
CGL通信 vol68 「アウインを含有するソーダライトの分析」
CGL リサーチ室 趙政皓・江森健太郎
CGL 色石鑑別課 岡野誠・胡昱瑩・間中裕二

中には大量の青色のアウインインクルージョンが含まれている。
最近、多量の青いインクルージョンを含む無色透明石(図1)が鑑別依頼のため東京支店に持ち込まれた。この石は、無色の主体部分がソーダライト、青色のインクルージョンはアウインであることが明らかになり、鑑別結果はアウインインソーダライトである。アジューライトインソーダライトという当該石と類似した外観の石は知られているが、アウインインソーダライトは我々の知る限り宝石学的な文献がない。本稿は、当該石について詳細に分析を行ったので、その結果を報告するものである。
ソーダライトとアウインはともにソーダライトグループに属する立方晶系のケイ酸塩鉱物であり、ソーダライトの化学組成は Na4(Si3Al3)O12Cl、アウインは Na3Ca(Si3Al3)O12(SO4)2-である。両者の構造については、Na+ と Ca2+は同じサイトを占め、Cl–と SO42-は同じサイトを占める。ミャンマー産のアウインとソーダライトの混合物はGrobon & Hainschwang (2006)が報告されているが、今回調査した石は無色透明のソーダライト中にアウインのインクルージョンを含むという点で非常に興味深い。
ソーダライトの屈折率は1.450-1.487、比重は2.26-2.44であり、アウインの屈折率は1.498-1.507、比重は2.46-2.48であることが知られている。当該石は屈折率1.490、比重2.28であり、屈折率はソーダライトに近く、比重はソーダライトの比重の範囲内でアウインの比重とは大きく離れていることがわかった。また、前文で言及したミャンマー産のアウインとソーダライトの混合物は屈折率1.50、比重2.50であり、当該石とは大きく異なっている。
水に浸漬して観察したところ、明白に無色の主体と青色のインクルージョンにわかれており(図2)、青色のインクルージョンは丸みを帯びた薄片状であった (図3)。
顕微FTIRを用いた赤外領域の反射スペクトルを測定した結果、無色の主体部分のスペクトルがソーダライト、青色のインクルージョンがアウインのスペクトルと一致した(図4)。また、顕微ラマンスペクトルを用いて、当該石のソーダライト主体とアウインインクルージョンそれぞれ測定した(図5)。その結果、アウインインクルージョンのラマンスペクトルからは青色発色団であるS3•-による強いピーク(Chukanov et al. 2022)が検出されたが、主体のソーダライト部分のラマンピークはS3•-によるピークが検出されなかった。これはソーダライトの部分が無色で、青色を呈するのはアウインインクルージョンのみという観察結果と一致している。
蛍光X線元素分析EDXRFによる化学組成の分析により、当該石の化学組成はソーダライトの組成Na4(Si3Al3)O12Clに近いことが明らかになった。微量元素として、S、K、Ca、Brが含まれているが、Grobon & Hainschwang (2006)が報告した石と違い、Srは検出されなかった。このことから、当該石と先行研究で報告されたアウインとソーダライトの混合物は違う産地から産出した可能性が高いと推測される。

この石の産地・産状については不明であり、具体的な形成環境については知ることができない。ソーダライトとアウインを共に産出できる地域は知られているが、当該石のように無色のソーダライト中にアウインをインクルージョンとして含む宝石は我々が調べた限り報告がなかった。我々は今後も引き続きこのような石の情報を追跡し、より多くの情報を提供できように努める。
◆参考文献
Chukanov, N. V., Shendrik, R. Y., Vigasina, M. F., Pekov, I. V., Sapozhnikov, A. N., Shcherbakov, V. D., & Varlamov, D. A. (2022). Crystal chemistry, isomorphism, and thermal conversions of extra-framework components in sodalite-group minerals. Minerals, 12(7), 887.
Grobon, C., & Hainschwang, T. (2006). Massive haüyne-sodalite from Myanmar. Gems & Gemology, 42(1), 64-65.