、10.0kGyの線量でガンマ線を照射しました。また、そのガンマ線照射前後にて、ESR分析、熱ルミネッセンス分析および蛍光分光分析を行いました。
ESR分析には日本電子製JES–FA200を用いて測定しました。ESR分析には粉末試料が必要なため、試料の中心にハンドドリルで穴を開け、その際生じた試料の粉末(約2mg)を薬包紙に集め外径5mmのXバンドESR試験管に入れ測定。分析条件は、出力1.99mW、マイクロ波周波数約9450MHz、センター磁場336mT、挿引幅±7.5mT、挿引時間2分、モジュレーション幅(FMW)0.2mT、ゲイン×100、タイムコンスタント0.03秒、Mn2+デジタルマーカー設置位置850、積算回数1回で分析を行いました。
熱ルミネッセンス分析にはThermo Scientific社製 Harshaw TLD Model 3500を用いて測定しました。
試料はESR分析に用いた粉末を使用しました。分析条件はリニア昇温速度6℃/秒、昇温温度範囲50–400℃、積算温度範囲 50–400℃、窒素ガス:2L/分、試料皿にステンレス製(厚さ0.2mm、直径6mm、高さ3mm)を用いて分析を行いました。
ESR分析、熱ルミネッセンス分析については後述のコラムを参照して下さい。
蛍光分光分析は、日本分光FP–8000を用いて励起波長280nm、測定領域290nm~750nmの範囲で行いました。励起波長は予備的な検査において連続的に波長を変動させ、最も効率よく発光ピークが得られる波長を選定しました。

写真1:実験に用いたシロチョウ養殖真珠写真1:実験に用いたシロチョウ養殖真珠
写真2:ガンマ線照射後のシロチョウ養殖真珠(上の段、左から右へ:未照射、0.1kGy照射、0.5kGy照射、下の段、左から右へ:1.0kGy照射、5.0kGy照射、10.0kGy照射)試料配置は写真1と同様写真2:ガンマ線照射後のシロチョウ養殖真珠
試料配置は写真1と同様

 

放射線処理による概観の変化

コバルト60によるガンマ線を0.1kGy、0.5kGy、1.0kGy、5.0kGy、10.0kGy照射した結果を写真2に示します。低線量(0.1kGy、0.5kGy)照射の試料では色変化はほとんど認められませんが、線量が多いものほど色変化が大きく、元来白色系だったものがシルバー系へと色変化していることがわかります。

ESR分析結果

照射前後でESRスペクトルを比較した結果を図1に示します。照射前の試料では検出されない炭酸ラジカル(CO2)が照射後にはg=2.002付近に検出されています。
照射前の試料では炭酸ラジカルが検出されないことより、この炭酸ラジカルはガンマ線照射により発生したものであることがわかります。また、炭酸ラジカルは線量の増加とともに増加する傾向にあります。結論として、ESR分析で炭酸ラジカルの測定を行えばシルバー系へ変化させるための照射処理が行われているか否かの判定は可能です。

図1:ガンマ線照射前後の真珠のESRスペクトル図1:ガンマ線照射前後の真珠のESRスペクトル

 

熱ルミネッセンス分析結果

ESR分析同様、ガンマ線照射前後で熱ルミネッセンス分析を行った結果を図2に示します。低線量照射(0.1kGy~0.5kGy)の試料では、ガンマ線照射後のスペクトルの極大部分が左側(低温側)へシフトするといった差が認められますが、5.0kGy~10.0kGy照射した試料では大きな差は見られませんでした。このように熱ルミネッセンス分析で見出せる差は僅少であり、その解釈については今なお不確定です。この手法を放射線処理シロチョウ養殖真珠の鑑別に利用するには更なる研究が必要であると思われます。

図2:ガンマ線照射前後の熱ルミネッセンススペクトル図2:ガンマ線照射前後の熱ルミネッセンススペクトル

 

蛍光分光分析

今回分析したすべての試料で280nmの紫外線で励起された340nm付近で極大を示すピークが検出されましたが、照射前後でのスペクトルに変化は認められませんでした(典型的な例を図3に示します)。なお、この340nm付近の発光ピークはトリプトファン(アミノ酸の一種)由来の蛍光として知られています(文献3)。

図3:10.0kGy照射されたサンプルの蛍光分光分析結果図3:10.0kGy照射されたサンプルの蛍光分光分析結果

 

まとめ

今回の研究では、シロチョウ養殖真珠にガンマ線を照射することにより白色系からシルバー系へ、線量に比例した色変化を確認しました。また、この処理を行う前後でESR分析、熱ルミネッセンス分析、蛍光分光分析を行いました。熱ルミネッセンス分析および蛍光分光光分析では明瞭な差は認められませんでしたが、ESR分析においては処理前では検出されないCO2のフリーラジカルが照射後に検出され、ガンマ線照射処理の看破には先行研究(文献2)で述べられているとおり、ESR分析が有効であることが確認されました。また、先行研究では測定に必要な試料は5mgとされていましたが、本研究においては2mgでも可能であることが新たに判りました。測定に用いる試料の量が感度に直接影響を及ぼすため、試料の量を増やせばさらなる低線量の照射も看破可能であると思われます。しかし、ガンマ線照射により真珠の色変化が認められ、CO2のフリーラジカルが確認されたといっても、このフリーラジカルが色にどのように関係するかは不確定です。
放射線照射処理真珠の鑑別は宝石検査機関に課せられた重要な研究課題であり、色変化のメカニズムなど今後も継続して研究し、発表していく予定です。

謝辞

今回の実験(ESR分析、熱ルミネッセンス分析)につきましては、東京都立産業技術センターの関口正之氏にお世話になりました。心から感謝致します。

参考文献

1.堀口吉重「アコヤガイおよびイケチョウガイの生化学的研究-X. 貝殻中のMnの形態について(Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries, Vol,25, Nos.10-12, 1959)」
2.Hyunmin Choi, Bohyun Lee and Youngchool Kim「Detection of gamma irradiated South Sea cultured pearls(Journal of the Korean Crystal Growth and Crystal Technology(Vol.22, No.1, 2012)」
3.平松潤一、永井清仁「熱と日光が真珠のコンキオリンに及ぼす影響と真珠品質の非破壊による判定(生物工学会誌、第88巻、第8号、378-383、2010)」

 

◇コラム1:ESR分析とは
ESR(Electron Spin Resonance:電子スピン共鳴)現象は1945年旧ソ連のザボイスキーにより発見されました。
EPR(Electron Paramagnetic Resonance:電子常磁性共鳴)とも呼ばれ、NMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)とともに、磁気共鳴分光法の一つです。
スピンを持った電子に磁場を与えると、ゼーマン効果により物質のエネルギー準位が2つに分かれます(これをゼーマン分裂といいます)。この2つのエネルギーの差に相当するエネルギー(周波数によってマイクロ波や近赤外光を使用)を外部から加えると共鳴を起こし、このエネルギーの吸収量を検知することでESRスペクトルを得ることができます。ESRスペクトルを解析することで、ラジカルや遷移金属などの物質中の電子のスピン状態とその量を調べることが可能になります。
ESRの適用例としてはフリーラジカルと呼ばれる不対電子を持つ物質の同定・定量が挙げられます。代表的なフリーラジカル物質としては、近年話題になっている活性酸素などがあります。
今回の研究報告では、ESRで炭酸ラジカル(CO2)を測定しています。放射線を当てていない真珠には炭酸ラジカルは存在しませんが、放射線を照射すると、炭酸ラジカルが発生すると言われています。(ラジカルとは何かについてはコラム2として掲載しています)
この炭酸ラジカルをESRスペクトルで検知することで、真珠に放射線を当てているかどうか判明するというのが今回の研究の主なテーマとなります。
なお、ESR分析ではサンプルを粉末にする必要があり、破壊検査になるため、通常宝石の鑑別には不向きです。
◇コラム2:ラジカルとは
ラジカルとは、不対電子を持つ物質のことです。今回の研究では、炭酸ラジカル(CO2)について研究していますが、わかりやすい例として、水分子を挙げ、ラジカルについて説明します。
水分子は水素原子(H)が2つと酸素原子(O)が1つからできています。
水素原子(H)は原子番号が1番で、陽子1つと中性子1つから成る原子核を中心にして電子が1つ回っている構造をしています(図A左)。また、酸素原子(O)は原子番号が8番、陽子8つと中性子8つから成る原子核を中心にして電子が8つ回っている構造をとっています(図A右)(注:同位体といって中性子の数が異なるものも存在します)。図A 左:水素原子、 右:酸素原子構造

図A 左:水素原子、 右:酸素原子構造

 

電子は核に近いほうから、K、L、M・・と収まる場所が決まっていてK核には2つ、L核には8つまで電子が入ることが可能です。水素原子の場合はK核に電子が1つ、酸素原子の場合はK核に2つ、L核に6つ電子が入っています。実は、K核に最大入ることのできる電子2つ、L核には8つ電子が入った状態が安定な状態です。つまり水素原子はK核にあと1つ、酸素原子はL核にあと2つ入れば化学的に安定な状態だということです。
水分子は、この水素原子の電子1つと酸素原子のL核の電子1つを共有する共有電子対を2つ形成することで水分子の体裁をとっています。

図B 水素原子の分子構造

図B 水素原子の分子構造

 

この水分子に放射線などを当てると、水分子が崩壊して、OHとHに分離することがあります。この際、共有電子対を形成していた電子のペアが別れます。こうしてできた電子の片割れを不対電子と呼び、こうした不対電子を持つ分子のことをラジカルといいます。

◇コラム3:熱ルミネッセンス分析とは
熱ルミネッセンス分析とは、結晶が加熱されたときにそこから放射される可視光の量を測定することにより、放射線の被爆量を測定するための分析法です。
放射線がその結晶と相互作用したとき、結晶の原子にある電子がより高いエネルギー準位に飛び出します。しかし、その電子は不純物のためにトラップされ、加熱されるまでそこに留まることになります。結晶を加熱することでその電子が基底準位まで落ちてきますが、そのときに特定の周波数の光子を放出します。これが熱ルミネッセンス反応です。
放射される光の量は被爆した放射線量に依存するため、光度を測定することで、被爆量を知ることができます。
主な用途としては土器や岩石の年代測定や放射線照射食品の検知などがあります。
この熱ルミネッセンス分析は、1mg程度の粉末を測定に必要とするので、試料を少し破壊して測定する必要があります。本研究では、ESR分析で用いた粉末試料をそのまま測定に利用しています。

GIT2012:第3回 国際宝石・宝飾品学会に参加して

研究室 北脇裕士 

会議後のツアーで訪れたカンボジア、パイリンのWat Phnom Yat 寺院

会議後のツアーで訪れたカンボジア、
パイリンのWat Phnom Yat 寺院

本会議の会場となったインペリアルクイーンズパークホテル

本会議の会場となったインペリアル
クイーンズパークホテル

昨年12月12日(水)~13日(木)までの2日間、表題の国際会議がタイのバンコクで行われ、翌14日(金)~16日(日)までの3日間、ポストカンファレンスツアー(会議後の原産地視察)としてタイのチャンタブリ~カンボジアのパイリン鉱床の視察が行われました。当研究所から3名の技術者が参加し、それぞれ口頭発表を行いました。
以下に概要をご報告致します。

GIT 2012とは・・・・

International Gem and Jewelry Conference(国際宝石・宝飾品学会)はGIT(The Gem and Jewelry Institute of Thailand)が主催する国際的に有数の宝飾関連学会の一つです。第一回目は2006年、第二回目は2009年、そして今回は2012年12月に第三回目としてGIT 2012が開催されました。GITはLMHC(ラボマニュアル調整委員会)にも属する国際的にも著名な宝石検査機関で、当研究所とは科学技術に関する基本合意を締結し、密接な技術交流を諮っています。本学会はGITが主催していますが、TGJTA(タイ宝石・宝飾品協会)、CGA(チャンタブリ宝石・宝飾品協会)、チュラロンコン大学、国家商工省、鉱物資源局などが後援しており、まさに国を挙げての国際会議といえます。また、本会議運営のため15ヵ国31名の国際技術委員会が結成され、当研究所の堀川もその一役を担いました。


本会議

本会議はバンコク市内のインペリアルクイーンズパークホテルが会場となり、世界30ヵ国から500名を超える参加者が集いました。オープニングセレモニーではCIBJO会長のGaetano Cavalieri氏、ICA会長のWilson K.W. Yuen氏らが宝飾業界の未来に向けて力強い基調講演を行いました。
一般講演は1.宝石の特性、2.鑑別-命名、3.鑑別-処理(1)、4.鑑別-処理(2)、5.ダイヤモンド、6.貴金属、7.有機宝石、8.宝飾デザイン、9.宝石学-探鉱、10.宝石学-政策ほか、の10のセッションで構成されており、2つの会場に分かれて同時進行しました。口頭発表は総計で48件、ポスター発表は45件のエントリーがありました。当研究所からは技術顧問の赤松が有機宝石セッションで『養殖真珠-その誕生と現状』、堀川が鑑別-命名セッションで『宝石用語としての“翡翠”の再考』、筆者が鑑別-処理セッションで『LA-ICP-MS分析による合成ルビーの鑑別』についてそれぞれ口頭発表を行いました。
各発表の詳細な要旨集がGITのウェブサイトhttp://www.git.or.th/index_en.html に掲載されております。フリーでダウンロードすることが可能ですので、ご興味のある方はご覧下さい。

基調講演でアジアのジュエリー産業の未来について語るICA会長のWilson K.W. Yuen氏

基調講演でアジアのジュエリー産業の未来について
語るICA会長のWilson K.W. Yuen氏

本会議のメイン会場となったインペリアルクイーンズパークホテルのボールルーム

本会議のメイン会場となったインペリアル
クイーンズパークホテルのボールルーム


会場に張り出された45件のポスター発表。口頭発表の合間には熱心な研究者が著者に質問を投げかける

会場に張り出された45件のポスター発表。
口頭発表の合間には熱心な研究者が
著者に質問を投げかける

鑑別-命名セッションで『宝石用語としての“翡翠”の再考』について講演する堀川所員

鑑別-命名セッションで『宝石用語としての
“翡翠”の再考』について講演する堀川所員
 


ポストカンファレンスツアー(会議後の原産地視察)

本会議終了後、約90名の参加者が3日間のチャンタブリ~カンボジアのパイリン地区の視察に参加しました。
タイは昔からルビー・サファイアの重要な産地です。1850年の鉱床発見以来、19世紀後半から世界のルビー・サファイアの宝石需要を支え続け、1980年代の最盛期には4000万ct程の生産量があったという記録があります。しかし、1990年代以降鉱床は枯渇気味で、現在は宝石産地であると同時に世界的な宝石と宝飾品の加工と流通の中心になっています。特にバンコクやチャンタブリでは常にコランダムの新しい加熱技術が発達し、世界中の宝石関係者の注目の的となっています。タイのコランダム産地はカンチャナブリ地区、チャンタブリ地区、フィラエ地区などが知られています。今回のツアーではチャンタブリ地区のKhao Ploi Waen鉱区を訪れました。ここはタイで始めてサファイアが発見された土地として知られています。この地区はカンチャナブリ地区に比較すると産出量は少なく、ブルー・サファイアは色が濃すぎて黒っぽく見えますが、美しいグリーンサファイアが産出します。ここでは地下3~8mに分布する灰色~褐色の風化玄武岩の土が重機で掘られ、選鉱プラントでは高圧水で洗浄し、比重選鉱されています。

チャンタブリ地区のKhao Ploi Waen鉱区。風化玄武岩の二次鉱床

チャンタブリ地区のKhao Ploi Waen鉱区。
風化玄武岩の二次鉱床

高圧水を使用して風化玄武岩の土を洗い流す

高圧水を使用して風化玄武岩の土を洗い流す
 


比重選鉱機を用いてサファイアを選別

比重選鉱機を用いてサファイアを選別
 

Khao Ploi Waen鉱区から産出したグリーンサファイア

Khao Ploi Waen鉱区から産出した
グリーンサファイア


タイの東方、カンボジアとの国境を横切ってパイリン地区のサファイア鉱区が広がります。この地ではブルー・サファイアとルビーが産出します。不思議なことにカラレス、イエローやグリーンの産出がほとんどありません。この地のブルー・サファイアは品質が良く、現地の人の自慢でもあります。全体的に濃色ですが、小粒のものが多いようです。全体的にチャンタブリ地区のサファイアに似ています。カンボジア側から産出したものもタイ産としてチャンタブリやバンコクで加熱され、市場に出て行くと言われています。今回はSanang川の河川鉱床とBo Yaka地区の露天掘り鉱床を視察しました。河川鉱床での採掘は自由に行うことが可能で、現地の農民が副収入の糧として採掘されています。いっぽう露天掘り鉱床は国から採掘権を購入し、重機を用いて採掘されています。

カンボジア・パイリンのSanang川流域での採掘

カンボジア・パイリンのSanang川流域での採掘

わんかけをして得られたサファイア類の原石

わんかけをして得られたサファイア類の原石


カンボジア・パイリンBo yaka地区の露天掘り。高圧水で土砂を崩し、ポンプで吸い上げて選鉱機に運ぶ

カンボジア・パイリンBo yaka地区の露天掘り。高圧水で土砂を崩し、ポンプで吸い上げて選鉱機に運ぶ