NDNC(New Diamond and Nano Carbons)は2007年にICNDST (International Conference for Diamond Science and Technologies)とADC(Applied Diamond Conference)が統合されて新たに創設された国際学会です。ダイヤモンドの気相合成に始まり、ナノチューブ、フラーレン、グラフェンといったナノ構造的に新しい炭素も対象に盛り込まれています。創設第1回目の会議は2007年に大阪で開催されており、以降台湾(2008)、米国(2009)、中国(2010)、松江(2011)、米国(2012)、シンガポール(2013)、米国(2014)、そして昨年は静岡で開催されています。日本からはニューダイヤモンドフォーラム(http://www.jndf.org/)の会員が中心となって本会をサポートしています。
筆者は一般講演において宝飾用のメレサイズの合成ダイヤモンドの現状について報告しました。概要については既報のCGL通信No.30とNo.32をご覧ください。その他に宝石関連としてはGIAのW. Wang氏による口頭発表と同じくGIAのU. F. S. D’Haenens–Johansson氏によるポスター発表がありました。これらの発表内容を以下に簡単にご紹介します。
GIAのW. Wang氏は[Si–V]−センタの天然と合成に見られる分布の相違について報告されました。[Si–V]−センタはフォトルミネッセンス分析で736. 6と736.9nmにダブレットのピークを示します。宝石学においてはCVD合成ダイヤモンドの識別特徴として良く知られています。しかし、天然でも稀に見られることがあり、最近はHPHT合成でも確認されています。Ⅱ型の天然ダイヤモンドでは3%以下に見られ、しばしばオリビンの包有物を伴っています。[Si–V]−をマッピングしても分布は不規則でGR1(空孔)の分布とも関連が見られませんでした。HPHT合成では{111}セクターの境界付近にのみ分布していることが確認されました。また、CVD合成では分布は不規則ですが、マルチステップ成長をしたものでは{100}成長方向に平行に分布していると報告しました。
GIAのU. F. S. D’Haenens–Johansson氏は天然と合成のⅡ型ダイヤモンドの成長特徴をCLとUVによるルミネッセンス像から検討しました。ダイヤモンド中の不純物や欠陥の分布は成長やその後に蒙った塑性変形などの影響を受けています。これらの履歴を観察するために宝石学分野ではDiamond View™が用いられており、天然・合成起源の判別に役立てられています。GIAではUVを用いたDiamond View™に加えて電子顕微鏡によるCLも研究に用いています。天然Ⅱ型ダイヤモンドは塑性変形により線状やネットワーク状のディスロケーションパターンが見られ、成長分域は観察されません。いっぽうHPHT合成では六–八面体の成長分域構造が明瞭でディスロケーションはほとんど見られません。CVD合成ではステップフロー成長のためストリエーション(線模様)が観察されます。また、ディスロケーションも発達しており、観察する方向によっては未熟なオペレーターは天然Ⅱ型と誤認する恐れがあると報告しました。
今回のNDNC国際会議は2010年に次いで6年ぶりに中国での開催となりましたが、次回のNDNC2017はオーストラリアのケアンズ(Cairns)で開催されることが決定しています。◆
札幌農学校初代教頭であるウィリアム・スミス・クラーク(マサチューセッツ農科大学前学長)が米国帰国にあたり、札幌近くの島松で馬上から叫んだという「Boys, be ambitious.」は現在でも北海道大学のモットーとして受け継がれており、フロンティア精神、実学の重視、全人教育、国際性の涵養等を建学理念とし、現在も基本理念として掲げられています。
また、今回会場として使用した鈴木ホールは、2010年に芳香族化合物の合成法としてしばしば用いられる反応のひとつである「鈴木・宮浦カップリング」という合成法を編み出したことでノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授である鈴木章名誉教授に因んで建築されたホールあり、会場には鈴木章名誉教授の銅像他、研究に関する展示が設営されていました。
5.M–SCREEN
M–ScreenはHRDアントワープとWTOCD(Wetenschappelijk en Technisch OnderzoeksCentrum
voor Diamant アントワープのダイヤモンドリサーチセンター)の共同で開発したメレサイズダイヤモンドの全自動スクリーニング(粗選別)システムです。
卓上設置が可能なデスクトップサイズで、超高速(最小でも毎秒2個)でメレサイズのダイヤモンドを粗選別します。1時間あたり7200〜12000個のダイヤモンドを全自動で識別することが可能です。対象は0.01ct〜0.20ctのD〜Jカラーのラウンドブリリアントカットされたダイヤモンドです。選別を行う基本原理は波長の短い紫外線による特性と未公開の特許技術が使用されています。選別結果は「天然ダイヤモンド」、「合成ダイヤモンドの可能性」、「HPHT処理の可能性がある天然ダイヤモンド」、「類似石」に分別されます。
日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Sciences)は2007年9月に日本鉱物学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併して発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ1000名の会員数を擁しています。日本鉱物科学会は鉱物化学およびこれに関する諸分野の学問と進歩、普及をはかることを目的とし、「出版物の発行(和文誌:岩石鉱物化学、英文誌:Journal of Mineralogical and Petrological Sciences、その他)」、「総会、講演会、研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」を主な事業として活動しています。年会は、設立総会以降毎年行われており、重要な学術交流の場となっています。
今回の国際宝石学会はこれまでと同様、Pre-Conference Tour 8/23(日)~25(火)、本会議8/26(水)~8/30(日)、Post Conference Tour 8/31(月)~9/3(木)の3本立てで行われました。本会議前後のConference Tourは開催地周辺のジェモロジーや地質・鉱物に因んだ土地や博物館を訪れます。弊社技術者は本会議とPost Conference Tourに参加しました。
一般講演は27日~30日と4日間にわたって行われました。各講演は質疑応答を含め各20分で行われ、計38題が発表されました。うち、こはく関連6題、ダイヤモンド関連3題、コランダム関連11題、パール関係4題、ひすい2題、オパール2題、エメラルド、ペリドット、デマントイド、ネフライト各1題、その他色石2題、産地関連2題、分析関連1題、光学関連1題でした。弊社研究室からは、北脇が「Type Ib yellow to brownish yellow CVD synthetic diamond」、江森が「Geographic origin determination of ruby and blue sapphire based on trace element analysis using LA-ICP-MS and 3D plot」という題で発表を行いました。
ここでは紙面に限りがありますので、発表された講演内容について詳述することはできませんが、IGC34で行われたすべての一般講演、ポスターセッションの要旨についてはオンラインでご覧戴けます。
http://www.igc-gemmology.net/ (2015年11月現在ダウンロード可)ご興味のある方はぜひこちらをご覧ください。
なお、会議の最終日30日の閉会式において次回のIGC35の開催地はアフリカのナミビアに決定しました。
Post Excursion Tour
8/31(月)~9/3(木)とPost Excursion Tour (会議後の巡検)に参加しました。参加者はおよそ40名で2台のバスに分乗して移動しました。初日31日にビルニュスをバスで出発した我々は、Kaunas(カウナス)を経由し、Palanga(パランガ)へ向かいました。Palanga(パランガ)はリトアニアでも有名なリゾート地です。翌日1日の朝、Palanga(パランガ)にある「Museum of Amber」へ行きました。「Museum of Amber」でこはくの生成メカニズム、海辺でのこはく採取の手法についての説明を受けました。
ICA(International Colored Gemstone Association)は1984年に設立された色石についての知識と認識を促進するための非営利団体で、現在47ヶ国600人の宝石ディーラー、カッター、鉱夫と小売業者から成っています。色石についての国際的なコミュニケーション、取引を改善し、ビジネスのための一般的な用語統一のため、ICAの世界的なネットワークが機能しています。
ICA Congressは2年に1度開催されるICA主催の国際会議で、本年はスリランカで開催されました。会場となったのはコロンボの格式のある「Cinnamon Grand」ホテルです。会議期間中は、世界中の著名な宝石鑑別ラボやICAの主要メンバーによる招待講演、そしてGem Show、会員間の交流を深めるスポーツ大会などが行われました。 Congress後にはPost Congress (会議後の巡検)として、5/20~5/26にスリランカの主要な鉱山等を回るツアーが企画されていました。CGLからは北脇裕士と江森健太郎が参加し、江森が「Beryllium-Diffused Corundum in the Japanese Market and Assessing the Natural vs. Diffused Origin of Beryllium Sapphires」(日本市場におけるBe拡散処理コランダムの現状と天然起源のBeを有するサファイアとの識別)というタイトルで講演を行いました。