Gemmy 133 号 「小売店様向け宝石の知識「アンティークジュエリー」」
アンティークジュエリー・Antique Jewellery
アンティークジュエリーとは骨董装身具の意味である。ところでアンティークとは何なのか。ふつう、アンティークとは100年以上経っている、美術的価値のあるものいう。東京税関によると、製作から100年以上経過し、それを証明できれば古美術・骨董品と見なされ無関税の由である。しかし、実際のビジネスではそう厳密なことでなく、50年ぐらい前のものでもアンティークとする場合もあるようだ。海外の骨董市には、本物、お宝に混じって、ジャンク(がらくた)、リプロダクション(複製品)、フェイク(偽造品)イミテーション(模造品)セコハン(中古品)レトロ(懐古品)エステート(1940~50年代の資産品)など安物から高額物まで種種雑多に並べられている。ここでは価値のあるなしにかかわらず、「古き良きもの、昔ならではのもの、懐古趣味のもの」がごったに展示販売されている。有名な骨董品市としてはロンドンのアンティークマーケット(アンティークリアン〔古美術愛好家〕には絶対見逃せない骨董市)、パリの蚤の市(日曜日にパリ郊外に立つ骨董品・古物市)がある。とくにロンドンのアンティークマーケットは大規模で店舗数も多く、品揃えも豊富だ。そのほかアンティークリアンには見逃せないアンティークレーン、ストリート(骨董品横丁、骨董品街)がロンドン市内各所にある。
ロンドンではヴィクトリア&アルバート美術館は必見である。ヴィクトリア女王夫妻は、工業近代化のみならず文化発展も同時に進行させ、多くの美術品を残し黄金のヴィクトリア時代を築いた。ここから世界にアート&クラフト運動が広まった。当美術館の宝飾品は圧巻である。英国の古き良き時代の夢の作品が見られる。英国人はヴィクトリア朝時代の美術品に格段の誇りと敬意を払っている。ヴィクトリアン調建物に住み、家具、調度品、衣裳、宝飾品をヴィクトリア風に一式揃えて生活しているアンティークマニアもいるほどだ。
さてアンティークジュエリーをロンドン市内のマーケットで購入するときの心得と注意すべき点は次のようである。
(1)基本的な宝石の知識と鑑定眼、審美眼を常に養成しておく。
(2)旅行案内書には、ロンドンのアンティークストリートについて詳しく記述されているので下調べを十分にする。
(3)ロンドンは大英博物館やヴィクトリア&アルバート美術館、また美術専門店などに、アンティークジュエリーのコレクションがあるので、素晴らしい第一級の優れたジュエリーを予め鑑賞しておく。
(4)サザビーズやクリスティーズなどオークション会社はじめ、ジュエリー専門出版社の専門書や案内書を読んで、アンティークジュエリーについて事前によく勉強しておくことである。
アンティークジュエリーを用途別に見ると、リング、ブローチ、イヤリング、ペンダント、ブレスレット。その他時計、文房具、置物なども入る。材質については、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、メノウやロッククリスタルなどの無機質宝石、それに真珠、さんご、象牙、鼈甲、琥珀、ジェットなどの有機質宝石、これらの天然素材にプラチナ、ゴールド、シルバーの貴金属との組合せである。この組合せが歴史的に見て正確適正であるか判断することである。古いものであるから、ジュエリー自体の石や材質に破損や消耗などの欠陥をチェックし、作品のコンディションの善し悪しを確認する。
しかしアンティークジュエリーが本物か、その善し悪しを的確に判断することはそう簡単ではない。長年の経験と場数を踏まなければそう簡単に見極めることは至難である。したがって大事なのは、相談できるアンティーク専門家を持つか、信頼できる専門店で購入するかである。購入目的をはっきりさせてから購入することも大切だ。自分用に日常的に使用するのが目的か、長期的にコレクションとして蒐集するのか。またカメオを目的に蒐集する、時代別に蒐集する、ブローチ中心に蒐集するとか、目的方針を決め計画をたててから蒐集実行に入ることである。アンティークジュエリーには、宝石のきらめきと謎めいたドラマチックなストーリーが秘められている。現代では再現不可能になってしまった精緻、巧みな技巧、独特な石づかいがある。アンティークジュエリーを現代のわれわれが手にするとき古き良き時代のゴージャスな夢の中にいざなうことができる。アンティークジュエリーをあなたの超お宝ジュエリーにするには用意周到な下調べ、準備心構えが必要だ。
「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊