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ワールドニュース(2008.01)

あけましておめでとうございます。
昨年は、ご愛読ありがとうございました。今年もワールドニュースを宜しくお願いいたします。今年は、世界のダイヤモンドマーケットの買付け方法、買付け日記そして現地の観光情報も掲載したいと思います。
新春号にちなみましてダイヤモンドマーケットのお正月の過ごし方から…

イスラエルNewYear

ユダヤ教のお正月は、ユダヤ暦で第七の月の1日(旧約聖書ではこの地上ではじめての人であるアダムが創られた日がティシュリ月の1日)この日がユダヤの新年(ちなみに今は5767年)となります。今のカレンダーで見ますと、その時は収穫が済んだ秋の九月の下旬か十月の上旬でした。
旧約聖書に「主はモーセにおおせになった。イスラエルの人々に告げなさい。第七の月の1日は安息の日として守り、角笛を吹き鳴らして記念し、聖なる集会の日としなさい。あなたたちはいかなる仕事をしてはならない。燃やして主にささげるささげ物をたずさえなさい。」と書いてあります。この新年の日の食卓ではどこの家庭でも石榴が出され、スライスしたリンゴに蜂蜜をつけて食べます。
ヘブライ語では新年をロシュ・ハシャナ(ロシュ=頭、ハシャナ=その年)と言います。新年といえば1年に1度だけですが、ユダヤ暦では、このロシュ・ハシャナは1年の間になんと4回もやって来ます。その4つの新年には、「木々の新年」、「家畜などの動物の新年」、「王様たちの新年」、そして第七の月の1日からはじまる「人の新年」があります。この4つの新年では「ディン」と呼ばれる審判が行われ、新しくやって来る年のそれぞれの運命が決められます。そして、この「人の新年」には、天国では「命の本」「死の本」そして「どちらでもない本」の3冊の本が開かれます。その年の行いによって、誰がどの本の中に名前を記されるのか決まるので、ユダヤの人は新しい年に向かって家族や友人に一年の反省を告げ、一からの再スタートとなるのです。

M-レポート

Rounds 0.005 to 0.15 cts, D-J / pique, slow、 0.005 to 0.15 cts, D-J/VS+, mediocre movement、 1/5, across the board, slow、1/4-3/8, white / pique, mediocre demand、 1/4-3/4, D-J / VS+, good makes, good demand、3/4, white / pique, including goods for treatment, selling、 1-5 cts, white / pique, including goods for treatment, moving、 1-10 (mainly 2.50+) cts, D-M / SI1+, good makes, heavy demand against short supply

インドNewYear

インドのお正月は、国民の8割がヒンドゥー教ですから、お正月などの祝祭日は「ビクラマディティヤ」という太陰太陽暦の「ヒンドゥー暦」に従い、「Diwali=ディワリ」ということになりそうです。ディワリは元々、ヒンドゥー教の神様ヴィシュヌの化身である英雄ラーマが長年の追放から無事帰還したことを祝ったのが始まりで、女神ラクシュミ(富と幸運の神でヴィシュヌの妻)を迎えるお祭りです。ディワリはカーティック(西洋暦では10月or11月)と呼ばれる、満月から2週間後の「新月」の日に行われます。多くの会社や学校がお休みとなり、街にはきれいな飾りつけがされて、賑やかになります。サンスクリット語で「ランプの列」を意味するお祭りですから、家々は「ディヤ」という小さな素焼きの皿のランプ(ディヤは、素焼きの皿の中にギー(ミルクから作った油)またはマスタード・オイルを入れ、コットンで芯を作り、灯をともして使います。ろうそくの灯は風ですぐ消えてしまいますが、ディヤについた灯はなかなか消えない。)やろうそくの灯、またはイルミネーションで飾られ、建物はライトアップされて町中が光で華やかになります。暗闇がないようにするのです。
爆竹や花火なども上げられて、活気溢れるムードになります。そして迎えたディワリの日。新しい服で身を包み、”HAPPY DIWALI !!” とお互いに声をかけあいます。
女神ラクシュミはこの夜の12時に家々に訪れ、人々に金運を授けると言われているので、家の窓を少しだけ開けておきます。ディワリの準備は、家々では家中の壁の塗り替え(ホワイト・ウォッシュ)をしたり、大掃除をしたりするそうです。新しい服を用意し、お歳暮やお菓子を準備したりもします。お歳暮と言っても、お世話になった人だけではなく、近所の人にも配りますし、毎年いろいろとアイディアが必要で結構大変そうです。シルバーやゴールド、陶磁器などをプレゼントすることもあるそうです。また年賀状にあたる「ディワリ・カード」も配ります。そしてお祈りやお寺参りをし、親戚や友人の家を訪ねて、新年を祝います。

M-レポート

The Indian diamond market is closed for the most part for the Diwali and New Year’s holidays. Our next report from this center will be on November 29. We wish all our Indian readers a happy Diwali and a healthy New Year.

香港NewYear

香港はお正月が2度あります。一つは西暦の1月1日、もう一つは旧暦(農暦)の新年「初一」(1月1日)になります。西暦のお正月は欧米の儀式に習ったものであり、あまり重視されないのに対して旧暦のお正月は中国人にとって1年で一番大事な行事です。
日本の風習とおなじように、大晦日までに大掃除をして、お正月を迎えるお飾りや食事(年ゴウというこちらのお餅(年年高、毎年よくなるの意味がある)や大根餅、揚げ餃子、瓜子、糖果など)の用意で街はあわただしくなります。日本以上に家族で過ごすことが大切にされています。こちらのお飾りは赤と金の華やかなもの。毎年お正月2日目には花火大会もおこなわれます。お正月の前になると、街中でお正月用のお花を抱えている人を見かけるようになります。花市も開かれ、水仙(運が良くなる)、グラジオラス(正月に開くと縁起がいい)、金柑・牡丹(お金が儲かる)、桃の花(異性運の向上)に猫やなぎなど縁起がいいとされるお花がズラリとならびます。街中いたるところでみかける金柑。香港のお正月の一番ポピュラーな挨拶は「恭喜發財(クンフェイファッチョイ)!」。これも直訳すると「儲かりますように」ってこと。なかなかストレートな人たちです・・・(ちなみに中国大陸では旧正月にも「新年快楽」「新年好」という一般的な「あけましておめでとう」という挨拶を耳にすることも多い)。香港では元日には掃除をしない、髪を洗わないなどとも言われているそうで、理由は「お金や福を流して(掃きだして)しまうから」だとか。

M-レポート

0.005 to 0.15 cts, white / SI2 to pique, mediocre demand、0.005 to 0.15 cts, D-J / SI1+, good makes, selling、1/5, across the board, slow、1/4-3/4, white / pique, good demand、1/4-3/4, D-J / VS+, good makes, selling、1-5 cts, white / pique, good demand、in spite of the relatively show US market、1-10 (mainly 3.00+cts), D to cape / SI+, good makes, heavy demand, with noted pressure on prices


アイスブルーダイヤモンド企画・開発プロデューサーが本当にお客様にあった商品企画をご提案するために設立したダイヤモンド専門会社
株式会社IBCTOKYO 担当:木村 e-mail: sales@ibctokyo.com
東京都千代田区麹町 TEL : 03-3556-1481 FAX : 03-3556-1482 
www.ibctokyo.com

平成19年宝石学会「ベリリウムを含むインクルージョンを持つブルーサファイアについて」

2006年宝石学会(日本)ではベリリウム拡散加熱処理が行われたブルーサファイアについて発表しました(詳細はGEMMY 133号をご覧ください)。ベリリウム拡散加熱処理が行われたブルーサファイアに対してLA-ICP-MS分析を行うと、同元素が検出されるのはもちろんのことですが、そういった処理が行われていない天然ブルーサファイアでも元々ベリリウムを含有しているものがある、とGIAなどの最近の研究で報告されています。
今回は、そういった未処理ブルーサファイアでありながらLA-ICP-MS分析を行うとベリリウムが検出された例を2つ紹介します。

ベリリウムを含むインクルージョンを持つブルーサファイア

写真1-1 観察に用いたブルーサファイア

写真1-1 観察に用いたブルーサファイア

今回、調査に用いたブルーサファイアは、ラウンドミックスカットで重量0.321ct、サイズ4.13-4.17x2.60mmのタイ(カンチャナブリ)産ブルーサファイアです(写真1-1)。
まず、拡大検査にて、このブルーサファイアのガードル付近には 写真1-2 で示したような結晶質と思われるインクルージョンが観察されました。左の写真はガードル側から、右の写真はパビリオン側から撮影したものです。

写真1-2 今回観察したブルーサファイアに含まれたインクルージョン

写真1-2 今回観察したブルーサファイアに含まれたインクルージョン

このインクルージョンが何であるか調べるために、インクルージョン断面が出るように切断を行い、電子顕微鏡(SEM:HITACHI S3000H, EDX:HORIBA )を用いて検査をしました(図1-1図1-2表1-1)。その結果、このインクルージョンは、トリウム(Th)、セリウム(Ce)、ランタン(La)を含む燐酸塩鉱物であるモナザイト(monazite)であることが判明しました。

図1-1 インクルージョンの後方散乱電子像(BEI)と測定箇所

図1-1 インクルージョンの後方散乱電子像
(BEI)と測定箇所

図1-2 SEM-EDXの測定チャートの一例

図1-2 SEM-EDXの測定チャートの一例
 


表1-1 詳細な分析結果(SPOTの番号は図に対応)

  SPOT 1 SPOT 2 SPOT 3 SPOT 4 SPOT 5
元素 質量濃度
13 Al 1.11 0.33 0.66 0.69 0.36
14 Si 0.66 0.55 1.77 1.93 2.16
15 P 13.84 11.55 14.00 11.63 12.12
20 Ca 2.62 2.65 2.35 1.86 2.18
57 La 5.98 4.97 3.46 3.28 3.23
58 Ce 17.15 14.64 15.29 14.35 13.81
59 Pr 2.66 2.30 2.64 2.46 2.62
60 Nd 5.91 5.69 6.19 6.09 6.10
90 Th 26.25 26.61 33.51 33.49 37.41
8 O 29.68 25.28 30.93 27.66 28.87
Total 105.87 94.58 110.79 103.44 108.88
原子数(O=24で規格化)
13 Al 0.53 0.19 0.30 0.36 0.18
14 Si 0.30 0.30 0.78 0.95 1.02
15 P 5.78 5.67 5.61 5.22 5.21
20 Ca 0.85 1.00 0.73 0.64 0.73
57 La 0.56 0.54 0.31 0.33 0.31
58 Ce 1.58 1.59 1.36 1.42 1.31
59 Pr 0.24 0.25 0.23 0.24 0.25
60 Nd 0.53 0.60 0.53 0.59 0.56
90 Th 1.46 1.74 1.79 2.00 2.15
8 O 24.00 24.00 24.00 24.00 24.00

更に、このモナザイト(monazite)インクルージョンに対してLA-ICP-MSによる微量元素の分析を行った結果、ベリリウム(Be)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)が検出されました(図1-3)。

図1-3 LA-ICP-MSによる測定チャート

図1-3 LA-ICP-MSによる測定チャート
(左:ベリリウム(Be)、右上:ニオブ(Nb)、右下:タンタル(Ta))

定量測定には、このモナザイト(monazite)インクルージョンの厚みは薄すぎ、レーザーを照射するとこのインクルージョンを5秒ほどで貫通してしまうこと(照射時間は15秒)、内標準元素であるアルミニウム(Al)の濃度が均一でないという理由から厳密な定量とは言えませんが、4箇所ほど分析した結果、ベリリウムは0.80ppm程度、またニオブ(Nb)、タンタル(Ta)はそれぞれ1.2ppm、0.90ppm程度検出されました。また、このモナザイトインクルージョンの周辺のコランダム層を分析した結果、ベリリウムは検出されず、このモナザイトインクルージョンからのベリリウムの拡散は確認されませんでした。

ベリリウムを微量元素として含むサファイア

写真2-1 ベリリウムが検出されたブルーサファイア原石

写真2-1 ベリリウムが検出された
ブルーサファイア原石

次に、ベリリウムをインクルージョン中に含むのではなく、元々の微量元素としてベリリウムを含有するブルーサファイアについて紹介します。
今回検査したのは重量が0.697ct、サイズが5.30×4.42×3.04mmのマダガスカル産のブルーサファイアで、未処理の原石です(写真2-1)。
このブルーサファイアを紫外可視分光光度計(UV-VIS)、フーリエ変換型赤外分光装置(FT-IR)、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDS)で分析した結果、特に異常な特徴は有りませんでした(図2-1表2-1)。また、インクルージョン等にもめだった特徴はなく、一般的なサファイアのように見えました。

図2-1 各計測機器による計測チャート

図2-1 各計測機器による計測チャート
(左:UV-VISによる測定チャート、中:FT-IRによる測定チャート、右:EDSによる測定チャート)

表2-1 EDSによる測定データ

化学式 質量% モル%
Al2O3 99.8669 99.8722
TiO 0.0446 0.0712
Cr2O3 0.0039 0.0026
Fe2O3 0.0847 0.0541
Ga2O3 n.d. n.d.
PbO n.d. n.d.

このブルーサファイアにLA-ICP-MSによる微量元素の分析を数箇所行った結果、ほとんどの箇所でベリリウム(Be)の存在を確認しました。その濃度は検出限界以下程度から最高0.48ppmまでであり、先の報告でモナザイトインクルージョンに検出されたニオブ(Nb)とタンタル(Ta)は全く検出されませんでした(図2-2)。

図2-2 LA-ICP-MS分析

図2-2 LA-ICP-MS分析
(左:レーザーで穴を開けた痕、右:ベリリウムが検出されているチャート)

以上の調査結果から、天然で未処理のコランダム原石にもベリリウムが存在し、ベリリウム拡散加熱処理が行われたサファイアと同様にベリリウムが検出されることがあることがわかりました。

結論

今回の研究結果より、ベリリウム(Be)拡散加熱処理が行われていないサファイアでも、LA-ICP-MS等による微量元素分析を行った際、ベリリウムが検出されるものがあり、GIAが発表しているとおり自然界でベリリウムを取り込んだサファイアが存在することを確認しました。更に、このベリリウムが検出されるサファイアには、インクルージョンにベリリウムを含む場合と元々ベリリウムを微量元素として格子中に含む場合、の2パターンが存在することもわかりました。LA-ICP-MS等の微量元素を測定する手法は、点分析(狙った微小な1点を分析する方法)に過ぎないため、「できるだけ複数の箇所を測定する」「インクルージョン及びインクルージョン付近は避ける」、「定量精度を上げる」、「天然でベリリウムがどこまで含まれるかの詳細なサンプリングを進める」等が必要であると思われます。
今回の実験では、京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地質学鉱物学教室鉱物学研究室の北村雅夫教授、下林典正助教授、三宅亮助教授の協力により、走査型電子顕微鏡「S-3000H(HITACHI)」とエネルギー分散型X線検出装置「EMAX-7000(HORIBA)」を使用、および研究上重要な助言をいただきました。 また、実験装置使用に関しては、同研究室の大井修吾氏に手伝っていただきました。また、サンプル石の研磨には同技術職員の堤久雄氏に協力していただきました。ご協力下さいました皆様に感謝申し上げます。

小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー7」

アンティークジュエリー・Antique Jewellery 7

アンティークジュエリー。
100年、200年、それ以上の年月を経て、今なお鑑賞する人々を魅了し、感動を与え、製作者の美の心とワザの素晴らしさを偲ばせるジュエリー作品。
当時の貴婦人たちが愛し着用したジュエリーが、いま現在のわたくしたちの身近な暮らしに夢を与えてくれます。
子育てをようやく完了し「ほっと」する頃、ちょっと贅沢なハイクラスな生活、欧米の国際水準の生活文化を身近にするために、アンティークジュエリーは、現在のわれわれ日本人に豊かな人生への希望を持たせてくれます。
アンティークジュエリーは、一つひとつ、当時の職人の丁寧な手仕事で作られ、今日では失われた独特な精緻な技術が集約されています。
今日の自動工作機械で大量生産される、心の通わない画一的なデザインのモダーン・ジュエリーとは明らかにひと味もふた味も違います。
ジュエリーは、人類の創世記から存在し、古代から現代までえんえんと続いていて、昔は一つの大きな文化を構成していました。宝石や貴金属を持つことは一部の王族・貴族に限られ、それを加工できる職人も限られていました。王族、貴族、マハラジャが手にしたダイヤモンド、カラー・ストーンが、ヨーロッパを中心とした美の文化の洗礼を受けて、花開いたのがアンティークジュエリーでした。
今も残るその絢爛たるアンティークジュエリーは、芸術品であり、わたくしたち現代の人々への過去からの尊い遺産でもあります。

ところで、わたくしたちの身近なアンティークジュエリーの歴史が始まったのは、18世紀後半、英国のジョージアンの時代からといわれています。その後、ジュエリーの黄金時代とも云われる華やかなヴィクトリアン、端正なエドワーディアン、曲線の美しいアール・ヌーヴォー、直線的なアール・デコへと流行と様式は移り変わってきました。
アンティークジュエリーの価値は、宝石の大きさや貴金属素材の希少性だけではありません。細工の精緻さやデザインのよさで決まります。現代の価値観で測ることは不可能でしょう。
少しラグジュアリーな古き良き時代の宝石・貴金属ジュエリーを身近に経験すること、これも現代のわたくしたちの人生を楽しむ一方法であります。
アンティークジュエリー、本当に優れたものを、時代を超えて、あなたの身近にしてはいかがでしょう。
近年アンティークの世界では、ジュエリーばかりでなく、陶磁器、絵画、家具、衣裳なども同時にたしなむ風潮があり、この種類のショップが増えています。レプリカやリプロのものも含めてブームとなっています。ホテルや一流レストランだけでなく、一般家庭でも、おしゃれな洋風なおもてなしをするようになり、アンティーク調のジュエリーや衣裳、テーブル・ウエアが流行しています。

ここでアンティークジュエリーの歴史で、最先端のジュエリーを身に着飾った貴婦人たち、その時代の宝飾・服飾の最先端を飾った代表的な貴婦人たちを挙げてみよう。
彼女たちのいまに残る肖像画と遺品で当時流行のジュエリーを垣間見ることができる。
いまも歴史書や、映画・テレビのドラマで話題になるアンティークを飾る貴婦人たちです。

マリア・テレジア(1717~1780)
 オーストリアの母として国民に慕われたマリー・アントワネットの母
ポンパドール侯爵夫人(1721~1764)
 美貌と才知あふれたルイXV世の妾妃
エカテリーナII世(1729~1796)
 世界に誇る絵画やアンティークを愛したロシアの女王
マリー・アントワネット(1755~1793)
 フランス革命に散った薄幸の王妃 首飾り事件は有名
ヴィクトリア女王(1819~1901)
 アンティーク史上燦然たるヴィクトリア時代を築いた才覚あふれる女王(前号を参照)
ユージェニー皇后(1826~1920)
 ヨーロッパの社交界に名を成したナポレオンIII世の妃

彼女らを通して、アンティークジュエリーの歴史を垣間見ることができます。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース(2007.11)

イスラエルNews

9月のイスラエルの研磨済みダイヤモンドの輸出量は6億4556万ドル
9月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、6億4556万ドルになりました。平均値パーcts1973.94ドルで数量(cts)合計32万7041cts。2007年1月からの9カ月間をみると昨年の同期と比べて8.2%増加し53億3900ドルを超えました。数量ベースでも307万7041ctsの2.0%増加しました。9月のイスラエルの研磨済みダイヤモンドの大部分は香港のジェリーショー向けの2億7465万ドル、アメリカ合衆国向け1億9616万ドル、スイス向け4290万ドル。イスラエルのダイヤモンド原石の輸入は、金額ベースで3億5766万ドル、数量ベースで108万5776cts。平均値パーctsは329.41ドルです。

M-レポート

0.005 to 0.15 cts, D-J / pique, slow、0.005 to 0.15 cts, D-J / VS+, mediocre movement、 1/5, across the board, slow、1/4-3/8, white / pique, slightly slowing、1/4-3/4, D-J / VS+, good makes, good demand、3/4, white / pique, including goods for treatment, selling、1-5 cts, white / pique, including goods for treatment, selling、1-10 (mainly 2.50+) cts, D-M / SI1+, good makes, heavy demand against a shortage of supply

アメリカNews

8月の米国の研磨済みダイヤモンドの輸入量は前年の数量ベースで2.32%減少し金額ベースで10.3%増加
米国国勢調査局によって発表された2007年8月の研磨済みダイヤモンドの輸入量は、数量ベース142万3295(cts)で前年より2.32%減少しました。金額ベースでは、13億2400万ドルと10.3%上昇。これは、前年同月比の輸入の平均パーctsを930.42ドル12.92%も上昇しました。内訳は、イスラエルが平均パーctsあたり2507.88ドルで約19.18%を占め、インドが平均パーcts390.27ドルで約27.75%、ベルギーが同じく平均パーctsあたり1736.77ドルで約10%を占めております。8月の研磨済みダイヤモンドの輸出量も金額ベースで4億6138ドルです。数量(ct)ベースでも109万940ctsに達しました。研磨済みダイヤモンドの輸出の平均値パーctsは422.92ドルでした。

M-レポート

0.005-0.15 cts, D-J / SI+, moving well、1/5, across the board, slow pick up、1/4-1/3, white / VS+, good demand、3/8-1/2, D-H / VS+, selling well、3/4, D-H / VS+, good makes, demand up、1.00 ct, D-H / VS+, slowing、1.50 cts, D-H / VS+, moving、2.00-3.00 cts, across the board, certified, moving well、3.00+ cts, D-H / VS+, certified, top makes, strong demand

香港News

2007年10月8日、サザビーズホンコン(Magnificent Jewels)のオークションで史上最高落札額
香港で8日、世界的に希少な6.04カラットのブルーダイヤモンドが競売大手サザビーズのオークションにかけられ、798万ドル(約9億3400万円)で落札されました。1カラット当たり約132万ドル(約1億5500万円)で、サザビーズによると、宝石としては過去最高という。1カラット当たりの落札額としては史上最高だったそうです。ブルーダイヤモンドを落札したのは、希少宝石を専門に取り扱うロンドンの宝石商です。これまで1カラット当たりの最高価格だったのは、「ハンコック・レッド」と呼ばれる赤いダイヤモンドで、20年前に1カラット当たり92万6000ドルの値をつけていました。

M-レポート

0.005 to 0.15 cts, white / SI2 to pique, mediocre demand、0.005 to 0.15 cts, D-J / SI1+, good makes, selling、1/5, across the board, slow、1/4-3/4, white / pique, good demand、1/4-3/4, D-J / VS+, good makes, selling、1-5 cts, white / pique, good demand, in spite of the relatively show US market、1-10 (mainly 3.00+cts), D to cape / SI+, good makes, heavy demand, with noted pressure on prices

インドNews

9月のインドの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より12.8%アップ
9月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで昨年の同月期と比べ、12.8%アップの12億1581万ドルに達しました。数量(ct)ベースでは357万cts。9月のダイヤモンド原石の輸入は、金額ベースで6%減少して7億3527万ドルでした。同じく研磨済みダイヤモンドの輸入は3億4048万ドル、数量(ct)ベースでは90万1000cts。で、前年同期比90%の大幅アップです。ダイヤモンドの原石輸出は、4055万ドルで15%減少しました。
インドの研磨済みダイヤモンドの輸出は、2007年1月から2007年9月までで金額ベースで96億7000ドルの15%成長しました。4月から9月までの研磨済みダイヤモンドの輸入は25億3000万ドル、110%アップに達しました。同期のダイヤモンド原石の輸出は、金額ベースで3億7197万ドルの12%の増加でした。

M-レポート

0.005 to 0.15 cts, across the board, good demand、1/5, across the board, slow、1/4-3/8, white / pique, good demand、1/4-3/4, D-J /SI+, good makes, good demand, mainly from the local market、1/2-3/4, white / pique, including goods for treatment, in demand、1-5 cts, white / SI to pique, good demand、1.00-1.25 cts, G-H / IF-VVS2, good makes, selling、2-10 (mainly 3.00+) cts, D to J / SI1+, good makes, strong demand


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第30回国際宝石学会報告

「第30回国際宝石学会報告 30th INTERNATIONAL GEMMOLOGICAL CONFERENCE」

マトリョーシカ

第30回国際宝石学会が2007年7月15日から19日までの5日間 モスクワ(ロシア連邦)にあるロシア科学アカデミー(RAS)に於いて開催されました。
砂川教授、バリツキー博士、G.ボシャート博士、K.シュメッツァー博士、J.コイブラ氏などのような世界的に有名な宝石学者が演壇を飾り、24カ国以上からの代表が参加した壮大なイベントでした。始めにRAS副総裁であるN.P.ラベロフ博士が第30回IGCの実行委員長として開会の挨拶を行い、続いて宝石学の進歩に偉大な影響を与えてくれた故人の紹介と哀悼の意がコイブラ氏から述べられ、4日間の学会講演がスタートしました。
世界の様々な国からの代表は、宝石学の多くの側面から特に鉱物、宝石の加工処理、有機物、合成、採掘、および地質学的な研究を含む50以上の研究発表を行いました。それらにはダイヤモンドの合成や処理に関する研究、コランダムやエメラルドなどの宝石の特性に関する研究、シベリアやスリランカの宝石鉱床のアップデート、ピンク系ダイヤモンドの色因に関する研究、ベリリウムを含有する天然サファイアの研究、カット形状により変化する外観を見るシミュレーションソフトの開発などが含まれていました。

印象にのこった発表

◇未処理でベリリウムを含む天然サファイア

S.McClure氏(GIA)は、ニューヨークの市場で借り集めた500pcsのサファイア全てにLa-ICP-MSを用いてベリリウムに関する検査を行ない、自然界でベリリウムを含んだサファイアを発見しています。それらを細かく分析した結果、ベリリウムの発生箇所には特徴があり、常にクラウドと関連しており、La-ICP-MS分析ではニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などの元素と常に何らかの関係をもつことが、多くの写真を用いて説明されました。
また、タイのP.Wathanakul教授(GIT)からも同様のベリリウムを自然界で含んだブルーサファイアの研究発表がありました。世界各地のブルーサファイアをサンプルとして集め、特に玄武岩からのものについて研究を行いました。多くのサンプルからベリリウムだけでなくGIAの発表と同様にニオブ、タンタルなどのイオン半径が大きくコランダムに入り難いはずの元素も検出され、それらがどのようにコランダム結晶中に取り込まれたかという推論も述べられました。そして、天然起源か拡散処理によるベリリウムかを決定する方法としてGIAと同様、La-ICP-MSを用いて検査を行ない、ベリリウムがクラウド状の部分から検出されるか、ベリリウムは散発的に入っているか、その他のニオブ、タンタルなども一緒に検出されるか、このような検査でベリリウムが天然起源のものか拡散処理によるものかを判断してはどうかという提案がされました。

◇ダイヤモンドのカラー、クラリティー処理

N.I.Bezmen氏(ロシア科学アカデミー)は、高温高圧(最大5000バール)容器内で水素の拡散や移動を制御し、ダイヤモンド中に存在する窒素に関連する欠陥を変化させる新しい処理方法が発表されました。その処理により水素圧の存在は欠陥を部分的に変化させ、N3、H2、H3やH4タイプの黄色味を与える窒素欠陥を変化させるだけでなく、高い水素圧のためダイヤモンドの構造も改良出来るらしく、結果としてカラーグレードの向上や蛍光性に変化が見られ、以下の4項目の分析データを用いた説明が行われました。
1. 特に低窒素濃度ダイヤモンドにおける窒素濃度の減少(最大60%)
2. ダイヤモンドの透明度の増加(最大35%)
3. ダイヤモンドのUVルミネッセンス放出強度の減少(完全消失までの)
4. ダイヤモンド結晶における残留内部圧力の除去

◇内包物に関連した無色化現象(クロモフォア・カニバリゼーション)

J.Koivula氏(GIA)はクロモフォア・カニバリゼーションという現象に着目したサファイアの非加熱証明の手法を紹介しました。ブルーサファイア中に同生的にシルクやイルメナイトが内包物として成長する際、ブルーサファイアの色原因である鉄やチタンはそれら内包物の成長に不可欠であるため、よりそれらの元素が消費され内包物周辺では無色化現象がみられます。この現象をクロモフォア・カニバリゼーションと呼びます。当発表では、非常に多くの写真を用いてこの現象を利用したブルーサファイアの加熱・非加熱の判定方法について紹介されました。

◇トパーズへのコーティング処理

L.Kiefert氏(AGTA)は、アゾティック社、レスリー社、スワロフスキー社、3社の処理トパーズについて、コーティングの手法や色等についての発表を行いました。近年、ディフュージョンと称して販売されている多くの色のトパーズが見かけられます。それらの中の殆どは我々の検査結果ではコーティングですが、一部の物については未だコーティングなのかディフュージョンなのか正体がはっきりしないものもあります。今回の発表でも結論は出されていませんが、これらを供給している3社の処理トパーズについてまとめると以下の通りになります。

アゾティック社(Azotic)

方法 パビリオンの上の金属、酸化物、および窒化物のスパッタリング。
着色剤  ブルー:チタン、レッド:金

レスリー社(Leslie)

方法 着色材は粉の状態で、トパーズはその中に埋め込まれ、加熱する方法。レスリー社は、ディフュージョンと呼んでいます。
着色剤  ブルー:コバルト、レッド:金または鉄、オレンジ:銅または鉄

スワロフスキー社(Swarovski)

方法 着色剤で作られたプレートにパビリオン側の型を取り、その中にトパーズを埋めて加熱する方法。着色はパビリオン部だけ。スワロフスキーはこの方法を「Thermal Color Fusion(TCF)」と呼び、固いセラミック層がパビリオン上に出来上がっています。
着色剤  ブルー:クロムとコバルト、クロムと鉄、レッド:鉄、オレンジ:鉄

いずれのものも拡散である証拠は見られませんでしたが、レスリー社とスワロフスキー社のものは、耐久性に優れ、トパーズ表面とコーティング層間に化学反応が起こっていると考えられるという内容でした。

講演以外に3日目、4日目には見学会が用意されており、クレムリンの武器庫(宝物殿)やダイヤモンド庫を見学しました。
武器庫は、16世紀にクレムリン内に創設された武器の製造場兼収納庫が前身で、17世紀には福音書やイコンなどに金箔装飾をしたり、宝石類を埋め込む緻密な技術を習得した職人を数多くかかえた工房としても用いられていたそうです。18世紀初頭、ロシアの首都がサンクトペテルブルクに移ってからは、帝室所有の貴重品を収める宝物殿となり、1813年にピョートル大帝の命により博物館として発足したロシアで最古の博物館です。
武器庫に併設されたダイヤモンド庫は、ロマノフ王朝がかき集めた宝石類が集まった世界最高級の宝石保管庫で、入庫前の金属探知機での厳重なチェックや入場制限が行われています。このため、入場者はカメラ、携帯電話などを予め少し離れた地下のクロークに全て預けてから入場することになります。
中は、展示スペースのみに光が当たる、さほど広くない暗い四角い空間で、内側のケースには発掘されたままの状態の金塊やプラチナ塊が無造作に並べられ、説明に類するものが一切無いまま展示されています。メインのダイヤモンドは、入口からすぐの壁の一辺に並んでおり、無造作に10カラットくらいあると思われるダイヤモンド原石が山のように積まれていました。そして部屋の奥には数え切れない程のロマノフ王朝の至宝が並んでおり、女帝エカテリーナ2世に愛人の一人が贈った世界最大のダイヤモンドといわれている「オルロフ」や「シャー・ダイヤモンド」(弊社ホームページ“14の有名ダイヤモンド”を参照下さい)が展示されています。
カメラ撮影は禁止であったため写真をお見せ出来ないのが残念ですが、このように多くのダイヤモンドや宝物を見せられた学会参加者たちはその凄さに圧倒され、入場制限で一時間半も待たされて憤慨していたことも忘れてしまいました。
スケジュールの都合上、我々は最終日を待たずして帰国しましたが、最終日のゼネラルミーティングで次回 第31回国際宝石学会は2009年にタンザニアで開催されることが発表されたそうです。

以下に、第30回 IGCのいくつかの写真を紹介します。

会場のあるロシア科学アカデミー(RAS)ビル入口

会場のあるロシア科学アカデミー(RAS)ビル入口

学会開始直前のプレジデントホール雰囲気

学会開始直前のプレジデントホール雰囲気


ロシア産パープルダイヤの研究発表 Titkov氏

ロシア産パープルダイヤの研究発表 Titkov氏

ポスターセッション風景

ポスターセッション風景


ポスターセッション風景

ポスターセッション風景

赤の広場とスパスカヤ塔

赤の広場とスパスカヤ塔


ボロヴィツカヤ塔と右側は武具庫

ボロヴィツカヤ塔と右側は武具庫

大クレムリン宮殿

大クレムリン宮殿


平成19年宝石学会「最近分析した石についての報告」

本年6月に開催されました平成19年度の宝石学会(日本)にて当中央宝石研究所から発表致しました研究成果2件についてご紹介致します。今回は藤田所員が発表しました『最近分析した石についての報告』です。

「最近分析した石についての報告」 藤田 直也

『サンセットクォーツ』

写真1 サンセットクォーツ

写真1 サンセットクォーツ

2006年7月にブラジルのミナスジェライス州で、サンセットクォーツ(写真1)と呼ばれる新種の宝石が発見されました。色は透明なオレンジ色で、夕日のような色をしています。

屈折率や比重、偏光性は一般のクォーツの特性と一致し、蛍光性は弱く見られる程度です。拡大検査では、褐色の細い包有物(写真2)があり、水で浸液した状態で内部を観察すると、サンプル自体はほとんど無色で外観の色は褐色の包有物が影響していることがわかりました(写真3)。

写真2 褐色の細い包有物

写真2 褐色の細い包有物

写真3 浸液した状態

写真3 浸液した状態


紫外-可視分光光度計で分析したところ、545nmに弱い吸収があり、390nmを中心としたブロードな吸収のほか、253nmに吸収がみられました(グラフ1)。本体が無色のクォーツであることを考えると、これらの吸収は褐色の包有物の影響と推測されます。また、フーリエ変換型赤外分光分析装置(FT-IR)を用いて分析したところ、3635cm-1に吸収がみられ、この吸収はサンセットクォーツ特有の吸収(グラフ2)であると思われます。

グラフ1 紫外-可視分光光度計のデータ

グラフ1 紫外-可視分光光度計のデータ

グラフ2 FT-IRのデータ

グラフ2 FT-IRのデータ

写真4 表面が充填されている

写真4 表面が充填されている

蛍光X線元素分析装置での分析では、主成分の珪素のほかに微量の鉄が検出されました。これも褐色の包有物に起因するものと思われます。
褐色の細い包有物が表面にでている(写真4)箇所は充填されており、顕微ラマン分光分析装置を用いてその箇所を分析したところ、エポキシ樹脂のデータとほぼ一致しました。


『ロシアンアマゾナイト』と『チャイニーズアマゾナイト』

写真5 ロシアンアマゾナイト

写真5 ロシアンアマゾナイト

写真6 チャイニーズアマゾナイト

写真6 チャイニーズアマゾナイト



ロシアンアマゾナイトと呼ばれる石の屈折率や比重はアマゾナイトと一致し、色はやや緑色の濃い石から青緑色の石までありました(写真5)。
蛍光X線元素分析装置を用いて分析をしたところ、微量の鉛とルビジウムが検出されました。一般的なアマゾナイトと同様に鉛の量は色相が緑色に寄っている石の方がより多い傾向にあり、ロシアンアマゾナイトはやや緑色の濃いアマゾナイトであることがわかりました。
チャイニーズアマゾナイトと呼ばれている薄青色から青緑色までの石は、屈折率や比重、偏光性の反応は多結晶質のクォーツと一致します(写真6)。

写真7 青く細かい包有物

写真7 青く細かい包有物

内部を拡大検査したところ、青く細かい包有物(写真7)が多数入っており、表面のくぼみにあった結晶(写真8)を顕微ラマン分光にて分析したところ、粘土鉱物のデータとほぼ一致しました。また別のサンプルでは、先ほどの包有物とは異なる青い色素(写真9)が表面のくぼみに見られましたが、この色素からはワックスが検出されました。
次に蛍光X線元素分析装置を用いて分析したところ、90%以上の珪素と数%のアルミニウムが石から検出されました。この検出されたアルミニウムは青い包有物に起因しており、この包有物の正体も粘土鉱物だと思われます。
以上の結果より、チャイニーズアマゾナイトは多結晶質のクォーツで、包有物は粘土鉱物であると考えています。表面のくぼみに色素がついている石は、これらの石に人為的な着色処理が施されることを示唆しています。

写真8 くぼみの中の結晶

写真8 くぼみの中の結晶

写真9 くぼみに入った青い色素

写真9 くぼみに入った青い色素



『ブルーサファイアカラーのキュービックジルコニア』

写真10 キュービックジルコニア

写真10 キュービックジルコニア

最近、ブルーサファイアによく似た色相をしたキュービックジルコニアが鑑別に持ち込まれました(写真10)。
表面の光沢はサファイアよりギラギラした印象を与えますが、色はブルーサファイアによく似ており、はじめに指輪を手にした時に予想していた重量よりもはるかに重いので驚きました。キュービックジルコニアはブルーサファイアと比べて比重がとても重いため、石が大きくなればなるほど重さにその差が出てきます。
紫外-可視分光光度計で当該石を分析すると、グラフ3 のとおり一般的なブルーサファイアの色光分布(赤)とキュービックジルコニアの色光分布(黒)には似た傾向が見られますが、キュービックジルコニアには鋭いピークが数多く見られます。蛍光X線元素分析装置を用いて分析をしたところ、これはネオジムとエルビウムの影響であることがわかりました。
その他、このキュービックジルコニアは通常のよりもイットリウムが多く、ジルコニウムの量も少ないことが判明しました。

グラフ3 紫外-可視分光光度計のデータ

グラフ3 紫外-可視分光光度計のデータ

小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー6」

アンティークジュエリー・Antique Jewellery 6

ジュエリーの歴史で最も威光を放つのはヴィクトリアン時代といわれる。英国史上最長の64年に及ぶ在位を記録したヴィクトリア女王(Queen Victoria)は、この間、歴史上最高の繁栄を見せる。ジュエリーの歴史では、1837年から1901年までの長さにわたったヴィクトリア女王治下の時代に作られたジュエリーをヴィクトリアンスタイル(Victorian Style)と総称している。アンティークとは少なくとも百年以上前の美術品を指すが、ヴィクトリア女王時代の美術品を指すほどである。

ヴィクトリア女王は、今から約百年前の1901年1月22日に死去した。最盛期の大英帝国(Great Britain)を象徴し、60年余在位した女王の死は、まさに世紀の変わり目だった。

この日、英国留学中の夏目漱石は、歴史が動いたその時ロンドン市内ハイドパークを散策していて、ヴィクトリア女王の葬列を見物、時代の時計がカチリと動く様を、世界の首都で観察している。「半旗が揚げられている。町は悲しげに沈んでいる。自分は外国人だが哀悼の意を示すため黒いネクタイを着けた。朝、黒い手袋を買った店の店員は、新しい世紀は不吉に始まった、と言った」(The new century has opened rather inauspiciously)店員の何気ない言葉は、漱石に響くものがあった

ヴィクトリアン様式のジュエリーは、特定の様式があるわけではなく、英国史上もっとも繁栄した一大黄金時代に、新しく誕生した富裕市民階級という顧客を背景に、あらゆる種類のジュエリーが作られた。ヴィクトリアン時代は次の3期に大別される。

ヴィクトリアン初期(1837~1860)
若い女王がアルバート公と結婚し、幸せなカップルとして英国に君臨した20年余をさす。この時期には、いままで稀少で高価であったゴールドがカリフォルニアやオーストラリアで相次いで発見された結果、ゴールドジュエリーは隆盛を極めた。女王は蛇をモチーフにしたガーネット(カーバンクル)やトルコ石を使ったネックレス、ブレスレットやリングを愛用し、上流社会に流行した。またロスチャイルド家に招かれたヴィクトリア女王が庭で失した首飾りを鳩が見つけ、小枝にかけたエピソードから、勿忘草をくわえた鳩(Dove)のブローチを愛用し、センチメンタルジュエリーとして人気を呼んだ。この時代には英国王室御用達の宝石商も素晴らしいデザインのジュエリー製作に大活躍した。なかでも王冠(Crown Jewels)をつくった王室御用達・ガラード宝石商会は有名。一方カメオもナポレオンが愛好したことからヴィクトリア女王も好んで着用し大流行した。さらに当時の英国人の多くが海外旅行に出かけるようになり海外ジュエリーも輸入され影響を受けた。フランス、イタリー、スコットランドのジュエリーも流行した。モーニングジュエリーとしてジェットがこの時期に流行り始めたことも目立った現象だ。低品位ゴールド(9K、12K、15K)も合法化され、一般庶民にもゴールドジュエリーが身近になった。

ヴィクトリアン中期(1861~1885)
1867年に南アフリカのキンバリーでダイヤモンド鉱山が発見され、1877年には女王がインド皇帝に即位し、大英帝国が絶頂期を迎えるとインドからゴールドやパールの宝飾品が大量に輸入され、人々の宝飾品への関心を呼んだ。ところが1881年に夫のアルバート公が病死する不幸に見舞われ、女王は長期間の喪中に入った。ここにモーニングジュエリーとしてのジェットをヴィクトリア女王自身はもちろん側近も率先して着用をしたため、一時製造が間に合わないくらい需要をもたらし、大流行した。

ヴィクトリアン後期(1886~1901)
大英帝国は植民地からの莫大な富の還元によって、大衆消費社会が現出。さらに機械化が促進され、ジュエリーも大量生産されるようになった。同じような画一化されたデザイン、大量生産による低廉なジュエリーが大衆に供給されるようになった。一方この風潮に反動してアーツ・アンド・クラフト運動が起こった。これは19世紀末に起こった工業化大量生産による美術品の質的低下に反発して、中世のギルドに近い手作業による作りを重視し、素材よりもデザイン及び手作りの素晴らしさを重視したジュエリー創作運動である。

ヴィクトリア時代はジュエリー史上最も華やかな時代であり、重要な位置を占める。

「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊

ワールドニュース(2007.09)

イスラエルNews

7月のイスラエルの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より21%アップ
7月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで2006年の同月期5億3320万ドルと比べますと21%アップの6億4392万ドルに達しました。数量(ct)ベースでは2006年の同月期35万6102ctsから34万6345ctsと2.7%減少しました。7月のダイヤモンド原石の輸入も、金額ベースで2006年同月期と比べ44%増加し4億9266万ドルでした。数量(ベース)でも135万ctsと80%も増加しました。研磨済みダイヤモンドの輸入は、金額ベースで3億8096万ドルと27%増加しました。数量(ct)ベースでも31万9210ctsと12.3%の増加です。イスラエルのダイヤモンドの原石の輸出は、金額ベースでは2億6679万ドルで36.3%増加し、数量(ct)ベースで118万ctsに13.2%減少しました。イスラエルの研磨済みダイヤモンドの大部分はアメリカ合衆国向けで4億2467万ドル、2007年1月期から7月期の累計は、23億0310万ドルです。香港向けは8802万ドルになり、2007年1月期から7月期の累計は7億6297万ドルです。スイス向けは、2853万ドル、2007年1月期から7月期の累計は2億7172万ドル。ベルギー向け1319万ドル、2007年1月期から7月期の累計は3億0674万ドルです。インド向けは、1196万ドルで2007年1月期から7月期の累計は、4109万ドルです。

アメリカNews

9月に日本に2店舗オープンするティファニー社
ニューヨークに本店のあるティファニー社が、9月26日に名古屋市の栄にある松坂屋名古屋本店に新しいブティックをオープンすると発表がありました。名古屋では3番目の店舗で日本国内では54番目の店舗としてグランドオープンです。

ベルギーNews

6月のベルギーの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より18.5%アップの9.68億ドル
HRDダイヤモンドオフィスによって発表された数字によると6月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで18%増加の9億6842万ドルに達しました。数量(ct)ベースでも81万8446ctsと前年同月期73万7578ctsに比べ11%増加。5月の研磨済みダイヤモンドの輸入量は、金額ベースで9.74%増加の9億7755万ドルに達しました。数量(ct)ベースでは88万2053cts。2007年上半期のベルギー研磨済みダイヤモンドの輸出は、金額ベース52億7887万ドルで前年同期の48億4019万ドルと比べ9%増加、数量(ct)ベースでも476万4826ctsと前年同期比443万5725cts、2.79%と微増でした。ベルギーの研磨済みダイヤモンドを国別に見ますと、アメリカ合衆国向け2億5679万ドル(11万0722cts)、香港向け2億0357万ドル(13万6818cts)、イスラエル向け1億1831万ドル(5万6723cts)、スイス向け5907万ドル(7万7690cts)、UAE向け5467万ドル(6万3856cts)、インド向け4594万ドル(10万1849cts)、英国向け4392万ドル(1万8422cts)、イタリー向け3456万ドル(6万5493cts)、フランス向け2077万ドル(2万3908cts)、我が日本向けは、1834万ドル(1万6926cts)です。

インドNews

6月のインドの研磨済みダイヤモンドの輸出量は前年同月期より31%増加
6月の研磨済みダイヤモンドの輸出量は、金額ベースで昨年の同月期7億9053万ドルと比べ31%増加の10億3816万ドルに達しました。数量(ct)ベースでも322万ctsで昨年の同月期283万ctsの13.8%増加しました。
4月から6月まで(第一四半期)の研磨済みダイヤモンドの輸出は28億8662万ドルに達し、前年同期24億1006万ドルと比べ20.12%の増加です。数量(ct)ベースでも前年同期808万ctsから9.4%アップの884万ctsに達しました。6月のダイヤモンド原石の輸入も、金額ベースで9億4615万ドルでした。同じく4月から6月まで(第一四半期)のダイヤモンド原石の輸入は24億6995万ドルに達し、前年同期21億6686万ドルに比べ14%の増加です。数量(ct)ベースでも4022万ctsに達しました。ダイヤモンドの原石輸出は、1億2823万ドルで2.6%減少しました。数量(ct)ベースでも543万2000ctsと35%の減少です。
インドの6月の研磨済みダイヤモンドの輸入は、金額ベースで3億7821万ドルと135%に急増しました。4月から6月まで(第一四半期)の研磨済みダイヤモンドの輸入は9億2772万ドルに達し、前年同期比で100%の増加です。

アフリカNews

リベリアがダイヤモンドの輸出を6年ぶりに再開
今春公開された映画、レオナルド・ディカプリオ主演の「ブラッド・ダイヤモンド」でも取り上げられていた「血に染まったダイヤモンド」の異名が付いた西アフリカ・リベリアのダイヤモンド。
このダイヤモンドの密輸が内戦での武装勢力の資金源となっていたことで禁止されていた西アフリカ・リベリアからのダイヤモンドの輸出が、今年4月に国連安保理決議で解除されたのを受け、7月30日、約6年ぶりに輸出再開されました。これにより、同国の戦後復興を後押しすることが期待されています。
リベリアは1989年、「リベリア国民愛国戦線」が武装蜂起して内戦に突入して以来、愛国戦線は隣国シエラレオネの武装勢力「革命統一戦線」からダイヤを買い取って転売し、紛争資金としていました。このためリベリアから輸出されるダイヤは「紛争ダイヤ」「血に染まったダイヤモンド」などと呼ばれ、国連安保理が01年5月に輸出禁止決議を採択しました。愛国戦線を率いたチャールズ・テーラー氏は97年に大統領に就任したものの、03年8月に亡命して14年に及んだ内戦が終結しました。暫定政府による統治を経て昨年1月にリベリア新政府が発足。テーラー元大統領は昨年3月に戦争犯罪の疑いで逮捕され、国際刑事裁判所(オランダ・ハーグ)で公判が続いています。


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平成19年宝石学会(日本)のご報告

エポカルツクバ

エポカルツクバ

平成19年度の宝石学会(日本)講演会・総会が6月2日・3日の両日に、筑波のエポカルつくば(つくば国際会議場)にて開催されました。本年度は東京近郊ということもあり、参加者数も多く例年以上の盛況ぶりでした。先ず、6月2日(土)に発表のあった特別講演ならびに一般講演の内容について、講演要旨プログラムより抜粋して以下に紹介致します(○:発表者)。
尚、当中央宝石研究所からは、藤田所員と江森所員によりそれぞれ研究成果の発表がありました。発表内容については順次掲載の予定です。

一般講演 1
ミャンマーで産出する宝石の特徴

(株)モリス

  ○

森 孝仁

ジャパンジュエリービジネススクール

  

奥田 薫

一般講演 2
スリランカ産のギウダの分類と特徴について

東京宝石科学アカデミー  ウィジェセカラ チャンダナ

一般講演 3
アメシストからシトリンへの加熱変化について

聖徳大学川並記念図書館

  ○

林  政彦

コスモ宝飾

  

民谷 晴亮

早稲田大学教育学部

  

小松 睦美

 

  

堤  貞夫

早稲田大学理工学部

  

山崎 淳司

一般講演 4
最近分析した石についての報告

発表中の藤田所員

発表中の藤田所員

中央宝石研究所  藤田 直也

一般講演 5
ベリリウムを含むインクルージョンを持つブル-サファイアについて

発表中の江森所員

発表中の江森所員

中央宝石研究所  江森 健太郎

一般講演 6
回折X線分析法のターフェアイトとマスグラバイト識別への応用

全国宝石学協会

  ○

阿依 アヒマディ

  

  

小林 泰介

  

  

福田 千紘

  

  

北脇 裕士

  

  

岡野  誠

特別講演
ダイヤモンド合成の夜明け頃

講演会での岩槻雅男氏

講演会での岩槻雅男氏

筑波大学名誉教授 産総研招聘研究員  岩槻 雅男

特別講演では、筑波大学名誉教授の岩槻雅男氏より「ダイヤモンド合成の夜明け頃」というタイトルで、多くの技術者が苦悩し挑んできたダイヤモンドの合成についてお話をしていただきました。当時のダイヤモンド合成の研究開発には多くの苦難があったことや、表には出なかった話題などが紹介され、参加者全員40分の講演時間が非常に短く感じるほど惹きつけられた講演でした。

一般講演 7
合成ダイヤモンド鑑別の現状-GAAJラボにおける実例―

全国宝石学協会

  ○

北脇 裕士

 

  

阿依 アヒマディ

一般講演 8
天然ダイヤモンドのカソードルミネッセンス像について

物質・材料研究機構  神田 久生

一般講演 9
サファイア、スピネル、ガーネットをセンサに用いた温度計

東洋大学先端光応用計測研究センター

  ○

勝亦  徹

 

  

狩野 夢美

 

  

中山 千栄子

 

  

相沢 宏明

 

  

小室 修二

一般講演 10
分光反射率の比較によるパープルからバイオレット系淡水養殖真珠の考察

東京宝石科学アカデミー

  ○

渥美 郁男

真珠科学研究所

  

矢崎 純子

一般講演 11
貝殻真珠層に見られる「ダイクロイック・ミラー効果」の考察

真珠科学研究所

  ○

森 真奈美

 

  

田中 美帆

一般講演 12
「超てり」の研究1.貝殻真珠層との関連についての考察

真珠科学研究所

  ○

小松 泰子

 

  

矢崎 純子

一般講演 13
クロチョウガイ貝殻に見られる分泌色素の変遷についての考察

真珠科学研究所

  ○

吹田 眞輝江

 

  

小松  博

一般講演 14
タンパク質の変性と合成による異色真珠の作成法とその真珠の物性測定

環境生物工学研究所

  ○

原口 義信

真珠科学研究所

  

小松  博

見学会の様子:3万トンプレスについて説明する神田久生氏

見学会の様子:3万トンプレスについて
説明する神田久生氏

奨励賞を受賞した江森所員

奨励賞を受賞した江森所員

一日目の講演終了後には、国際会議場内で懇親会が開かれました。立食パーティの形式で行われ、参加者同士が交流を深めたり、様々な話題で盛り上がったりと有意義な時間を過ごすことができました。

翌6月3日(日)には、物質・材料研究機構ならびに地質標本館での見学会が行われました。前者では、3万トンもの重さをかけて合成ダイヤモンドを作る装置などを見学したり、後者では、たくさんの原石や化石などを見ることができました。共に数多くの発見や感動があり、大変充実した見学会となりました。
両日とも参加者にとって見識を深める内容であり、次回の宝石学会(日本)にも期待を寄せる次第です。

また、総会では宝石学会奨励賞の発表がありました。奨励賞は前年の研究発表を評価し、将来的に宝石学を担っていく若手に対して与えられるものです。中央宝石研究所からは、昨年の藤田所員に引き続き、本年度は江森所員がLA-ICP-MSを用いたベリリウム拡散処理ブルーサファイアの研究が評価され奨励賞を受賞しました。

ラボトピックス「ガーネット2」

ガーネット2

前回の赤色系パイラルスパイト系列のガーネットに続き、今回はウグランダイト系列とよばれるガーネットの中で、緑色のものについてご紹介します。

『ウグランダイト系列』の分類

『ウグランダイト』とは、ウバローバイト(Uvarovite)、グロッシュラー(Grossular)、アンドラダイト(Andradite)の頭文字をとったところからきています。(因みに、『パイラルスパイト』は、パイロープ(Pyrope)、アルマンディン(Almandine)、スペサルティン(Spessartine)からとっています)
このウグランダイト系列の3種のガーネットであるウバローバイト、グロッシュラー、アンドラダイトはそれぞれ端成分(一切まじりけのない状態)です(図1)。しかし、前号でご紹介した赤色系ガーネットの端成分同士とは関係が異なります。赤色系ガーネット(パイロープ、アルマンディン、スペサルティン)は、任意の割合で混ざり合い連続的な固溶体(※)となりましたが、ウグランダイト系列のガーネットで混ざるのは、グロッシュラーとアンドラダイトの相互間だけで、ウバローバイトとグロッシュラー、ウバローバイトとアンドラダイトとは一部しか混ざり合いません。なぜならば、グロッシュラーとアンドラダイトとを構成している元素、アルミニウム(Al)と鉄(Fe)はイオンの大きさが近いため、お互いが元素を交換し合い混ざり合うことが可能なのですが、ウバローバイトを構成しているクロム(Cr)は、アルミニウム(Al)や鉄(Fe)とイオンの大きさが異なるため、混ざり合うことができません。
混ざり合うことが可能なグロッシュラーとアンドラダイトは、赤色系ガーネットと同様に連続的な固溶体となり中間タイプが存在します(Gemmy136号P.8、ガーネット化学式と表を参照)。この中間タイプは、マリ・ガーネット(商標ネーム)と呼ばれています。
※固容体:適度な温度と圧力下で相互の成分が混ざり合い、ひとつの結晶体になること。

図1 ウグランダイト系列の分類と特性

図1 ウグランダイト系列の分類と特性

『ウグランダイト系列』の変種

これら3種のガーネットは宝石としての一般的な色相は緑色系と思われがちです。しかし実際は他の色相もあり、その色相によって更に細かく変種が分けられることもあります(表1)。
今回は緑色系ガーネットの代表とも言える、デマントイドとグリーンのグロッシュラーを紹介します。

表1 ウグランダイト系列の変種

 アンドラダイト   ・デマントイド(黄緑~緑色)
 ・アンドラダイト(褐緑色)
 ・トパーゾライト(黄色)
 ・メラナイト(黒色)
 グロッシュラー   ・グロッシュラー(ホワイト・イエロー・ゴールデン・オレンジ・グリーン)
 ・ヘソナイト(褐赤色・橙赤色・橙黄色)
 ・ハイドログロッシュラー(ホワイト・グリーン・ピンク)
 ウバローバイト(緑色)   

デマントイドとグリーングロッシュラーの採掘の歴史

緑色系のガーネットは赤色系ガーネットに比べ歴史は意外と浅く、19世紀半ばにロシアのウラル山脈でデマントイドが最初に発見されました。ロシア帝国の貴族にこよなく愛された宝石のひとつでしたが、ロシア革命により宝石の採掘は途絶えてしまいました。その後、緑色系ガーネットの代表となったのは、東アフリカから発見されたグリーングロッシュラーガーネットでした。小さいながらも濃い緑色のグロッシュラーガーネットは一躍人気を集め、現在でも、最初に発見されたケニアのツァボ国立公園に因んだ「ツァボライト」の名称で親しまれています。また、デマントイドも20世紀末のソ連崩壊により採掘が再開されました。ダイヤモンドと同じようにキラキラとした虹色の輝きをもつデマントイドはとても特徴的で、「デマントイド」という名称はダイヤモンドのようなという意味からきています。現在では、ロシアの他、アフリカのナミビアやカナダ等からも採掘されています。

デマントイドとグリーングロッシュラーの特性

写真1

写真1

次に、デマントイドとグリーングロッシュラーの色相、屈折率、比重についてお話します。
写真1は、左側から、A.グリーングロッシュラー、B.デマントイドです。

〔色相〕
グロッシュラーは、色となる元素を元々持っていないので、理想的な端成分は無色です。そこに、微量のクロム(Cr)とバナジウム(V)が入ることで、緑色のグリーングロッシュラーとなります。一方、デマントイドは、アンドラダイトが化学組成上、色となる鉄(Fe)元素があるため元から黄色や褐色の色相を持っていますが、そこにクロム(Cr)が入り黄緑から緑の色相となります。

〔屈折・比重〕
グリーングロッシュラーとデマントイドとでは、グリーングロッシュラーのほうが屈折率、比重ともに低く、デマントイドは高いです。これは、赤色系ガーネットと同じように鉄(Fe)が原因です。

〔分光性〕
ハンドタイプの可視分光器では、グリーングロッシュラーは特徴的な吸収は観察されません(色因となるバナジウム(V)の吸収は不明瞭)。一方、デマントイドには、440nm付近に鉄(Fe)の吸収バンドが見られ、濃緑色のものには690,685,634,618nmにクロム(Cr)による吸収が見られるものもあります。

デマントイド可視分光

デマントイド可視分光

  屈折率 比重 分光性 インクルージョン
グリーングロッシュラー 1.740 3.66 特徴的な吸収はなし 針状、液体
デマントイド 1.81以上 3.83 クロム(Cr)微弱,鉄(Fe) ホーステール

終わりに

ガーネットにはあらゆる色相があり、また多くの変種が存在します。今回は紹介できませんでしたが、糖蜜状組織と切りかぶ状インクルージョンで有名なヘソナイトガーネットや、アレキサンドライトのように変色性をもつカラーチェンジタイプのガーネット、最近レインボーガーネットの愛称で人気を集めていた天川村のアンドラダイトガーネットなどがあります。ガーネットは、類質同像(※)であるがゆえに多くの特徴的な変種が存在し、魅力的な鉱物のひとつになっています。地球の内部には、何十億年前にできた未知のガーネットがまだまだ眠っていて、そのようなガーネットがこれからも産出されるかもしれません。
※類質同像:類似の化学組成をもち、共通の結晶構造を有する鉱物の関係。

当研究所の分析報告書のご紹介

デマントイドガーネットには、繊維状の結晶が放射状に伸びて馬のしっぽのようにみえる「ホーステールインクルージョン」とよばれる結晶が多く観察されます。このインクルージョンはデマントイド特有のインクルージョンです。当研究所では、ホーステールインクルージョンが入っている場合、ご希望によりそのガーネットの拡大写真付の分析報告書を発行しています。(※通常の鑑別書+内部世界分析報告書という形での発行となります)

大阪支店  山根 千恵