CGL通信 vol17 「日本鉱物科学会2013年年会」
去る9月11日(水)から13日(金)までの3日間、筑波大学第1エリアにて日本鉱物科学会の2013年年会が行われました。弊社からは2名の技術者が参加し、それぞれ発表を行いました。以下に年会の概要を報告いたします。
日本鉱物科学会とは
日本鉱物科学会(Japan Association of Mineralogical Sciences)は平成19年9月に日本鉱物科学会と日本岩石鉱物鉱床学会の2つの学会が統合・合併され発足し、現在は大学の研究者を中心におよそ1000名の会員数を擁しています。 日本鉱物科学会は鉱物科学およびこれに関する諸分野の学問の進歩と普及をはかることを目的としており、「出版物の発行(和文誌、英文誌、その他)」、「総会、講演会、研究部会、その他学術に関する集会および行事の開催」「研究の奨励および業績の表彰」等を主な事業として活動しています。
日本鉱物科学会2013年年会
会場となった筑波大学は1872年(明治5年)に日本で最初に設立された師範学校を創基とする東京教育大学を前身とする大学で、その創立は日本で最も古い大学の一つです。大学に対する内外からのいろいろな要請にこたえるため、日本ではじめて抜本的な大学革命を行い1973年(昭和48年)10月に「開かれた大学」「教育と研究の新しい仕組み」「新しい大学自治」を特色とした総合大学として発足しました。
地理的には茨城県つくば市の中央部、筑波山の南側にあります。交通手段としてはつくばエクスプレスつくば駅からバスが定期的に出ており、アクセスに不便はありません(なお、東京駅から30分に1本直通バスも出ています)。
一日目、11日(水)の午前9時30分より「高圧科学・地球深部」「地球内部・高圧化学」「宇宙物質」「水-岩石相互作用」「岩石-水相互作用」のセッションが行われました。「地球内部・高圧化学」「水-岩石相互作用」の二つは同時に開催されていた地球化学会との共通セッションです。また別会場でポスターセッションが同時に開催されていました。12時~14時はポスターセッションのコアタイムに指定されており、ポスター発表者による説明、質疑応答、議論などが活発に行われていました。なお、ポスター発表は学会開催期間3日間を通して行われており、3日間ともコアタイムはたくさんの人で賑わっていました。
二日目、12日(木)の午前9時より鉱物科学会の総会、10時10分より鉱物科学会受賞講演がありました。
平成24年度日本鉱物科学会賞第9回受賞者で東京大学大学院理学系研究科の永原裕子教授の講演、同第10回受賞者で国立大学博物館の宮脇律郎氏の講演、平成23年度日本鉱物科学会研究奨励賞第11回受賞者で広島大学大学院理学研究科の宮原正明氏、同第12回受賞者で東北大学大学院環境科学研究科の岡本敦氏の講演がありました。
受賞講演終了後、午後14時から「鉱物記載・分析評価」「深成岩・火山岩及びサブダクションファクトリー」のセッションがあり、弊社研究者は「鉱物記載・分析評価」のセッションで「LA-ICP-MSを用いた宝飾用含ベリリウムコランダムの分析」と「宝飾用CVD合成ダイヤモンドの物性評価と鑑別」の2件の講演を行いました。会場はほぼ満席で立ち見もでており、鉱物学者達の宝石学への興味は年々増加している様子が感じられました。
三日目の13日(金)は9時30分より「変成岩とテクトニクス」「岩石・鉱物・鉱床一般」「結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物」「地球表層環境における鉱物科学」「火成作用と流体」のセッションが行われました。「結晶構造・結晶化学・物性・結晶成長・応用鉱物」のセッションで愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センターの大藤弘明氏のグループがロシアのpopigai(ポピガイ)・クレーターから発見されたImpact Diamond(衝突ダイヤモンド)の最新の研究結果を発表していました。popigai(ポピガイ)には1兆カラットものダイヤモンドが存在すると報告されているが、産出されるダイヤモンドは隕石の衝突でできた衝突ダイヤモンドでグラファイトのマルテンサイト固様変態から生じた多結晶ダイヤモンドであり、宝飾用にはなりえないダイヤモンドで、工業用の用途として期待されるという話でした。
鉱物学は宝石学と密接な関係があり、毎年開催される鉱物科学会年会は最先端の鉱物学研究が発表され、これらを聴講することで最先端の鉱物学に関する知見が得られます。また、鉱物科学会年会で発表することで、普段接する機会が少ない研究者の方々からのアドバイスを得ることができます。来年も鉱物科学会年会に参加し、中央宝石研究所で行っている各種宝石についての研究をさらに深めていく予定です。