Gemmy 132 号 「CIBJOバンクーバー総会」

Gemmy


Gemmy 132 号 「CIBJOバンクーバー総会」

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PanPacific Hotel

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July 24 – Morning Session

今年のCIBJO総会は7月24日から27日の4日間、カナダ西岸の都市バンクーバーに世界各国から300名以上の出席者を集め開催されました。本年はCIBJO創設80周年を迎える年であり、総会初日には正式に国連からコンサルタント組織として認められたことが発表され、この数年間改訂作業が進められていた各ブルーブック(色石、ダイヤモンド、真珠)の承認の件もあり、例年になく活発な国際会議となりました。

CIBJO 総会は7月24日からバンクーバーのパンパシフィックホテルで開催され、総会初日の午前9時から始まった開会式では、宝飾品業界の長期の健全を確実にするために業界は若い消費層にすばらしい宝飾文化を浸透させる努力をするようにとCIBJOカヴァリエリ会長からの呼びかけの挨拶で総会はスタートしました。これに続きカナダ政府代表、国連代表、産業団体の各代表から挨拶があり、特に国連経済社会理事局主任メゾイ女史からは、CIBJOが国連の経済社会理事局(ECOSOC)の公式相談を受ける唯一の組織に認められたことが公に伝えられました。

その後、各ゲストスピーカーから様々な発表があり、スピーカーの多くは12月公開予定の映画“The Blood Diamond”について触れました。これは、レオナルド・デカプリオを主役として、1990年代後半のシエラレオネのダイヤモンド密輸業者の話です。この映画が公開前に問題として捉えられている理由は、キンバリープロセス1) やシステム オブ ワランティ2) の機能で紛争ダイヤモンドを排除している業界力が示されていないために紛争ダイヤモンドが市場に出回っているイメージを与える可能性がある、そしてそのイメージのため一年で最もダイヤモンドが売れるクリスマス時期にダイヤモンドの不買運動が起きることが懸念されるためです。

1)キンバリープロセス
国連、政府、NGO、およびダイヤモンド業界によって始められた人道問題に関する共同の取り組み。その取り組みは紛争資金を供給する不法に取り引きされるダイヤモンド原石を世界から排除するもので、今日68の政府がNGOとダイヤモンド産業界に協力して法的な抑制を行なっている。

2)システム オブ ワランティ
キンバリープロセスに則ったダイヤモンド原石から研磨されたダイヤモンドおよびそのダイヤを含む宝飾品であることを消費者に証明するものためのもので、買い手および売り手はインボイス上でキンバリープロセスに則ったものであることを保証する定められた声明文を記載することが義務付けられている。

総会2日目は各委員会に分かれて会議が進められました。

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July 25 – Pearl

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July 23 – Pearl Commission

真珠委員会(議長:Martin Coeroli;フレンチポリネシア) は、昨年の香港総会で新たに結成されたパールステアリングコミッティ(運営委員会)が一年間という短期間で密に活動し作成したISOフォーマットで書かれた真珠ブルーブックの検討がなされました。

大きな変更を紹介しますと、新しい真珠ブルーブックでは消費者に“告知を必要とする真珠の加工処理”と“告知を必要としない加工処理”が一覧表に纏められています。本委員会の2日前に開かれていたパールステアリングコミッティでは、日本側代表の主張は通らず、漂白、調色、および加熱(加温を含む)は“告知を必要とする加工処理”に決定されました。しかし、漂白だけはこの本会議でどちらの分類に入れるかが再度討議され、アコヤ真珠の漂白と黒蝶真珠を漂白してチョコレート色にするのは目的が大きく異なり、チョコレート色のように色が変化しているものに対しては色の改変(Colour alternation)という定義と用語を新たに設け、“告知を必要とする真珠の加工処理”に分類し、アコヤ真珠などの漂白だけは“告知を必要としない加工処理”に分類することが最終的に決定されました。

ダイヤモンド委員会(議長:Harry Levy; 英国)からは、技術的な部分を排除したダイヤモンドブルーブックが提出されました。但し、技術的な部分は一般仕様書3) PAS1048を“引用規範”としてその中で紹介しており、このPAS1048は以前ISO化を目指して纏め上げられ、国際規格として承認されなかったものであるため、“引用規範”とすることに反対意見が出されました。決議の結果、PAS1048をそのまま残すことで決定されました。
その他トリートメント以外の用語の使用禁止、すなわちエンハンスメント、プロセスなどの用語の使用禁止が決定され、先月のWFDBテルアビブ総会で決定された合成ダイヤモンドへのグレードに対する考えを支持する声明文が作成されました。

3)一般仕様書
専門家同士のコンセンサスを示す規範文書で、ISO作業グループの技術専門家間の同意に基づいており、投票で委員会メンバーの1/2以上の賛同が得られれば、PASとして発行できる。

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July 25 – Colored Stone Commission

色石委員会(議長:N.アラウディーン;ヴァラサクスリ委員長の代理として)
昨年香港総会で承認された色石ブルーブックの内容の一部改定が提案され、満場一致で承認されました。しかし、昨年から大きな課題として取り組んできた第8 条(一般開示)と第9条(特別開示)の統合について、日本は現在のJJA/AGLルールが基本的に完全開示を行なっているため統合に賛成で、いち早く統合のための案を色石ステアリングコミッティに提出して来たわけですが、ドイツやフランスなどの強い抵抗があり統合の実現には至りませんでした。但し、全出席者は完全開示がCIBJOブルーブックの目標として残っており、ブルーブックの第8条と第9条の改定、あるいは代替の解決策を求めて再びステアリングコミッティを年内に開催し議論を続けてゆくことで同意しました。
その他、ブルーブックは業界人であっても専門用語を知らない限り読みづらいものであるため、消費者や業界人にとって判りやすい小冊子を作成することが提案され、こちらも承認が得られました。

ラボラトリー委員会(議長:Héja Garcia-Guillerminet;フランス)
ラボラトリーステアリングコミッティでは、現在のCIBJO認定ラボラトリーのシステムがヨーロッパ法に照し合せると独占禁止法に抵触する危険性があるとの指摘を法律事務所から受けており、CIBJOと認定ラボの関係および法律的な問題の無いシステムの再構築を行ない、最終的な案が発表されました。
その結果、一国一機関のCIBJO認定ラボラトリー制度は廃止され、ラボの種類に関係なく条件を充足していれば如何なるラボでも登録申請が出来るようになり、またラボラトリー委員会の名称は宝石学委員会に改め、今後宝石学および技術的な側面のみを扱うようになるというものでした。これらの提案の採決は3日目の全体会議へとまわされ、そこで承認されました。
その他、合成ダイヤモンドのグレード用語について話し合いが行なわれ、ここでは天然と同じグレード用語を使用するべきではなく、明らかに異なる用語で合成ダイヤモンドの等級付けをするようにラボラトリーと交渉しているWFDBとIDMAの姿勢が評価されました。

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July 26 – Assembly of Delegates

総会3日目は、朝8時からはセクターIII 会議が開かれ、セクターIII に属する色石、ダイヤモンド、真珠、ラボラトリーの各委員会議長から決議事項報告が行なわれ、質疑応答の後、セクターIII 会議でも全て承認されました。
続いて倫理委員会が開催され、ここでも話題は紛争ダイヤモンドを扱った映画である“The Blood Diamond”の問題が取り上げられていました。また、CIBJOメンバーはWorld Diamond Councilのシステム オブ ワランティの導入をモニターし、必要であるならばそれに応じないメンバーに対して懲戒処分を与え、システム オブ ワランティを採用する会社の確保がメンバーに呼びかけられました。その他、倫理委員会は色石、真珠、および貴金属セクターの範囲で倫理に関わる問題に対処するための戦略を定式化する研究を開始することも発表されました。
午後からは本総会の総括である全体会議が開かれ、活動報告、予算報告、続いて各セクターおよび委員会議長からの決議事項報告が行なわれ、最後に次回CIBJO総会はケープタウン(南アフリカ)で2007年3月に開催すると発表されCIBJOバンクーバー総会は無事終了しました。

CIBJO(国際貴金属宝飾品連盟)について
CIBJO(World Jewellery Confederation)の前進であるBIBOAは1926年にヨーロッパの宝石貴金属業界の情報交換と国際的な相互利益のために発足し、その後1961年に国際的な組織として再編成され現在のCIBJOとなりました。
日本はJJAの前身である日本貴金属宝飾品製造卸組合連合会が中心となり1979年5月のCIBJO総会で日本の加盟が全会一致で承認され、以降日本国際貴金属宝飾品連盟(CIBJO OF JAPAN)としダイヤモンドマスターストーンの導入、CIBJOレポートの発刊等を行い、1988年設立されたJJAがこれを承継し、総会に毎回代表を派遣しています。
CIBJO では、貴金属宝飾品の製造関係をセクターI 、貴金属宝飾品の流通関係をセクターII 、ダイヤモンド、色石、真珠などの宝石類、およびラボラトリーに関することについて話し合うセクターIII の3部門と倫理委員会に分けています。参加国はこれらの部門や委員会に代表を指名し出席させることが出来ます。