Gemmy 131 号 「ラボトピックス「ブラウンのHPHTプロセスダイヤモンド」」
ブラウンのHPHTプロセスダイヤモンド
既にご存知の事と思いますがHPHTプロセスにはI型のダイヤモンドを対象にしたものと、II型のダイヤモンドを対象にしたものに大別されます。I型のダイヤモンドは主な不純物として窒素や水素を含み、可視領域で様々な吸収を起こし、それがダイヤモンドの着色原因に成っています。II型のダイヤモンドは不純物を殆ど含まない無色のものや、塑性変形に因ってブラウンやピンクになるもの、或いは不純物としてホウ素を含みグレーやブルーになるものがあります。
I型のダイヤモンドのHPHTプロセスは、不純物の窒素の結合を高温高圧状態に置く事で、解離と再結合を誘発させ新たなカラーセンターを作り出し色を変化させています。II型の場合はI型とは異なり、塑性変形を修復する事でブラウンの石を無色にしたり、また稀にピンクに変化するものもあります。ホウ素を含むIIbタイプと呼ばれるものは、褐色味を取り除く事で、石が本来持っていたブルーの色をより鮮明にさせるこよも可能です。
今回ご紹介するのはII型のHPHTプロセスされたものですが、ブラウンの色調がありカラーグレードではIカラー相当のものでした(写真1・2)。処理した石にしては何とも微妙な色と言えますが、現実にこの程度の色調のグレードであっても、HPHTプロセスされたダイヤモンドがあると言う事を知っておく必要があります。さらにこれよりもブラウンの色の濃いものが存在する可能性も一概に否定することはできません。この石が無色化に失敗したものなのか、或いはこれ以上処理をしても変化しない性質のものなのかは、処理をした当事者以外知りようがありません。石の特徴としては、内部に薄く褐色の色帯があり、これが石の色に反映されていると思われます。また偏光下での検査では弱い干渉を示しました。蛍光は長波紫外線には弱い青色蛍光を示しましたが、短波紫外線に対しては不活性でした。
写真1
写真2
II型のブラウンのダイヤモンドは、HPHTプロセスをする前のものという認識が一般的で、検査の必要性に疑問を持たれるかも知れません。しかし今回のような例もあり、たとえブラウン味をもつ石であっても処理が施されている可能性がある以上、十分な注意をはらい確実に件さを行う必要があるのではないでしょうか。