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CGL通信 vol36 「GIT 2016 Pre–Conference Excursion参加報告」
2017年1月No.36
リサーチ室 江森 健太郎
去る2016年11月9日(水)~13日(日)の5日間、GIT 2016 The 5th International Gem and Jewelry Conference(国際宝石宝飾品学会)のPre–Conference Excursion(本会議前の原産地視察)として、ミャンマーのモゴック鉱山ツアーが行われました。CGLからは著者が参加し、最新のモゴック鉱山の状況を視察することができましたので以下に概要を報告致します。

Pre–Conference Excursionとは
宝石や地質学関連の学術会議では、本会議の前後にタイプロカリティ(基準産地)や鉱山等を視察するツアーが組み込まれることがあります。GIT 2016ではPre–Conference Excursion(本会議前の原産地視察)として4泊5日でミャンマーのモゴック鉱山ツアーが行われ、スタッフを含む18名(ガイド除く)が参加しました(図2)。

Jade Pagoda
11月9日(水)、ミャンマーのマンダレー空港に集合した我々はワゴン車3台に乗り、モゴックを目指すことになります。モゴックへ行く前にマンダレーのJade Pagodaへ立ち寄りました。ミャンマーでは多くの人々(90%程度)が仏教徒であり、いたるところにパゴダ(Pagoda)と呼ばれる寺院があります。パゴダは日本の仏塔と同じで仏舎利(釈迦仏の遺骨等)を安置するための施設で、ミャンマーではパゴダを建てることは「人生の最大の功徳」とされ、そうすることにより幸福な輪廻転生が得られるとされています。Jade Pagodaはその名の通り、ヒスイでできたパゴダで(図3)、ヒスイ鉱山のオーナーによって2014年に建立されました。また、パゴダの周りには建設中の建物がたくさんあり(図4)、現在あるジェードマーケットが来年移転してくるそうです。


Mandalay Gem Association & Co., Ltd.見学
Jade Pagoda見学後、マンダレーにあるMandalay Gem Association & Co., Ltd.(図5)を見学しました。Mandalay Gem Association & Co., Ltd.は宝石教育を行う機関で、ヒスイや他の色石、ダイヤモンドについての教育を行っています。すでに授業が終わった時刻に到着したため教育現場を観察することはできませんでしたが、教育に使用しているサンプル類を見せていただきました。ヒスイのサンプルは各色大小、数がたくさん揃っており、参加者達は感嘆していました。


モゴックへ
モゴックはマンダレーから北東に200kmに位置します。以前はマンダレーから船や曲がりくねった未舗装道路を車で乗り継ぎ、かなりの道のりであったとされていますが、現在は殆どの区間が舗装されています。11/10(水)朝6時、マンダレーのホテルを出発した我々はモゴックの入口まで4時間ほどで到着しました。モゴックは外国人の立ち寄りが制限されており、政府の許可なしでは入ることができません(図6)。

外国人の立ち寄りが制限されており、ここで許可を取らなければいけない。
Phaungdow–U Pagoda
モゴックに入った我々がまず初めに向かった先はPhaungdow–U Pagodaです。このパゴダはモゴックで最も有名なパゴダの1つです。仏像はLEDで電飾されています(図7)。また、モゴックで訪れたパゴダに共通することですが、たくさんの宝石が寄贈されており(図8)、信仰心の高さを垣間見ることができます。

電飾されている仏像。

台座の部分は色とりどり様々な宝石で装飾されている。

写真で示したものはごく一部にすぎず、莫大な量の宝石類が寄贈されている。
Yoke Shin Yone (Cinema Market)
11月11日(金)、モゴック東部地区のYoke Shin Yoneを訪れました(図9)。 Yoke Shin Yoneは通称Cinema MarketまたはMorning Marketと言われ、午前中朝6時から9時まで開かれています。細い路地に手作りの背の低い机、木箱、地面に布を敷いて、その上に宝石類を並べ、販売を行っています。低品質の未研磨石や原石もありますが、カット・研磨された質のよいルビー、サファイア、スピネル、ペリドット等多くの種類の宝石が見られます。ミャンマーの通貨(Kyat)での取引が基本ですが、米ドルの使用も可能でした。


MEC鉱山
Yoke Shin Yoneを後にした我々は、モゴックの北西10マイルのところにあるShan HillのShwe Tharyar Village(Bernard Village)にあるMEC鉱山(図10)を訪れました。この鉱山はルビーの小規模な採掘を行っており、すぐ傍には1887年におこった3rd Burma Warで戦士した英兵の墓が点在しています(図11)。



突然現れるマーケット(?)
筆者の乗っていたワゴンは気がつくと他の2台のワゴンとはぐれ、道に迷ってしまいました。運転手はミャンマー語しか話せず、ワゴンに同行していたスタッフはミャンマー語が話せず、他のワゴンと合流するため、一旦停車しなければならなくなりました。停車していると、宝石を持った村民たちが「宝石を買わないか」と寄って来て、彼らの家で突然宝石マーケットが開催されます(図12)。低品質な未研磨石がほとんどでしたが、中程度の品質のものも存在しました。はぐれてしまったことにより、この日の昼食を食べることはできませんでしたが、ミャンマーの人たちと宝石のつながりについて深く感じることができ、貴重な体験であったと思います。


モゴックの人たちと宝石のつながりを感じる貴重な経験をすることができた。
Purifie Mine
次に訪れたのは、Pyaung Gong VillageにあるPurifie Mineというペリドット鉱山(図13)です。ミャンマー語でペリドットは”Pyaung Gong Sein”と言います(Seinはミャンマー語で”緑”という意味)。ダイナマイトを使用して坑道を掘り進め(図14)、ペリドットを採掘するという手法で採掘が進められています。




Baw Mar Mine
11月12日(土)、モゴックBaw Mar地区のKyauk Sound鉱山を訪れました(図15)。このエリアは2008年以降採掘量が急増したブルーサファイアの重要な鉱床で、モゴック片麻岩類が分布しており、閃長岩や花崗岩類を伴っています。ブルーサファイアは高度に変成した黒雲母片麻岩などに貫入した閃長岩やペグマタイトの風化土壌から採掘されます。Baw Mar鉱山は10年ほど前から重機を用いた採掘がおこなわれており、露天掘り、トンネル方式が組み合わされています(図16)。



Yadana Shin Ruby鉱山
Baw Marを後にした我々はモゴック北部にあるYadana Shin Ruby鉱山に向かいました(図17)。 Yadana Shin Ruby鉱山は大理石から直接ルビーを採掘する第一次鉱床で、大理石の露岩も見られる敷地内から縦坑がたくさん掘られています(図18・19)。モゴックの中でも最大級の規模の鉱山で400名に及ぶ鉱夫が働いており(図20)、寝食を共にしています(図21)。




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
Pan Shanマーケット
Yadana Shin Ruby鉱山の次に向かったのは、Pan Shanの宝石マーケットです。午後1時から3時に開催されており、モゴックでは最大規模です。強い日差しを遮るための300近いパラソルが圧巻で、その様子から”Umbrella”マーケットと呼ばれています(図22)。このマーケットは前日に訪れたYoke Shine Yoneとは違い、宝石を広げ並べているのではなく、宝石を持ったディーラーがバイヤーに直接売りにきます。興味を持ち、宝石を見ていると次々とディーラーが現れ、囲まれてしまいます。


Baw Ba Tan鉱山
最後に我々が訪れたBaw Ba Tan鉱山はRuby Dragonと政府の鉱山省が合弁して採掘を行っている大規模な鉱山で、1996年より採掘を行っています(図23)。この鉱山は67エーカー(約27万平方メートル)に200人の労働者が8時間シフト(6時〜14時、14時〜22時)で採掘を行っています。現在、地下1140フィート(約350メートル)まで掘り進めていますが、一番よい品質のものが採掘されたのは地下900フィート(約275メートル)とのことでした(図24)。◆


