CGL通信 vol33 「平成28年度宝石学会(日本)」
2016年7月No.33
リサーチ室 江森 健太郎
平成28年の宝石学会(日本)講演会・総会が6月11日(土)に北海道大学工学部フロンティア応用研究棟鈴木ホールで開催されました。また、翌日の6月12日(日)には見学会が行われました。
北海道大学は日本初の学士授与機関として1876年(明治9年)に設立された札幌農学校を前身とする大学です。札幌農学校の源流は1872年(明治5年)に設立された開拓使仮学校ですが、大学全体としては札幌農学校が設立された1876年を北海道大学の創立年としています。1907年(明治40年)に東北帝国大学農科大学(北海道札幌区)として帝国大学に昇格、1918年(大正7年)に北海道帝国大学、1947年(昭和22年)に北海道大学、2004年に国立大学法人北海道大学となりました。
札幌農学校初代教頭であるウィリアム・スミス・クラーク(マサチューセッツ農科大学前学長)が米国帰国にあたり、札幌近くの島松で馬上から叫んだという「Boys, be ambitious.」は現在でも北海道大学のモットーとして受け継がれており、フロンティア精神、実学の重視、全人教育、国際性の涵養等を建学理念とし、現在も基本理念として掲げられています。
また、今回会場として使用した鈴木ホールは、2010年に芳香族化合物の合成法としてしばしば用いられる反応のひとつである「鈴木・宮浦カップリング」という合成法を編み出したことでノーベル化学賞を受賞した北海道大学名誉教授である鈴木章名誉教授に因んで建築されたホールあり、会場には鈴木章名誉教授の銅像他、研究に関する展示が設営されていました。
初日、11日(土)は9時半より受付が開始され、9時50分から16時45分の間で一般講演15題、特別講演が1題行われました。一般講演・特別講演には国内の主要な鑑別機関をはじめ、宝石業界関係者、北海道大学の学生等52名が参加しました。一般講演の内訳はダイヤモンド関係4題、色石関係8題、真珠関係3題でした。CGLからは久永美生所員(リサーチ室)による「メレサイズの無色~ほぼ無色HPHT法合成ダイヤモンド」、筆者(リサーチ室)による「判別分析を用いた天然・合成アメシストの鑑別」、水野拓也所員による「過去5年間のCGLにおける宝石鑑別依頼内容にみられた国内市場動向」の3題が報告されました。
特別講演として、北海道大学大学院理学研究科地球惑星科学部門、橘省吾准教授による「宇宙の宝石―実験天文学から『はやぶさ2』まで」というタイトルで講演がありました。橘省吾准教授は日本の国家プロジェクトである「はやぶさ2」のサンプル分析を担当しており、「はやぶさ」は何故イトカワに行ってサンプリングを行ったのか、「はやぶさ2」が目的地であるリュウグウで何をするのかといった大変興味深い話をしてくださいました。
11日(土)午後18時からは、宝石学会(日本)懇親会がキリンビール園本館にて行われ、45名の参加がありました。通常は宝石学会(日本)の懇親会は立食パーティーで行われますが、北海道ということでジンギスカンパーティーが行われ、他の出席者の方々との交流等、有意義な時間を過ごすことができました。
2日目、12日(日)は石狩浜と三笠市博物館において見学会が行われ、31名が参加しました。
石狩浜や厚田区の無煙浜には石狩川やその支流の夕張川、空知川等の流域にある炭田地区から流れたコハクが浜辺に漂着するため、石狩浜はコハクが採取できることで有名です。参加者一同でコハク採取にでかけましたが、採取は難しかったようです。
石狩浜を後にした参加者一同は、次の目的地、三笠市博物館に向かいます。三笠市博物館は1976年に三笠市内に分布している白亜紀の地層からウミトカゲ類のものとみられる頭蓋骨が発掘され、この出来事が発端となり、郷土資料等の民族部門と併せて1979年に創立されました。地質学関連の資料展示、主にアンモナイト等化石を中心とした3000点に上る資料が展示されています。また、野外博物館が併設されており、ここでは「三笠ジオパーク」のジオサイトの1つとなっており、野外において実際の地層や炭鉱遺跡等を見ることができ、5000万年前~1億年前の地層を見学することができ、好評でした。
石狩浜、三笠市博物館と自然、地質学、北海道の歴史等について多くを学ぶことができ、見学会に参加された方々には有意義な一日となりました。次回、2017年宝石学会(日本)総会・講演会は東京地区で開催されることが決まっています。◆