CGL通信 vol23 「日本鉱物科学会2014 年年会・総会参加報告」

CGL通信


CGL通信 vol23 「日本鉱物科学会2014 年年会・総会参加報告」

2014年11月No.23

リサーチルーム 江森健太郎

去る9月17日(水)から19日(金)までの3日間、熊本大学黒髪北キャンパスにて日本鉱物科学会の2014年年会・総会が行われました。弊社からは2名の技術者が参加し、それぞれ発表を行いました。以下に年会の概要を報告致します。

熊本のシンボル、熊本城
熊本のシンボル、熊本城
日本鉱物科学会とは

日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Sciences)は平成19年9月に日本鉱物科学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併されて発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ1000名の会員数を擁しています。日本鉱物科学会は鉱物科学およびこれに関する諸分野の学問の進歩と普及をはかることを目的としており、「出版物の発行(和文誌、英文誌、その他)」、「総会、講演会、研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」等を主な事業として活動しています。今年、2014年は世界結晶年であり、世界結晶年とのコラボセッションもありました。

世界結晶年2014年について

マックス・フォン・ラウエ博士がX線による結晶の回折現象の謎を解き、1914年にノーベル物理学賞を受賞しました。また、ヘンリー・ブラッグとローレンス・ブラッグ親子は結晶が原子配列して作られているものであることを食塩の結晶のX線回折により明らかにし、1915年にノーベル物理学賞を受賞しました。これらの革新的な実験は近代結晶学の誕生と位置づけられています。その後、近代結晶学は23ものノーベル賞受賞につながり科学技術の発展に貢献してきました。2012年7月、国際連合の総会はモロッコからの提案を承認し、国際結晶学連合(IUCr)、ユネスコ(UNESCO)と国際科学会議(ICSU)の支援のもと、これらの業績の100周年を記念するため、2014年を世界結晶年として制定しました。

日本鉱物科学会2014年年会

会場となった熊本大学は1949年の学制改革の際に熊本市所在の旧制諸学校を包括して、新制大学として誕生しました。日本の結晶学のパイオニア的存在である寺田寅彦氏の母校(第五高等学校時代)でもあり、今でも往時の教室や実験設備が国指定の重要文化財として一部保存されています(写真参照)。地理的には熊本市のシンボルである熊本城より北東に黒髪北キャンパスがあります。交通手段としては熊本駅からバスで30~40分程度かかりますが、本数も多く、アクセスに不便はありません。
今回の年会では、5件の受賞講演、10のセッションで136件の口頭発表、108件のポスター発表が行われ、参加者286名、懇親会参加者135名でした。

熊本大学黒髪北キャンパス前にて
熊本大学黒髪北キャンパス前にて
寺田寅彦が授業を受けた教室
寺田寅彦が授業を受けた教室
当時化学実験等で使用されていたドラフト
当時化学実験等で使用されていたドラフト

一日目、17日(水)の午前9時30分より、「結晶構造」「地球外物質」「岩石―水相互作用」のセッションが行われました。また、別会場でポスターセッションが同時に開催されました。12時~14時はポスターセッションのコアタイムに指定されており、ポスター発表者による説明、質疑応答、議論などが活発に行われていました。なお、ポスター発表は学会開催期間3日間を通して行われており、3日間ともコアタイムはたくさんの人で賑わっていました。

ポスターセッションのコアタイムの様子
ポスターセッションのコアタイムの様子

二日目、18日(木)午前8時50分より鉱物科学会の総会、10時10分より鉱物科学会受賞講演がありました。平成25年度日本鉱物科学会第11回受賞者である茨城大学理学部の木村眞氏、平成25年度日本鉱物科学会第12回受賞者である愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの土屋卓久氏、平成25年度日本鉱物科学会研究奨励賞第13回受賞者である物質・材料研究機構の佐久間博氏、平成25年度日本鉱物科学会研究奨励賞第14回受賞者である愛媛大学理工学研究科の斉藤哲氏、平成25年度日本鉱物科学会研究奨励賞第15回受賞者である大阪大学大学院理学研究科の横山正氏の講演がありました。また、受賞講演終了後、午後14時より「高圧化学・地球深部」「深成岩・火山岩及びサブダクションファクトリー」「地球表層・環境・生命」のセッションがありました。

鉱物科学会受賞講演の様子
鉱物科学会受賞講演の様子

三日目の19日(金)午前9時30分より「変成岩とテクトニクス」「鉱物記載・分析評価」「岩石・鉱物・鉱床一般」のセッションがあり、弊社研究者は「鉱物記載・分析評価」のセッションで「宝石コランダムの原産地鑑別①-その正確性と限界についてー」「宝石コランダムの原産地鑑別②-LA-ICP-MS分析の応用例―」の2件の講演を行いました。講演後、多数の質問が寄せられ、鉱物学会会員の方々の宝石学への関心の強さを感じ取ることができました。

毎年開催される鉱物科学会年会では最先端の鉱物学研究が発表されています。鉱物学と宝石学は密接な関係があり、参加し、聴講することで最先端の鉱物学に関する知見を得られ、普段接する機会が少ない研究者の方々との交流を深めることができます。来年も鉱物科学会年会に参加し、中央宝石研究所で行っている各種宝石についての研究をさらに深める予定です。なお、来年の鉱物科学会年会は9月24日~26日、東京大学で開催されます。

熊本大学五高記念館
熊本大学五高記念館
夏目漱石像
夏目漱石像

夏目漱石は1896(明治29)年4月14日、第五高等学校嘱託教員として着任し、同年7月9日に教授となった。
翌1897(明治30)年10月10日、創立記念日に教員総代として述べた祝辞の一説「夫レ教育ハ建国ノ基礎ニシテ師弟ノ和熟ハ育英ノ大本タリ」の文字が記念碑として本学内(黒髪北キャンパス)に建てられている。