CGL通信 vol37 「GIT2016 Post-Conference Excursion 参加報告」
2017年3月No.37
東京支店 雨宮 珠実
2016年11月16日(水)〜 16日(金)の3日間、GIT 2016 The 5th International Gem and Jewelry Conference (国際宝石宝飾品学会)のPost–Conference Excursion(本会議後の原産地視察)として、タイのチャンタブリ、トラットの鉱山ツアーが行われました。タイの宝飾用コランダム鉱床は、バンコク南東方のチャンタブリ県(Chanthaburi)タマイ市からトラット県(Trat)ボ・ライ町(Bo Rai)、バンコク西方のカンチャナブリ県(Kanchanaburi)ボ・プロイ町(Bo Phloi)周辺、タイ東部コラート高原のシサケット県(Sisaket)からスリン県(Surin)にかけて発達し、盛んに採掘され世界的な産地となっています。このうち、チャンタブリ~トラット地区から産するルビーは、世界の高品質ルビーの多くを占めていると言われており、今回はそのトラット地区の鉱山を数箇所見学することができました。
CGLからは2名参加し、鉱山の状況を視察することができました。以下に概要を報告致します。
Trat – Chanthaburi
11月16日(水) 午前7時に、先日まで本会議が行われていたPataya Zign Hotel(図1) を出発し、2台の大型バスに乗りトラットに向かいました。
トラット地区の鉱山に向かう途中、小型バスに乗り換えBankaja鉱山に着きました。この日は鉱山のオーナーのご親族が亡くなられたとのことで、実際に機械を動かすところは見ることができませんでしたが、GIT のアカデミックアドバイザーのDr. Visut Pisutha Arnondから採掘方法を説明して頂きました。
水を入れ、周りの土を崩して掘り出したものを水と一緒にパイプを通して選別機に移動させます。
上から水と一緒にコランダムを含んだ土が左右に揺られながら下に(図5は図4の左側の部分)に落ちていき、比重の軽いものは途中に残り、コランダムのような比重の重いものが下まで運ばれます。採掘が全て終わった後は土を全て元に戻すそうです。
Chanthaburi Gem and Jewelry Museum
Bankaja鉱山を出た後、チャンタブリ市立の宝石宝飾博物館(図6・7)を見学しました。博物館の中には各国の宝石の原石や様々な王冠(レプリカ)が展示されていました。
World Sapphire Co., Ltd.
チャンタブリ宝石宝飾博物館を見学した後、World Sapphire社を見学しました。ここには各国のサファイアの産地にオーナー自らが出向き収集してきたものが産地別に分けられて展示してあり、また2階にはカットや選別をする部屋がありました。私たちはサファイアのギャラリーと選別の様子を見せて頂きました。
Wat San Too , Trat
2016年11月17日(木)、ワット・サン・トゥーの柱状節理(※)を見た後(図13)、ボ・ライにある博物館を見学し、その後鉱山見学、また川で鉱物の採集を体験しました。
※「柱状節理」:玄武岩質の火成岩などに見られる柱状の規則性のある割れ目のこと。断面は六角形となることが多い。
マグマが冷却する過程で体積が収縮するために生じる。
Gem City
ジェム・シティに着くと、トラットの副知事の歓迎の挨拶を受けました。
博物館の中には鉱物の採掘から処理、カット、売買までが本物と見分けがつかないほどのリアルな蝋人形で作られており、GITのPornsawat Wathanakul代表が写真に入っていても見分けがつかないほどです(図15–6)。展示スペースを抜けると原石から枠のついたものまで販売するコーナーが設けられていました。
Trat, Bo Rai鉱山
ジェム・シティ見学後のボ・ライ鉱山では、オーナーもいらしたので採集させてもらうことができました。ボ・ライ鉱山は何十年も前にルビーとサファイアの鉱床として有名だった所です。採掘量はかなり減りましたが現在も重要な資源である事に変わりありません。ボ・ライにあるHua Tung Gems マーケットは現在も取引が行なわれていますが、全盛期ほど買い物客は集っていません。ただ、宝石学的調査が進めば、新しい鉱床が見つかる可能性もある場所です。
ボ・ライ鉱山の漂砂鉱床
同じボ・ライ鉱山からの石が川に流れた二次鉱床 で採集しました(図19)。すでに川岸では採れないため、現地の人が川の中央から川底の石を持ってきてくれたものをザルで洗い、その中から拾いました。
Chanthaboon–Water front
2016年11月18 日(金)、チャンタブーンのジェムマーケットを見学しました。マーケットの近くの川沿いにはタイとベトナムの人が半々くらいで住んでいるそうです(図20)。
ジェムマーケットの街の一角で路上にテーブルを出している店と、屋内のみの店がありました(図21)。想像とは異なり、テーブルの上には何もなく顧客の要望ににより石を出すため、バンコクの街中で思ったものが手に入らなかった人がここに来て必要なものを買うそうです。中には観光客目当てに近づいて路上で石を売る人もいました。
The Cathedral of the Immaculate Conception
ジェムマーケットのすぐ近くにはThe Cathedral of the Immaculate Conception(チャンタブリ処女降誕聖堂)という教会があります(図23)。300年以上前に建てられたタイで最も大きく美しい教会でベトナム人から寄贈されました。教会の中にはサファイアで飾られた聖母マリア像があり(図24)、礼拝中でしたので遠くからしか眺められませんでしたが、とても綺麗でした。
この後、昼食をとり、GIT のPornsawat Wathanakul代表からのご挨拶があり、帰路につきました。◆