Gemmy 134 号 「エメラルドの産地と特徴 -その2-」

Gemmy


Gemmy 134 号 「エメラルドの産地と特徴 -その2-」

2. 北米

カナダ・アメリカ

商業的価値がない。

3. ヨーロッパ

オーストリア

ハバヘタール渓谷の鉱山は1797年に最初の記録がありますが、その存在はたぶんローマ時代から知られていたと言われています。4個の横坑を持つ現在の鉱山は1860年にウィーンの宝石職人サミュエル ゴールドシュミットによって始められました。鉱山はその後所有者がたびたび代わり断続的に採掘されていましたが、1949年にはほぼ廃坑となりました。
産出されたエメラルドは、一般に低い品質で、カットに適した結晶は殆んど希であったようです。

4. アフリカ

エジプト

◆最も古い鉱山で歴史的価値はあるが、現在商業的価値はない

◆スーダンとの国境付近で数千年前に採掘されていた

ザンビア(コンゴとの国境)

◆鉱山:最大の鉱山はKagem Mining Limited

◆採掘:60年代 最も重要な産出国の一つであった。以前は露天掘りであったが、現在は地下を掘っている。

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:角型二相、イルメナイト

写真1・角型二相内包物

角型二相内包物

写真2・イルメナイト内包物

赤褐色のイルメナイト内包物


ジンバブエ(サンダワナ エメラルド)
写真3・トレモライト内包物

密集した分布を見せるトレモライト内包物

◆品質:濃いめの深い緑色で高品質

◆母岩:輝石を多く含んだ片岩(典型的な雲母片岩ではない)

◆内包物:トレモライト、カミングトナイト

マダガスカル
写真4・マダガスカル産エメラルド

マダガスカル産
エメラルド

◆母岩:輝石を含んだ典型的な雲母片岩

◆産出量:非常に少ない

◆内包物:アクチノーライト、雲母、トルマリン

ナイジェリア
写真5・ナイジェリア産エメラルド原石

ナイジェリア産
エメラルド原石

写真6・三相内包物

チューブ状の三相内包物

◆母岩:アルカリ加工岩中のグライゼン(英雲母)群集

◆内包物:蛍石、雲母、モナズ石、曹長石、イルメナイト、グロースストラクチャー、コロンビアに似た3相内包物

◆吸収スペクトル:鉄関連の吸収バンドはクロム/バナジューム関連の吸収バンドよりも強い。

◆屈折率:低め(通常光1.566~1.574、異常光1.560~1.569)

◆商業的価値がある。

タンザニア

1969年にアルシャの南西約96kmにあるマジモト村近くでエメラルドが発見されており、かつては素晴らしい草緑色のエメラルドを産出していたようです。最近では、低品質のものがマンゴーラで発見されており、現在の産出量は不明。

南アフリカ

1927年にトランスバールの北東部にあるグラベロッテ地区からエメラルドが発見されています。
1929年当時、複数の鉱山会社が操業を行っていたらしいが殆どは長続きしなかったようです。最近も宝石質の結晶が産出されているようですが産出量は不明。

5. アジア

ロシア(ウラル)
写真7・ロシア産エメラルド

ロシア産エメラルド

◆鉱山:マリシェボ鉱山

◆採掘:露天掘り

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:黒雲母、アクチノーライト

◆吸収スペクトル:クロム/バナジウム関連の吸収バンド。鉄の吸収バンドは700~900nm付近に見られる。370と426nmを伴うことがある。

◆屈折率:通常光1.581~1.591、異常光1.575~1.584

◆90%は低品質

写真8・アクチノーライト内包物

節をもった茎状のアクチノーライト内包物

写真9・黒雲母内包物

魚の鱗のような外観の黒雲母内包物


パキスタン(スワット渓谷)

鉱山はペンシャワール近郊に2つあります(グジャキリとミンゴラ)。

写真10・パイライト内包物

金属光沢を放つパイライト内包物

◆品質:サンタ・テレジーニャに似た黒っぽいエメラルド

◆母岩:滑石が豊富な白色の炭酸塩岩

◆内包物:方解石、ドロマイト、パイライト、ルチル、ヘマタイト、クロマイト、フックサイト、クローライト、滑石、角閃石、トルマリン、フェナカイトなど

◆吸収スペクトル:クロムバンド以外にバナジウムと鉄の吸収も見られる

◆屈折率:高い(通常光1.584~1.600、異常光1.578~1.593)

アフガニスタン

エメラルドは、標高5000メートルの険しい山々が連なるアフガニスタンのパンジシール渓谷に存在します。400余りの石脈があり、世界でも最高級のエメラルドを産出しています。パンチシールは約30年前に地元の農民によって偶然発見され、以降政府軍の開発で、現在200以上の鉱山が稼動しています。

写真11・アフガニスタン産エメラルド

アフガニスタン産
エメラルド

◆母岩:白雲母片岩

◆内包物:炭酸塩鉱物、パイライト、石英、非常に顕著に発達した成長線

◆吸収スペクトル:クロムバンドが優勢で鉄に関連するバンドが様々な強度で見られる

◆屈折率:高い(通常光1.585、異常光1.580)

インド

1943年、第二次世界大戦中の戦略物資としてベリリウム鉱および雲母を探索した際にラジャスタンのアラワリ山脈でエメラルドが発見されています。商業的価値は無かったようです。

◆母岩:黒雲母片岩

◆内包物:コンマ状二相内包物、黒雲母

◆吸収スペクトル:クロムバンド以外に鉄の吸収も見られる。

◆屈折率:高い(通常光1.593、異常光1.585)

中国

商業的価値がない。

6. オーストラリア

1890年にニューサウス・ウェールズ州エンマビルで最初の発見が報告されています。その後、幾つかの鉱床が発見されていますが、商業的価値は無かったようです。


(終わり)

【GYOHO 質屋業報 2006年10月号 より転載】