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小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー5」

アンティークジュエリー・Antique Jewellery 5

アンティークジュエリー。それは、百年以上を経過して、なお光り輝きを失わずにいる宝石・貴金属の装身具、小物の美術工芸品、ウオッチ・クロックを含むジュエリーを指す。

職人たちが一点一点に精魂を込めた細工の精緻。今なお、わたくしたちにその素晴らしさと古きよき時代の息吹を伝え、感動を与えるアンティークジュエリー。その素晴らしいアンティークとの出会いの場として有名な二大美術品オークションがある。サザビーズとクリステイーズ。ここで世界中から価値を認められたアンティークが有能なオークショニア(競売人)の采配のもとに、お客の挙げるパドル(番号札)で競り落とされる。優雅で上品な独特な雰囲気の中、美術品と購入者の橋渡しが行われる。二大オークションハウスを案内しよう。

サザビーズ(Sotheby’s)は、ロンドンで書籍の売買をしていたサミュエル・ベーカーが、売主と買主が取引をする場を提供する目的で開催した古物のオークションから始まった。1778年にベーカーの甥、ジョン・サザビーが経営を引き継ぎ、多種のアンティークの取扱いを拡大していった。現在は世界35ヶ国に事務所を設け、18ヶ所で年間約750回以上のオークションを定期的に開催しています。オークションの取扱い分野は、宝石・貴金属ジュエリー、時計、絵画、版画、家具、陶磁器、古書などの美術品など多分野に及んでおり、世界最古の歴史的信用あるオークションハウスとして名声を博しています。

クリステイーズ(CHRISTIE’S)は、一方のオークションの雄として、240年の伝統と歴史を誇る世界的なオークション会社です。現在のオークションシステムは、商取引はオープンな場でフェアに行われるべきだという理念に基づき、イギリスを中心に18世紀末に普及しました。1776年にジェームス・クリスティーズによって創立されたクリスティーズは美術品専門のオークション会社として歴史は古く、世界40ヶ国に拠点を持っています。主なオークション分野は、宝飾装飾美術、西洋美術、東洋美術など、広い美術分野を取り扱っていて、とくに宝石・貴金属ジュエリー、ウオッチ・クロック、20世紀装飾美術(アールヌーボーなど)にも力を入れています。ロンドン、ニューヨーク、ジュネーブ、アムステルダム、香港などで年間500回のオークションを毎日のように開催しています。

この二大オークションでは、アンティークジュエリーの世界的逸品が競売され、そのニュースが世界中に報道されることがたびたびあるので記憶している人も多いでしょう。

とくに1990年前後バブル期には、日本人金持ちが、豪華な西欧ジュエリーや絵画を大枚のジャパン・マネーで競り落としたニュースが世界を駆け巡りました。

ここでアンティークジュエリーのオークションの参加方法について概略を説明しよう。
先ず、興味ある商品カテゴリーのオークション・カタログ定期購読の申し込みをオークションハウスに行う。宝石・貴金属・ジュエリー・時計製品に興味があれば、その旨申し込むと当該カタログが指定の宛先に送られてきます。カタログは各オークション開催毎に発行され、オークション開催日の約2週間前に直接ロンドンから郵送されます。

オークションでは、お客が直接作品を閲覧し、納得の上でのビット(入札)が販売条件となっており、オークション後のキャンセルは出来ません。オークションハウスは、作品についての問い合わせに対してコンディションなどの情報は現地から提供する。しかし購入はあくまでお客の自己責任となります。

ビット参加はお客または代理人が作品を直接閲覧することが条件であるが、オークションハウスが代行することもできる。但し、販売条件を了承済みが前提です。ビットは最高ビット価格の範囲内で出来る限り安く落札するように努めて入札する。オークション落札後、開催地のオークションハウスから請求書が届くので、現地通貨の海外電信送金で指定銀行口座へ支払う。請求金額は「落札価格+プレミアム(手数料)+該当する税金」の合計金額(オークション会場渡し価格)。なお参加者は、銀行照会が必要で、参加が適格か予め審査されます。

アンティークジュエリーをエステート(資産)として購入するのに、二大オークションハウスを利用することは有益な方法です。両社のオークションは誰でも参加できます。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

国際会議報告

ベリリウム拡散加熱処理サファイアに関する日本とタイの合意

日本とタイの会議

日本とタイの会議

ベリリウム拡散加熱処理ブルーサファイアの存在は、昨年春にツーソンで開催されたGILC(宝飾産業と鑑別機関の国際会議)でバンコックの鑑別機関によりその存在が明らかにされました。その処理の看破には非常に高度な検査が必要であることのみならず、その処理石が3大宝石の一つに数え上げられるブルーサファイアであったため、その発表以降この処理ブルーサファイアは色石市場で最大の懸念材料となっています。

日本ジュエリー協会(JJA)では、昨年タイの業界団体に対して書簡を送り、ベリリウム処理のものを厳格に情報開示することを要求し、その後一旦は日本の市場から激減したように見られましたが、再び昨年秋ごろから開示のないままこれらの処理石が増加し始めたため、今回JJAは再び書簡を送り、尚且つタイへ代表団を送り、タイの業界団体と直接的な話し合いを行いました。

この代表団には宝石鑑別団体協議会(AGL)からもテクニカルアドバイザーとして筆者を含め2名同行致しました。以下にタイの業界団体の話し合いの結果とベリリウム処理ブルーサファイアの現状について報告させていただきます。

会議は2月21日午後からタイ宝石宝飾品協会(TGJTA)会議室で行い、JJA、TGJTA、GIT(タイ国立宝石研究所)、CGA(チャンタブリ宝石宝飾品協会)、DEP (タイ国商務省貿易発展局)、そしてCIBJOからそれぞれの代表が集められ、延べ7時間に亘る話し合いの末、9項目の合意(次ページ参照)が交わされました。
その結果コランダム裸石を輸出する際、インボイスに以下の三つの文言にて処理の内容を開示することが約束されました。

 a. “Non Be Treated”  
 b. “Be Treated”  
 c. “Unconfirmed Be Treatment”  
“非ベリリウム処理(加熱)”
“ベリリウム加熱処理”
“ベリリウム処理が定かではないもの”

製品については、TGJTA内部での話し合いが済んでいなかったため、合意文では裸石と記載されていますが、JJAはコランダムが使用された製品に対しても同様の開示ルールの適用を要求し、TGJTA 側は要求を考慮することを約束しています。
このような適切な開示がなされずに日本に輸出され、後日ベリリウムが検出されたコランダムについては、輸出者は返品を受け入れ全額の返金に応じることも明記されました。
また、両国でベリリウム処理石とする基準の違いなどが発生しないように、基準確立のため両国の宝石鑑別機関を支援することも約束されています。

鑑別における現状
鑑別においては、ベリリウム処理の疑いのあるブルーサファイアにはLA-ICP-MSでの分析を必要としますが、初期の段階では高熱に長時間晒されたのが原因と思われる特徴的な内包物がそれらの処理ブルーサファイアの殆どのものに確認されていたため、そのような特徴をもとに高度なテストが必要なものと不必要なものを選別していました。しかし、最近のものに関してはそのような特徴が見受けられなくなり、多くのブルーサファイアがLA-ICP-MS分析の対象となっています。

GIAでは最近ベリリウム処理ブルーサファイアの研究のために数多くの天然ブルーサファイアをLA-ICP-MSを用いて分析し、マダガスカルのイラカカ産ブルーサファイアには天然起源のべリリウムを含有するものがあることを発見しています。それらはサファイア中の微小内包物と密接に関係しており、内包物の箇所からのみベリリウムだけでなくタンタルやニオブという元素も検出されています。LA-ICP-MSによる詳細な分析でベリリウムが人為的に外部から拡散されたものか自然界で取り込まれた内包物に関連したものかを98%区別出来る、と代表団がGIAリサーチラボを訪問した際にケン・スキャラット所長が述べていました。
弊社で行ったLA-ICP-MSによる分析では、イラカカ産だけでなくタイのカンチャナブリ産ブルーサファイアにも内包物に起因したベリリウムがあることが発見されています。これについての報告は後日させて頂きます。

LA-ICP-MS(レーザー・アブレーション誘導結合プラズマ質量分析)
波長の短い高エネルギーのレーザーを固体サンプル表面に照射するレーザー・アブレーション装置と、蒸発・飛散した粒子を高周波プラズマでイオン化し、その質量を分析するICP-MS装置の2種の装置から構成されています。これらの装置によって軽元素のヘリウムから重元素のウランまでの元素の種類や量をppb~ppm(10億~100万個中の1個)レベルで求めることが出来ます。

チャンタブリでの現状
代表団一行でベリリウム処理ブルーサファイアの生まれたチャンタブリに向かい、チャンタブリ宝石宝飾品協会(CGA)を訪問しました。我々の目的はベリリウム処理ブルーサファイアの処理現場を見ることであったのですが、CGA会長からは町の宝石市場にはベリリウム処理ブルーサファイアが確かに出回っているようだが、誰がその処理石を持っているのか、誰がベリリウムでブルーサファイアを処理しているのか掴めない、と全くベリリウム処理ブルーサファイアに関する情報は全く得られませんでした。
その後、ベリリウム処理オレンジサファイアの工場とマンスールビーの加熱が行われている工場を見学しましたが、チャンタブリでは1000度1時間の焼きをウォーミング、1800度で数日間掛けるような焼きをヒートと呼んでおり、ヒートされた石はヒーテッドサファイア、ウォーミングされた石は単にナチュラルサファイアと呼んでいます。多くの内包物にも変化生む1000度もの温度で加熱した石をナチュラルと呼ぶことに我々は疑問を感じて帰ってきました。

Memorandum of Understanding

This Memorandum of Understanding is made by and between Japan Jewllery Association (hereinafter shall be called “JJA”) and Thai Gem and Jewelry Traders Association (hereinafter shall be called “TGJTA”) at the meeting held at the office of TGJTA to discuss the disclosure of Beryllium treatment in corundum. The meeting was also attended by representatives from the Department of Export Promotion (DEP), Ministry of Commerce, the Gem and Jewelry Institute of Thailand Public Organization (GIT) and Chantaburi Gem and Jewelry Traders Association (CGA). The list of the attendees appears in the annex.
The meeting has agreed as follows:

1. The exporter of loose corundum must disclose the treatment on the invoice for the export item with the following terms:
a. Non Be Treated
b. Be Treated
c. Unconfirmed Be Treatment
Non compliance will be dealt with under the rule of the Thai Associations.
The JJA requested the same disclosure rules also to be applied to jewelry set with corundum.
The TGJTA will consider this request and will inform the JJA the result as soon as possible.
2. TGJTA proposes to create a Cluster Blue Sapphire Group for exporting only non Be treated corundum. The list of this group will be at the disposal of the Japanese side. JJA will distribute this information among its members.
3. Both sides agree to establish a set of standards for Be identification with support from gem laboratories in both countries.
4. TGJTA requests similar disclosure standard from the Japanese side.
The JJA confirmed that the JJA members must follows the same disclosure standard in their domestic transactions. Non-compliance will be dealt with under the rule of the Japanese association.
5. For corundum exported to Japan without proper disclosure and subsequently tested to contain Be, the exporter shall accept the return of the stone, and make full refund to the buyer.
6. TGJTA requests that the disclosure procedure should be applied to all corundum exporting countries to Japan. The JJA confirms to find the means to comply with this request.
7. Both sides will request their gem laboratories to do joint research in order to strengthen the disclosure procedure.
8. The content of this agreement shall be announced to members of the respective associations as soon as possible.
9. TGJTA proposes to JJA to give information about Be treatment to the consumers and retail level. JJA accepts this proposal.

CIBJOケープタウン総会

会場建物入口

会場建物入口

CIBJO(World Jewellery Confederation)は、2007年3月12日から15日までケープタウン(南アフリカ)で総会を開催しました。
初日の開会セレモニーでは、キンバリープロセスの扇動者であった南ア副大統領からCIBJO総会がケープタウンで開催される喜びと資源豊富なアフリカの将来への指針が発表され、その他南ア政府高官、国連代表、WDC会長、WFDB会長、IDMA会長、デビアスグループ会長等からのゲストスピーチが行われ、4日間の幕が開かれました。
以下に主な委員会での決定について報告します。

貴金属委員会
貴金属委員会では、ダイヤモンド・色石・真珠と同様に宝飾品、時計、および銀製品と関連した貴金属を金、銀、プラチナ、およびパラジウムに限定してブルーブック(規則・定義集)を作ることが決定しました。
また、貴金属の純度に対する許容値については、米国が現在3ポイント下まで許容されている(例えば747/1000までk18の表示が出来る)が、日本を含めその他殆どの国は許容値ゼロで、CIBJOとしては下への許容値をゼロとすることが提案されました。

CIBJOダイヤモンド委員会

CIBJOダイヤモンド委員会

ダイヤモンド委員会
昨年のバンクーバー総会では合成ダイヤモンドのグレーディングが容認されましたが、今年GIAが発表した合成ダイヤモンドグレーディングレポートに関して言えば、タイトルは“Synthetic”、鑑別記載には”Laboratory Grown”、そしてその詳細コメントに”Man-made”という3つの用語が使用されており、その他米国の2鑑定機関(IGIとEGL)では”Synthetic”用語が全く使用されていないことが報告されました。
CIBJOでは現在 合成を意味する唯一の用語として”Synthetic”を定めていますが、英語圏の国からは”Synthetic”以外に”Laboratory Grown”や”Man-made”用語の使用が求められています。この件については数年前から議論を重ねておりますが未だにコンセンサスは見出せておりません。米国の3機関が合成ダイヤモンドのグレーディングレポートに対し“Synthetic”以外の用語を使用していることを含めてダイヤモンド運営委員会で引き続き検討することになりました。
また、ダイヤモンドブックのISO書式化に関しても承認され、期限を切って次のステップに入ることが確認されました。

パール委員会
パールブックのISO書式化は承認されましたが、一部の内容について議論が交わされました。
真珠の漂白加工の情報開示は昨年のバンクーバー総会で開示の必要なしと一応決定されていますが、今総会で再度検討され、開示必要な加工に書き換えられました。その開示法については、他の開示が必要な加工よりもソフトな記載法が提案されていますが、記載法の決定は来年の総会でもう一度討議されるもようです。
養殖真珠に使用される核の素材については、以前に天然物質であることが定義付けられています。近年天然素材のドロマイトを処理したバイロナイトと呼ばれる核がオーストラリアなどで使用されている事実や従来からの問題であるワシントン条約で規制されている天然素材の使用、またプラスチックや張り合わせ核などを使用することへの議論が行われました。結局核の問題に関する統一した意見は見出せなないまま終わったため、来年の総会で引き続き検討されるでしょう。

色石委員会
昨年承認された色石ブックの内容はISO書式化され、今総会で承認されました。
CIBJOブルーブックは業界人であっても専門用語を知らない限り読みづらいものであるため、消費者や業界人にとって判りやすい小冊子やダイヤモンドの4Cを紹介したカウンター用パネル形式の色石版の作成が提案され、グレーディングを連想させる懸念が指摘されましたが、コンセプトとしては承認されて作業の継続が決定しました。
また、日本とタイのジュエリー協会がベリリウム処理コランダムに関する覚書が交わされたことが発表され、出席者からは高い評価を得ていました。

ラボトピックス「ガーネット」

ガーネット

1月の誕生石として知られるガーネットは、赤色の宝石と思われがちですが、実は、オレンジ、緑といった、色彩豊かな変種が存在します。今回のラボ・トピックスでは、店頭で目にすることが多い「赤色系」と「緑色系」のガーネットについて2回にわたってご紹介します。

ガーネットにさまざまな色合いが存在する理由は、ガーネットが類質同像(同形)をとる宝石だからです。「類質同像」――聞きなれない難しそうな専門用語ですが、つまりガーネットは、共通の結晶構造を持ちつつも、その構造に取り込まれる成分が少しずつ異なる鉱物なのです。そのため、それぞれの色・屈折率・比重・分光性が異なり多種多様なガーネットが生まれます。

ガーネット族(ガーネット化学式)

化学的に説明しますと、ガーネットの化学組成を表す一般式は、X3 Y2(SiO43です。
X3には、カルシウム(Ca)・マグネシウム(Mg)・鉄(Fe・二価)、マンガン(Mn)が入ります。Y2には、アルミニウム(Al)・鉄(Fe・三価)・クロム(Cr)が入ります。このX3とY2の組み合わせによってガーネットは多数の変種ができるのです。このようにしてできる一連の鉱物グループを、「ガーネット族」と呼んでいます。ガーネット族の変種は鉱物学的には16種類あり、そのうち宝石としてとり挙げられているのは6種類です。この6種類は成分の構成上から、赤色系のガーネットである『パイラルスパイト系列』と緑色系ガーネットの『ウグランダイト系列』とに分かれます。

赤色系ガーネット『パイラルスパイト系列』の分類

パイロープ、アルマンディン、スペサルティンガーネットは、パイラルスパイト系列とよばれ、主に赤色系のガーネットが多く存在します。図1の三角の角にあるパイロープ、アルマンディン、スペサルティンは、端成分といいます。端成分とは、一切混じりけの無い状態です。しかし、それぞれの端成分ガーネットの化学組成を構成する元素、マグネシウム(Mg)・鉄(Fe)・マンガン(Mn)は性質が似ているため、適度な温度と圧力下で相互の成分が混ざり合い、ひとつの結晶体になることがあります。
このことを固溶体といいます。また、端成分同士が任意の割合で混ざり合うことが可能ですので、中間タイプを生みます。
中間タイプの代表例として、紫赤色で人気のあるロードライトガーネットが挙げられます。これは、パイロープ/アルマンディンの中間タイプです。その他、コマーシャルネームで知られるマラヤガーネット(別名ウンバライト)やカラーチェンジタイプガーネットは、パイロープ/スペサルティンの中間タイプになります。アルマンディン/スペサルティンの中間タイプも存在します。

図1 パイラルスパイト系列の分類と特性

赤色系ガーネットの特性

次に、パイラルスパイト系列ガーネットの色相、屈折率、比重、分光性についてお話をしていきます。

写真1

<色 相>
写真1は左側から、A.パイロープ、B.ロードライト、C.アルマンディン、D.スペサルティンです。それぞれ同じ赤色系ですが、ピンク色・赤紫色・暗赤色と色相の違いが分かると思います。色相に違いがでてくるのは、鉄(Fe)が原因なのです。
パイロープは、アルマンディンやスペサルティンと違い化学組成の中に色となる元素を持っていないため、純粋な成分のものは無色透明です。しかし、一般的なパイロープは、クロム(Cr)と鉄(Fe)が不純物として混ざっているので色相は「炎のような」真紅色です。ですが、クロム(Cr)と鉄(Fe)が不純物として混ざる分量によっては色相が真紅色ではなく、ピンク色や無色(かなり希少)になることもあります。今回のAのパイロープは、クロム(Cr)と鉄(Fe)の量がかなり少ないためピンク色です。一方、Cのアルマンディンは、暗い赤色に見えます。鉄(Fe)は、色相を赤くしますが、多く入ると黒っぽくなる性質があります。パイロープに含まれるマグネシウムに置き換わって鉄の成分が多くなっていくと赤色になりますが、さらに鉄の含有率が高くなるアルマンディン寄りになると色相が赤黒くなります。
Cのアルマンディンも、当研究所の蛍光X線元素分析するとかなりの分量の鉄(Fe)が検出されました。
Dのスペサルティンの橙色は、マンガン(Mn)によるものです。

<屈折率・比重>
パイラルスパイト系列の中で、屈折率と比重が一番低いのはパイロープです。パイロープにアルマンディン成分の鉄(Fe)が増えると屈折率、比重の数値が高くなります。鉄(Fe)の量と屈折率、比重は比例関係にあります。サンプルAのパイロープとCのアルマンディン表1とでは、屈折率、比重にかなりの差が生じているのが分かると思います。そして、Bのロードライトは、両者の中間あたりの数値です。またスペサルティンのマンガン(Mn)も多くなるにしたがい、屈折率・比重が高くなります。

<分光性>
 ハンドタイプの分光器では、色因となる元素の吸収がみられます。表1に示したとおり、パイロープではクロム(Cr)の吸収がみられます。ロードライトやアルマンデインでは、鉄(Fe)バンドと呼ばれる吸収帯がみられます。スペサルティンはマンガン(Mn)バンドがみられます。中間タイプのガーネットでは、鉄(Fe)バンドとマンガン(Mn)バンドの両方がみえることもあります。

表1

  色相 屈折率 比重 分光性 インクルージョン
A パイロープ ピンク色 1.734 3.63 クロム(Cr) 針状、結晶
B ロードライト 赤紫色 1.767 3.91 鉄(Fe) 針状、結晶
C アルマンディン 暗赤色 1.81以上 4.19 鉄(Fe)強 針状
D スペサルティン 橙色 1.81以上 4.15 マンガン(Mn) 液膜、結晶

パイラルスパイト系列の赤色系ガーネット、パイロープ、アルマンディン、スペサルティンは中間タイプが存在するということが特徴です。したがって、ガーネットの種類を識別するには屈折率・比重・分光性の検査が大切です。
当研究所では、AGLで定められている屈折率、比重、分光性の基準に基づいて識別をしています。(屈折率・比重・分光性のAGLの基準数値は図1参照。 )
緑色系の『ウグランダイト系列』のガーネットについては、次号ご紹介致します。(つづく)

当研究所の分析報告書のご紹介

ラマン分光器によるダイヤモンド中パイロープガーネットの分析

図3 ラマン分光分析

図4 フォトルミネッセンス分析

今回ご紹介した赤色系のガーネットのひとつであるパイロープは、他のガーネットと異なり、かんらん岩やキンバリー岩などの高い圧力をうけてできた岩石中に存在し、ダイヤモンドと共に発見されます。南アフリカ、ロシア、カナダのダイヤモンド鉱床からも見つかっています。また、ダイヤモンドの中にパイロープの結晶がとりこまれていることもあります。このようなダイヤモンド中のガーネットをラマン分光分析すると、ガーネットと特定することができます(図3)。表面に結晶が達している場合は、蛍光X線による元素分析を行うとクロム(Cr)が検出されることもあります。また、フォトルミネッセンス分析では、700nm付近に発光スペクトル(683・686・689・693nm)が観察されます(図4)。これは、パイロープの不純物として含まれる、クロム(Cr)による発光で、この結晶が明らかにパイロープガーネットであることを意味しています。
ダイヤモンド中にガーネットが入っている場合、ご希望によりそのガーネットの拡大写真付きの分析報告書を発行致します。(※通常の鑑別書+内部世界分析報告書という形での発行となります)

小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー4」

アンティークジュエリー・Antique Jewellery 4

アンティークジュエリー。それは古美術的骨董装身具。

百年以上を経っても、なお輝きを失わず、寧ろますます価値が上がり輝きを増す宝石・貴金属の古美術的装身具や古美術的工芸品をさす。

アンティーク業界には、お値打ち品、掘り出し物、出世物、家宝、心の勲章という仲間用語があるようだ。骨董品には想像以上の価値あるものに出会い、思わず感動して手にしたりすることがある。しかもその品物が出世することである。所有する骨董品が時代を経るにつれて一層輝きを増し、価値が上昇していく出世する骨董品である。いわゆる、ほんとうのお値打ち骨董品である。

また骨董品は心の勲章ともいわれる。先祖から受け継がれてきた骨董品、家の先祖代々が愛用してきた骨董品は、それは金額が高い安いに関係なく、自分にはかけがえのない骨董品・家宝である。それを大事に所有愛用することは、その人にとって誇りであり、先祖に感謝し、心の癒しとなり、心の勲章になる。骨董美術品を所有することは歴史を感じ、生活に豊かさを与え、心の癒しとなり、目には見えない心の誇りとゆとりになるというわけだ。

さて歴史を振り返れば、どの民族も古くから装身具を身に付けている。特にヨーロッパではジュエリーの歴史は古い。一点一点、職人たちが精魂を込めて製作した細工の素晴らしさ、今となっては再現不可能な精緻な技法もそのジュエリーにはある。時代の息吹を伝えるデザインが今の人にも十分な魅力が横溢している。しかし日本人にとって宝石・貴金属ジュエリーは、不思議なことに無縁の時代が長かった。気軽につき合えるようになったのは、実はごく最近のことだ。アンティークジュエリーは、われわれ日本人にとって時間とお金をかけて探求に価する、美しく、価値ある、いまだ謎に満ちた、やや遠い存在といえるだろう。

われわれが宝石・貴金属ジュエリーを、なにかの記念に、自分なりに感動をともなって、あつらえ取り揃え、一生涯愛用し、その後は子供に孫にと次世代に伝えられようであれば、これにすぐる物はない。これこそ将来にわたって、その家族子孫にとって、本当の意味でのアンティークジュエリーに出世していくだろう。これは金額の高低に関係なく、その家の超お宝ジュエリーとなるだろう。

ここで提言したいのは、アンティークジュエリーは何も高いお金を出して、欧米で探すだけが唯一の考え方ではない。わが家の将来のアンティークジュエリーを自分なりに創造、創作、蒐集したら如何かと思う。遠い将来にわたって、わが家の子孫が、百年以上前のジュエリーを所有愛用してもらえる喜びを想像してみたい。今年のアカデミー賞授与式のインタビューで、受賞の有名女優が司会者に「貴女は素晴らしい宝石を身に着けている」と問われて、彼女は「これはわが家に伝わるファミリージュエル(家宝)」と正に心の勲章とばかりに応答していた。自分なりに一生に一つでもエステートジュエリーを今から用意すること、これも一つの骨董に対する見方・考え方といえる。心に残る感動のジュエリーを創作する、または蒐集して残すことは将来子孫に受け渡し、受け継いでいく家宝(Family Jewellery)となりうる。今はたまたま自分が持っているだけという気持ち。そして将来子孫の心の財産となり、心の勲章にもなるファミリージュエリー。ヨーロッパのアンティークジュエリーの中には、故人の遺髪を用いて作られたものや、銘を彫ったものなどモーニングジュエリーが存在するほどである。日本でも宝石・貴金属ジュエリーを次世代に受け渡していく大切な遺産(エステート)として、ジュエリーに対する考え方をそろそろ持つ時代になってきたようだ。

アンティークジュエリーは、その所有する人にとって何か由緒があれば、その人の追憶や誇りとなり、心の癒しとなり、心の勲章となる。その人に歴史を感じさせることになる。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース

GWも過ぎ、いかがお過ごしでしょうか。
今号は、新春号から特集してまいりました話題の映画「ブラッド・ダイヤモンド」(原題「Blood Diamond」(c)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.)の完結号といたします。
公開がGWから4月初旬に早まり、ストーリーが明らかになりましたので報告します。
また、業界の方々から映画の感想を戴きましたので、一部をご紹介させて戴きます。

背景

舞台は1990年代後半のアフリカ「シェラレオネ」というダイヤモンド産出国。この国で産出された大部分のダイヤモンドは、非合法に輸出され反政府組織やテロ組織の資金源になっていると言われており、それが背景となっています。不正なルートで紛争地域から市場に出るダイヤモンドが「ブラッド・ダイヤモンド」(血で汚れたダイヤ)と呼ばれています。この映画はダイヤモンドの不正な取引をめぐって起きる不毛な争いの現実問題が描かれています。

ストーリー

のどかな村が反政府軍に襲撃される。村人たちは無差別に虐殺され、子供は少年兵に仕立て上げるため、また労働力として連れ去られた。
その時、反政府組織のダイヤモンド採掘場の労働力として連れ去られた漁師は、とてつもない価値を持つ大粒のピンクのダイヤモンドを見つけ、それを土の中に隠す。
偶然にそのことを知ったダイヤモンド密輸業者役のレオナルド・ディカプリオはそれを手に入れようと漁師に近づく。
一方、アメリカ人ジャーナリストは「ブラッド・ダイヤモンド」の密輸ルート解明のため、ダイヤモンド密輸業者であるディカプリオに近づく。
ひとつの大粒のピンクダイヤモンドを巡り、それぞれの思惑が交錯していくという物語です。

大手宝飾チェーン店本部生産資材課の方の感想

『この映画を知るきっかけとなったのは、DTCが開始した「フォーエバーマーク」の資料からでした。
その時は大した興味も持ちませんでしたが、百貨店サイドから映画公開を前に御社のダイヤは紛争ダイヤではありませんか? また、それを証明できますかという内容のFAXが届き、会社として動かざるを得ない状況となりました。
その後、取引のあるダイヤモンド業者に色々と教えて頂き、わかりませんとしか答えられないような状況を防ぐ為、仕入れ伝票にキンバリー・プロセスの文言を入れて頂くよう徹底しました。
そしてついに米国公開から大幅に遅れて、日本での劇場公開が始まったのです。
映画の感想としましては、やはり全体的にはジュエリー業界にとってマイナスとなり得る内容だったと思います。
基本的にはアクション寄りの感動系ですが、映画の節々にダイヤを買う消費者が紛争を長引かせている原因だということが表現されていました。
また、こういった事実を知ればダイヤモンドをだれも買わなくなるだろうというようなセリフもありました。また、1社が単独でダイヤモンドの価格調整を行い、コントロールしているという場面もありました。
必ずしも映画の全てが事実ではないと思いますが、捉え方次第ではジュエリー業界自体のイメージが悪くなってしまうとも考えられます。最近、テレビ番組等でこの映画について特集されていますが、基本的にはジュエリー業界に対し逆風となる捉え方が多いようです。
そのような風潮もあるというのに、宝飾業界に身を置きながら、ほとんど危機感を持っておらず内容すら知らない者が大多数で、さらにSHOPレベルとなれば全く何も知らないというのが現状です。過剰に反応するのもどうかとは思いますが、お客様から「このダイヤは紛争ダイヤですか?」などと聞かれるようなケースも想定し、きちんと対応できるように準備はしておくべきだと思います。近いうちにSHOPでこの質問をしてみようかなどと考えています。
ただ、映画を見た人の評価などをWebで調べてみましたが、「ディカプリオがかっこいい」といった感想が多く、消費者はそこまで気にしていないのかもしれません。』

宝飾チェーン店販売員の方の感想

『この映画で一番印象に残っているのは、反政府軍の侵略や反政府軍と政府軍の戦闘のシーンで、それは非常に凄まじいものでした。
反政府軍による、紛争とは無関係な人々の虐殺や手足の切断は、敵(政府)の戦力低下を目的とし、増大した障害者の保護により政府に財政的な負担を増加させ、またそれは選挙で投票できないようにするためともいわれているそうです。
また、さらった子供達を洗脳して少年兵に仕立て上げていく様子にも大変ショックを受けました。
「ダイヤモンドを欲しがる者がいる限り紛争は無くならない」と受け取れるような表現も各所にありましたが、全体的には激しい内戦の現実をリアルに描いたアクション映画だったように思いました。
宝飾業界とは全く無縁の友人たちに、この映画を見た感想を聞いてみたのですが、「すごくいい映画だった」というのが主な感想で、紛争ダイヤモンドについての質問はされたものの、ダイヤモンドを買う気が失せたという人はいませんでした。
恐らくダイヤモンド需要に影響が出るような事態にはならないでしょう。
ただ、この映画が公開されたことにより、アフリカの紛争や貧困の問題に対し、人々の関心が高まっていくことがあるのなら、とてもすばらしい映画であると思いました。』

最後に

私が実際シェラレオネという国を知ったのは、ユニセフ親善大使をされていた黒柳徹子さんが内戦終結直後(2002年にカバ大統領が国家非常事態の終了宣言)、2003年にシェラレオネに入られ、子供たちと語り合うというテレビ番組からでした。
紛争による死者が多数に上ったため国民の平均寿命が35歳であることや、手足を奪われた子供たちの光景、それはこの映画そのものでした。
天然鉱物資源がある国にもかかわらず、なぜ石油産出国のように豊かではないのかとショックを受けたのを覚えています。
以前は、アフリカ諸国をはじめとする世界のダイヤモンド産出国で、この大切な天然資源の一部が紛争の資金源として利用されることがありました。
しかし、2000年に各国政府、非政府組織、ダイヤモンド業界が一丸となってこの問題の解決のために立ち上がり、その後「キンバリー・プロセス証明制度」が確立されました。
キンバリー・プロセスは紛争地ダイヤモンド取引の撲滅に大きく貢献することとなりました。昨今、世界中で取引されるダイヤモンドの99%以上が紛争と関係のない地域から採掘されたものとなっています。
当然のことながら当社すべての取扱商品やその他日本に輸入される商品も、キンバリー・プロセス、そして、システム・オブ・ワランティを遵守した、お客様に自信を持ってお勧めできるすばらしいダイヤモンドです。
現在、ダイヤモンドとその収益が、アフリカの発展促進に大きく貢献しているということがあまり知られていないのは残念なことです。
この映画が公開されたことにより宝飾業界に多少の影響があったとしても、ダイヤモンド業界が注目された今こそがビジネスチャンスと考え、がんばっていこうではありませんか!
また、アフリカ諸国やその他の国々に、個人或いは企業体でなにか貢献できるのではという考えをお持ちの方などいらっしゃいましたら、弊社までメール(sales@ibctokyo.com)にてご連絡ください。ぜひ一緒に考えていきたいと思っております。


アイスブルーダイヤモンド企画・開発プロデューサーが、お客様に本当にあった商品企画をご提案するために設立したダイヤモンド専門会社
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USA会議レポート

AGTAショーが開催されたツーソンコンベンションセンター

AGTAショーが開催された
ツーソンコンベンションセンター

人気のGJXショー入口

人気のGJXショー入口

本年も1月末から2月に掛けて米国のアリゾナ州ツーソンでジェム・ミネラル&フォッシルショーが開催されました。筆者も1月30日から一週間幾つかの展示会場を視察して参りましたが、今回のツーソンは例年と比べ気候も含めて展示会の状況も全く異常と言えるくらい違ったものでした。

この時期にツーソンの町全体で開かれているおよそ44の展示会は2、3日の違いはあれ殆んど同時に開催されています。ですから、バイヤーは一日に幾つかの展示会場を無料シャトルバスで回ることも可能です。それらの中で大きな展示会場と言えばコンベンションセンターで行われているAGTAショーとその通りを挟んだ空き地に巨大なテントを建てて行われているGJXショー。ここ最近ではAGTAショーよりもGJXショーの方が人気も高く出展希望者が多く、昨年からは別棟のテントが建った程です。更にコンベンションセンターから通りを渡らずに徒歩で3分位のところあるWGJSショーです。ここはGLDAショーが以前使用していたホリデーインの建物で、その後ラッディッソン・ホテルとなり、現在はホテル・アリゾナと云うホテルに変わっていますが、GLDAショー時代の出展者達の多くが当時と同じ場所にブースを構えています。GLDAショー自体はツーソン郊外にあるゴルフ場を有するリゾートホテルのスターパス・マリオットに移っており、コンベンションセンター間を往復する専用シャトルで集客に努めています。

屋外の会場では巨大な水晶の丸玉も売られている

屋外の会場では巨大な
水晶の丸玉も売られている

ショーは郊外でも数多く開かれており、その中で最も集客力のある展示会と言えばツーソン国際空港に寄りにあるGLW-Hショー(通称:ホリドーム)が有ります。ここへは一般人も入れることからアクセサリーのような製品も多く、手ごろな価格帯のものが豊富であるため常に人でごった返しています。

今年のツーソンもやはり世界的な異常気象の影響を受けており、筆者がツーソンに入いる前の週に積雪のため空港は閉鎖されたそうです。この地方はカリフォルニア州からアリゾナ州及びメキシコ合衆国ソノラ州にかけて広がるソノラ砂漠に属し、朝昼晩で寒暖の差が激しい砂漠特有の気候で、空気は非常に乾燥しています。冬は北部の山岳地帯でまれに雪も降りますが、空港や市街地に雪が降ったと聞いたのはこれが初めてです。そのような天候の影響で翌週のAGTAショーとGJXショーの初日は朝から雨、気温も摂氏10度程度までしか上がりませんでした。このような天候が原因では無いでしょうが、AGTAショーとGJXショーは初日でも来場者数が少なく、例年なら初日の午前中は入場者バッジを取るために長蛇の列に並ばなければいけないのにどちらのショーの登録カウンターも10人程度しか並んでいない状況でした。今年は総合的に何処のショーでも来場者の数が減っているようです。中でもひどいと感じたのはホテル・アリゾナで開かれているWGJSショーで、立地条件が最良であるにも拘らずホテルの地下から2階までの展示スペースには空きブースが目立ち、来場者もそれ程入っていないためまるでショーの最終日午後のように閑散とした雰囲気でした。

高さ2mもある巨大水晶を入口に展示したリバーパークイン

高さ2mもある巨大水晶を
入口に展示したリバーパークイン

いろいろな色に染色されたトルコ石のブロック

いろいろな色に染色された
トルコ石のブロック

肝心の宝石に関して言えば、毎年のようにツーソンでは話題に上る宝石が出て来るのですが今年は特に話題になるような石は有りませんでした。3年前はペツォッタイト、昨年はモザンビーク産のパライバカラーのトルマリンが大きな関心事で何処へ行っても話題の中心でしたが、ペツォッタイトは殆んど扱うディラーも少なくなったようです。モザンビーク産パライバ・トルマリンは結構な数を見かけましたが、モザンビークでもこの種のトルマリン鉱脈はかなり枯渇して来ており、目にする石の量も今年がピークではないかという人もいました。最近市場で問題になっているベリリウム拡散処理ブルーサファイアに関しても思った程ツーソンでは騒がれてなく、AGTAショーの一部の出展者だけがブルーサファイアの傍に“NO Be”とか“NO DIFFUSION”と記載したカードを出して自分の石は安全ですよといった意思表示を示している程度でした。

最近は全米を含めて、海外でのジュエリーショーがやたら多く、このようにあっちこっちでやっているとかえってインパクトもなくなり、また各ジュエリーショー開催地に飛ぶ旅費も原油の値上がりで影響を受けています。ツーソンに関して云えば、この時期ホテルの室料も毎年上昇し続けており、出展者にもバイヤーにも良い材料は見受けられません。来年のツーソンジュエリーショーはどうなっているかなど心配するのは早いかも知れませんが、何となくツーソン離れが起きているようです。

ツーソンショーの一覧
Showの名称 開催場所 開催日
1820 Oracle Wholesale Show 1820 Oracle Wholesale Show 1/26~2/11
A.B.C. Direct East A.B.C. Direct East 1/27~2/10
A.B.C. Direct West A.B.C. Direct West 1/27~2/10
African Art Village African Art Village 1/27~2/11
AKS Gem Shows Howard Johnson 1/27~2/10
AKS Gem Shows La Quinta Inn 1/27~2/10
American Gem Trade Association Tucson Convention Center 1/31~2/05
American Indian Exposition Flamingo Hotel 1/28~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Clarion Hotel/Randolph Park 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows InnSuites Hotel 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Minearl & Fossil Marketplace 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Quality Inn/Benson Hwy. 1/27~2/10
Arizona Mineral & Fossil Shows Ramada Limited 1/27~2/10
The Bead Renaissance Show Bead Renaissnace Pavilion 1/29~2/05
Beaudry Gem & Mineral Show BGMS Gem Central 1/27~2/04
The Best Bead Show Kino Veterans Memorial Community Center 1/31~2/04
Create Your Style With Swarovski Omni Tucson National Golf Resort & Spa 1/31~2/03
Executive Inn Mineral & Fossil Show Best Western Executive Inn 1/27~2/10
Fine Minerals International Fine Minerals International Gem & Mineral Forum 1/28~2/10
Gem & Lapidary Dealers Association Starr Pass Marriott Resort & Spa 1/30~2/04
Gem & Lapidary Wholesalers Gem Mall 1/27~2/09
Gem & Lapidary Wholesalers Rodeway Inn/Quality Inn 1/27~2/09
Gem & Lapidary Wholesalers Holiday Inn/Holidome 2/01~2/09
GJX Gem & Jewelry Show Gem & Jewelry Exchange 1/31~2/05
Globe-X Gem & Mineral Show Days Inn/Convention Center 1/26~2/11
Granada Avenue Mineral Show Granada Ave. & St.Mary’s Rd. 1/27~2/10
J.O.G.S. International Exhibits Tucson Expo Center 1/26~2/06
Jewelry, Gem & Mineral Exposition JG & M Expo/Michigan St. 1/27~2/11
Jewelry, Gem & Mineral Exposition JG & M Expo/Simpson St. 1/27~2/11
Madagascar MineralsTM Gem Show Norcross-Madagascar Gallery 1/26~2/12
Mineral & Fossil Co-op Mineral & Fossil Co-op 1/27~2/10
Pueblo Gem & Mineral Show Riverpark Inn 1/27~2/08
Rapa River Gem & Mineral Show Rapa River 1/26~2/11
Rio Grande Catalog in Motion Hilton Tucson East 2/02~2/05
Spectrum of Stones Econo Lodge 1/27~2/10
T Rex Musem Show T Rex Museum 1/27~2/10
To Bead True Blue Manning House Mansion 1/30~2/04
Tucson Electric Park Gem & Mineral Show Tucson Electric Park/Kino Sports Complex 1/27~2/11
Tucson Electric Park RV Gem Show Tucson Electric Park/Kino Sports Complex 1/27~2/11
Tucson Gem and Mineral ShowTM Tucson Convention Center 2/08~2/11
Tucson Showplace Tucson Showplace 1/26~2/11
Tucson Westward Look Mineral Show Westward Look Resort 2/02~2/06
The Whole Bead Show Windmill Inn 1/31~2/05
Worldwide Gem & Jewelry Show The Hotel Arizona 1/31~2/05

ラボトピックス「ハックマナイト」

ハックマナイト

様々な色のハックマナイト

ソーダライトの変種であるハックマナイトは、紫外線を照射すると変色し照射を止めると元の色に戻る性質を持ち、それが何度でも繰り返されるため、コレクターストーンとして人気のある石です。ハックマナイトはロシアのコラ半島で最初に発見され、その名前はフィンランドの岩石学者であるビクトル・ハックマンに因んで名づけられました。
今回様々な産地のハックマナイトを検査する機会を得たのでその特徴を紹介します。

一般検査

今回検査したハックマナイトの産地別内訳はミャンマー・パキスタン・アフガニスタン・ロシア・カナダ産が各3個、グリーンランド産2個の計17個で、通常の光(紫外線照射前)で見たときに紫色・赤紫色・灰色・白色で透明から不透明のカット石と原石です。その内検査を行ったカット石のデータの一部を 表1 に示します。

表1

産地 透明度 重量(ct) 比重 屈折率
ミャンマー01 紫色 半透明 5.852 2.28 1.47
ミャンマー02 灰色 不透明 6.545 2.29 1.48
ミャンマー03 赤紫色 不透明 5.975 2.28 1.48
パキスタン 薄紫色 透明 1.750 2.30 1.48
アフガニスタン 赤紫色 不透明 1.428 2.29 1.48
ロシア 白色 不透明 0.860 2.27 1.48
カナダ 白色・ピンク色 不透明 5.717 2.50 1.48
グリーンランド 紫色 不透明 6.781 2.36 1.48

※屈折率はスポット法

紫外線 照射前と照射後

通常の光の下で見られる色は様々ですが、長波紫外線照射後は赤紫~紫色に変化しました。その前後変化をミャンマー産(写真1)とカナダ産(写真2)で示します。

写真1 ミャンマー産01
(左:紫外線照射前、右:紫外線照射後)

写真2 カナダ産
(左:紫外線照射前、右:紫外線照射後)


また、照射前後の色についてThe Munsell Book Of Color方式で示したのが 表2 です。

表2

産地 照射前 照射後
ミャンマー01 10PB 4/10 2.5P 2/10
ミャンマー02 5YR 5/1 10P 3/8
ミャンマー03 7.5P 6/6 5P 3/10
パキスタン 7.5P 8/2 5P 8/4
アフガニスタン 7.5P 6/8 5P 4/10
ロシア 10Y 8/1 2.5RP 5/10
カナダ 10P 6/10 2.5RP 4/12
グリーンランド 7.5P 4/8 5P 2/8

変化後の色の濃さは照射時間の長さに比例しており、長く照射していたものほど濃く、色の戻りもゆっくりでした。また紫外線照射時にはオレンジ色の蛍光を発しますが、この蛍光色も最初はアプリコットオレンジ色で時間経過に伴いオレンジ色が濃くなっていくのが観察されました。

赤外分光(FT-IR)

FT-IRの形は、大きく3つのパターンに分かれました。

(1)4000cm-1 より低波数側に吸収がないパターン図1

図1

ミャンマー産とロシア産に見られたパターンで、4538cm-1 と5150~5205cm-1 に吸収があります。

(2)2140~2860cm-1 に透過帯があるパターン図2

図2

アフガニスタン・カナダ・グリーンランド産に見られたパターンで、2140~2860cm-1 に山があり、5137 ・ 5198cm-1 に吸収があります。アフガニスタン産の石には、4182 ・ 4251 ・ 4323cm-1 にも吸収が観察されます。

(3)4000cm-1 より高波数側に吸収がないパターン図3

図3

パキスタン産に見られ、2000~3500cm-1 の山に細かい吸収(2405 ・ 2426 ・ 2528 ・ 2548 ・ 2679 ・ 2742 ・ 2924 ・ 2992 ・ 3022 ・ 3052 ・ 3414cm-1 )があります。

可視分光

ハックマナイトの色変化は紫外線照射後、数分から数十分継続するため、紫外線照射前と後の可視分光データの測定が可能です。図4 に示す分光チャートはミャンマー産のものです。紫外線照射後に530~550nmを中心とした吸収が深くなっています。この吸収帯の深さは色の濃さを反映するため、照射後赤紫色が濃くなったことが分光的にも分かります。

図4(点線;紫外線照射前、実線;紫外線照射後)

元素分析(EDS)

ソーダライトの化学組成式はNa8Al6Si6O24Cl2で表わされ、ハックマナイトは塩素(Cl)を置換して少量の硫黄(S)を含み、この硫黄の電子状態により色が変化すると説明されています。蛍光X線元素分析装置(EDS)でサンプル石を分析し、色別(照射前)にまとめたものが表3で、どの石にも硫黄の存在が確認されます。硫黄がほとんど含まれない石と1%を超える石とがありますが、観察される色変化の大きさと硫黄の量比とは直接的には結びつかないようです。

表3

Na(wt%) Al(wt%) Si(wt%) Cl(wt%) S(wt%)
白~灰色 22-25 30 36-38 2.3-5.8 0.24-1.10
赤紫色 22-27 25-31 34-36 6.2-7.0 0.05-0.21
薄紫色 27 30 35 6.8 0.23
紫色 25 31 36 4.9-6.3 0.15-1.40

今回検査した石については、赤外分光(FT-IR)のパターンが産地により異なるということが興味深い点です。サンプル数が少ないことと地質学的な背景が不確かなため類推の域を出ませんが、FT-IRによりおおまかな産地分類が可能かもしれないことを示唆しました。その他の検査もハックマナイトの鑑別に有効であることが分かりました。
ハックマナイトの鑑別結果は、【鉱物名 天然ソーダライト】【宝石名 ハックマナイト】となります。なお、当研究所の鑑別書には備考欄に【ハックマナイトは、一般に紫外線照射により色が変化することがあります。また、変化した色は時間が経過すると元に戻ります。】と表記されます。

小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー3」

骨董品の鑑定とは、年代を見て値段をつけること。鑑別とは、本物かニセモノかを見分け時代だけをいうこと。値段をつけるといっても、「バブル景気」の時に高く買って、いま大幅に値下がりして安くなったもの。さらには「騙されて高く買った」もの。骨董品には値段があってないようなものと云ってしまえばそれまでだが、骨董品の鑑定は非常に困難がともなう。ただアンティークのなかで絵画、陶磁器、人形など一部の古美術品は一定の鑑定物差しが業界に出来ていて古物相場があるようだ。

東洋骨董品の中で翡翠の玉彫刻そして玉装身具を蒐集している年配の方々も多い。翡翠は、中国で昔から皇帝の最高の収集品となっていたので、中国各地の博物館には多くの翡翠骨董品が所蔵されている。なかでも北京及び台北の故宮博物院には、たくさんの玉彫刻が展示されていて圧巻である。中国人の「富と権力の象徴」とされてきた「玉(ぎょく)」。この翡翠は軟玉(Nephrite)と硬玉(Jadeite)とがある。軟玉は中国の崑崙山脈の麓を流れる白玉川が主産地であり、硬玉はミャンマー(ビルマ)北部が主産地で別種の鉱物である。さて翡翠を表わす玉の字は王と異なる。王様の王は正確には横三本のうち上の二本が上に片寄っている。玉の字は、玉が三つ連なっている象形で、縦の棒は三つの玉を貫いているところを示す。玉は「石の美しさを示し、五徳あるもの」であると云われてきた。五徳とは何かと云えば、仁、義、智、勇、厳の五つであって、昔の中国の人は玉を見たときにその美の中に五徳を想定したようだ。この玉彫刻には、日本でも古くから特別な収集家がおり、貴重な骨董品目となっている。(翡翠については別号に既に詳述したのでご参照ください。)

さて宝石の王様ダイヤモンドについてだが、最近購入した資産価値がある大粒ダイヤモンドには、品質評価基準4Cの詳細を記述したダイヤモンド・グレーディング・レポートが添付されているので、おおまかの現在の相場を計算できる。ただしダイヤモンドといえども、世界相場、為替相場、景気動向の影響を受けている。100年以上前の昔のダイヤモンド、アンティークジュエリーに属するものにはダイヤモンド・グレーディング・レポートはついていない。ダイヤモンドの4C検査について理論と技法を発案し開発したのは米国GIAで創立は1931年で約76年の歴史である。

ダイヤモンドの価値を決定する4Cの中で、カット・グレードは人為的にダイヤモンドの光り輝きを引き出すことができる。14世紀にダイヤモンドの粉末をオリーブ油でとき、これを研磨剤にして原石を研磨できるようになった。ダイヤモンド原石八面体の三角形の面に対し研磨したテーブルカットからローゼンツ・カットを経てローズカットなどが登場してきた。

アンティークジュエリーに使用されているダイヤモンドには、このローズカットのものが多い。したがってローズカットについての知識も不可欠だ。その後19世紀になって最高の輝きを発揮する現在のブリリアントカットに近いカットが登場してくる。

さてアンティークジュエリーで重要な要素は、その製造された当時の衣裳や歴史的背景も大事である。ジュエリーを着用するときのTPO(時・場所・場合)である。アンティークジュエリーが流行した時代や使用された場所、当時の衣裳との調和である。それらが現代とマッチするか。単なる鑑賞用、資産用なのか。実際に着用使用するかが問題となる。

ジュエリーを理解するには、先ず実物を手に取り、よく観察することだ。ところが多くのアンティークジュエリーが美術館や博物館にあって、手にとって実際に観察することが出来ない。ジュエリーの目的は、人が実際に身に付けるものとしてデザインされ、人に装われることが本来の姿である。ジュエリーは、人に着用されてこそ本当の美しさが輝く。ジュエリーは人、衣裳、時、場所、場合の関係が重要である。ヴィクトリア時代、宮廷で、夜会や円舞会などに着用されたアンティークジュエリー。当時はろうそくの明かりの下で着用されたのだ。また着用された衣裳との関係も重要だ。アンティークジュエリーの理解を助けてくれるのは肖像画である。当時ジュエリーがどのように着用されたかを示す絵画や彫刻は、当時のジュエリーについての有様を教えてくれる。
アンティークジュエリーには、その時代ごとに特色のある多彩なデザイン、スタイル、精緻な細工、宝石のカットがある。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース

今年は異常気象ともいえる暖冬ではありましたが、どのように過ごされましたか。
さて、話題の映画「ブラッド・ダイヤモンド(仮題)」(原題「BloodDiamond」(c)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.)の公開がいよいよ近づいてきました。
最初に昨年12月に既に公開されているアメリカでの反応はどうだったのかを報告します。

アメリカではこの映画のおかげでダイヤモンド業界にスポットライトがあたったため、今年のゴールデングローブ賞・アカデミー賞授賞式では「公正な経路と手段で加工された宝石だけを身につける」と公言するハリウッド女優たちが現れたのです。

有名人の言葉に興味を持った人、自分のご贔屓の女優の言葉に賛同する人、そんな人がいたことでしょう。また「芸能人の言っているくだらないこと」と思う人や、映画を通じて社会問題に眼を向けさせるということを傲慢と感じた人もいるでしょう。
きっかけはどうであっても「知る」ということはとても大切なことです。何も知らなければ、何も始まらないのです。人それぞれ違う考えを持つのは当然であり、まずは「知る」ということで、その人の周囲から更にもっと広い社会へ様々な影響を及ぼしていくと思うのです。
女優のコメントは、女優自身のイメージ向上という意味合いが強いことも否めませんが、しかしやはりハリウッド女優が一般に及ぼす影響は大きく、有名人だからこそ出来る社会貢献であると思います。

この映画「ブラッド・ダイヤモンド」が公開され、いわゆる先進国の人たちが置き去りにしているアフリカ問題の中のひとつを広く世に知らしめることとなりました。(内乱、市民戦争、民兵問題、少年兵士、洗脳問題、武器輸出と政府の癒着などそれをサポートしているのが先進国のまたは私企業、そして消費者の欲望であるという構図) 遠く離れたアフリカで起きている、私たちが知らなかった事実なのです。
宝飾業界に身をおいている私たちは、正しく現状を理解していなければなりません

前号でお伝えしましたように、日本での商取引においてブラッド・ダイヤモンドが混在する可能性は殆どなく、我々が扱うものは自信を持ってお客様にお勧めできるものです。その自信を裏付けるためにも、前号をお読みになった方々からの質問に関するQ&Aを付記したいと思います。

<Q&A>
Q1 0.2%のコンフリクトダイヤはどこで出回っている可能性がありますか?(手に入れる方法)
A1 キンバリー・プロセスを遵守していない国では入手可能かもしれませんが、現在日本において流通している可能性はほとんど無く、入手は困難です。正規のルートで日本に輸入されたものをお買い求めください。
Q2 原石が輸出される際の「不正に開封できない容器」とはどのようなものですか。(基準はありますか)
A2 容器に対して基準自体は無く、密封されていればOKです。また政府から封印の発行を受けて密封しているため、「不正に開封できない」というのはその封印のことを指していると思われます。
Q3 キンバリー・プロセス、システム・オブ・ワランティといった対応策は現状どれぐらい浸透しているのですか。
A3 今現在、DTCとサイトホルダーを中心に原石のすべての輸出にはすべての輸入者を確定し、キンバリー・プロセス証明書を発行して、必ずダイヤモンド原石と一緒に動きます。或いは私どもが、海外(イスラエル、ベルギーあるいは、香港)で研磨済ダイヤモンドの買付けを行ない日本に輸入する場合には、売り手が発行するすべてのインボイスに、買い手に対して自主規制として出所を保証するシステム・オブ・ワランティという宣誓文がインボイスに記載してあります。
当社もシステム・オブ・ワランティを遵守し、お買い上げいただきました際には当社発行の納品書にはすべてのダイヤモンドに対して、自主規制として以下の宣誓文をインボイスに記載してあります。
“The diamonds herein invoiced have been purchased from legitimate sources not involved in funding conflict and in compliance with United Nations resolutions. The seller hereby guarantees that these diamonds are conflict flee, based on personal knowledge end / or written guarantees provided by the supplier of these diamonds.”
当社同様にダイヤモンドの輸入業者が現在日本に輸入しているダイヤモンドは、キンバリー・プロセス、そして、システム・オブ・ワランティの遵守という2つの施策により、ほぼ全てのものが紛争ダイヤモンドとは無関係であると言えると思います。
Q4 ブラッド・ダイヤモンドとブラックダイヤモンドは同じなのですか?
A4 いいえ、まったくの別物です。一般的にブラックダイヤモンドはトリート加工や熱処理を施した黒いダイヤです。海外ブランドでも使用されており、日本でも人気があります。
一方「ブラッド・ダイヤモンド」はダイヤモンドの種類ではなく、流通上の状態を表わしております。

その他、わからないことやもっと詳しく知りたいことなどがございましたら、お気軽に弊社までメール:sales@ibctokyo.com にてご連絡ください。
この映画をきっかけに「紛争ダイヤモンド(ブラッド・ダイヤモンド)」に関する知識を深め、お客様が納得できる説明をすることにより、今以上の信頼を勝ち得ることが出来ると思います。

もちろん当社すべての取扱商品に関しましてはキンバリー・プロセス、そして、システム・オブ・ワランティを遵守し、お客様にご満足いただけるような商品を求めて、買い付けしていると自負しております。


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エメラルドの産地と特徴 -その2-

2. 北米

カナダ・アメリカ

商業的価値がない。

3. ヨーロッパ

オーストリア

ハバヘタール渓谷の鉱山は1797年に最初の記録がありますが、その存在はたぶんローマ時代から知られていたと言われています。4個の横坑を持つ現在の鉱山は1860年にウィーンの宝石職人サミュエル ゴールドシュミットによって始められました。鉱山はその後所有者がたびたび代わり断続的に採掘されていましたが、1949年にはほぼ廃坑となりました。
産出されたエメラルドは、一般に低い品質で、カットに適した結晶は殆んど希であったようです。

4. アフリカ

エジプト

◆最も古い鉱山で歴史的価値はあるが、現在商業的価値はない

◆スーダンとの国境付近で数千年前に採掘されていた

ザンビア(コンゴとの国境)

◆鉱山:最大の鉱山はKagem Mining Limited

◆採掘:60年代 最も重要な産出国の一つであった。以前は露天掘りであったが、現在は地下を掘っている。

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:角型二相、イルメナイト

写真1・角型二相内包物

角型二相内包物

写真2・イルメナイト内包物

赤褐色のイルメナイト内包物


ジンバブエ(サンダワナ エメラルド)
写真3・トレモライト内包物

密集した分布を見せるトレモライト内包物

◆品質:濃いめの深い緑色で高品質

◆母岩:輝石を多く含んだ片岩(典型的な雲母片岩ではない)

◆内包物:トレモライト、カミングトナイト

マダガスカル
写真4・マダガスカル産エメラルド

マダガスカル産
エメラルド

◆母岩:輝石を含んだ典型的な雲母片岩

◆産出量:非常に少ない

◆内包物:アクチノーライト、雲母、トルマリン

ナイジェリア
写真5・ナイジェリア産エメラルド原石

ナイジェリア産
エメラルド原石

写真6・三相内包物

チューブ状の三相内包物

◆母岩:アルカリ加工岩中のグライゼン(英雲母)群集

◆内包物:蛍石、雲母、モナズ石、曹長石、イルメナイト、グロースストラクチャー、コロンビアに似た3相内包物

◆吸収スペクトル:鉄関連の吸収バンドはクロム/バナジューム関連の吸収バンドよりも強い。

◆屈折率:低め(通常光1.566~1.574、異常光1.560~1.569)

◆商業的価値がある。

タンザニア

1969年にアルシャの南西約96kmにあるマジモト村近くでエメラルドが発見されており、かつては素晴らしい草緑色のエメラルドを産出していたようです。最近では、低品質のものがマンゴーラで発見されており、現在の産出量は不明。

南アフリカ

1927年にトランスバールの北東部にあるグラベロッテ地区からエメラルドが発見されています。
1929年当時、複数の鉱山会社が操業を行っていたらしいが殆どは長続きしなかったようです。最近も宝石質の結晶が産出されているようですが産出量は不明。

5. アジア

ロシア(ウラル)
写真7・ロシア産エメラルド

ロシア産エメラルド

◆鉱山:マリシェボ鉱山

◆採掘:露天掘り

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:黒雲母、アクチノーライト

◆吸収スペクトル:クロム/バナジウム関連の吸収バンド。鉄の吸収バンドは700~900nm付近に見られる。370と426nmを伴うことがある。

◆屈折率:通常光1.581~1.591、異常光1.575~1.584

◆90%は低品質

写真8・アクチノーライト内包物

節をもった茎状のアクチノーライト内包物

写真9・黒雲母内包物

魚の鱗のような外観の黒雲母内包物


パキスタン(スワット渓谷)

鉱山はペンシャワール近郊に2つあります(グジャキリとミンゴラ)。

写真10・パイライト内包物

金属光沢を放つパイライト内包物

◆品質:サンタ・テレジーニャに似た黒っぽいエメラルド

◆母岩:滑石が豊富な白色の炭酸塩岩

◆内包物:方解石、ドロマイト、パイライト、ルチル、ヘマタイト、クロマイト、フックサイト、クローライト、滑石、角閃石、トルマリン、フェナカイトなど

◆吸収スペクトル:クロムバンド以外にバナジウムと鉄の吸収も見られる

◆屈折率:高い(通常光1.584~1.600、異常光1.578~1.593)

アフガニスタン

エメラルドは、標高5000メートルの険しい山々が連なるアフガニスタンのパンジシール渓谷に存在します。400余りの石脈があり、世界でも最高級のエメラルドを産出しています。パンチシールは約30年前に地元の農民によって偶然発見され、以降政府軍の開発で、現在200以上の鉱山が稼動しています。

写真11・アフガニスタン産エメラルド

アフガニスタン産
エメラルド

◆母岩:白雲母片岩

◆内包物:炭酸塩鉱物、パイライト、石英、非常に顕著に発達した成長線

◆吸収スペクトル:クロムバンドが優勢で鉄に関連するバンドが様々な強度で見られる

◆屈折率:高い(通常光1.585、異常光1.580)

インド

1943年、第二次世界大戦中の戦略物資としてベリリウム鉱および雲母を探索した際にラジャスタンのアラワリ山脈でエメラルドが発見されています。商業的価値は無かったようです。

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:コンマ状二相内包物、黒雲母

◆吸収スペクトル:クロムバンド以外に鉄の吸収も見られる。

◆屈折率:高い(通常光1.593、異常光1.585)

中国

商業的価値がない。

6. オーストラリア

1890年にニューサウス・ウェールズ州エンマビルで最初の発見が報告されています。その後、幾つかの鉱床が発見されていますが、商業的価値は無かったようです。


(終わり)

【GYOHO 質屋業報 2006年10月号 より転載】