Gemmy 129 号 「小売店様向け宝石の知識「ネフライトとジェイダイト」」
ネフライトとジェイダイト
ネフライトは緑色半透明の宝石が代表的で鉱物名は天然アクチノーライト-トレモライトです。中国では人間に生命力を与える「奇跡の宝石」「魔法の宝石」として崇められ、昔から“yu”と呼称され「王の玉」と尊重されてきた長い歴史を持ち、5000年以上のヒスイ文化が栄えてきました。
緑色の宝石は強い生命力を象徴し、身体から災難を防ぎ、精神力を強め、健康を増進すると考えられてきました。中国ではヒスイへの崇敬は高く、ヒスイを置物として部屋の装飾品に、また身体に着用するために指輪、腕輪、耳輪、首輪に加工され、おしゃれに魔除けに使われてきたのです。
中国、東南アジアに旅行すると人々が緑色の宝石を身につけているのをよく目にします。緑の宝石ヒスイは五徳〈仁・義・礼・智・勇〉を高める力があり、また五福〈長寿・健康・徳・富・自然老衰死〉も象徴しています。中国の農村では遺体の耳、鼻、口などにヒスイの玉を入れ、故人よ永遠なれと埋葬する風習があります。ヒスイがいかに生活に密着しているかがわかります。同じような風習は中央アメリカにもあります。
ヒスイは英語Jade・ジェードで緑色の石を意味し、スペインの征服者がメキシコを征服したときに名付けた呼び名です。緑の宝石ヒスイを1789年ドイツの鉱物学者ワーナーはネフライトという語を使いました。しかし同じように見える緑色の石は実は鉱物学上まったく違う2種類であることを1863年ダマー教授が発見し、それまでのネフライト(Nephrite)の呼称とは別に一方をジェイダイト(Jadeite)(硬玉)と名付け区別しました。
中国人にとってヒスイといえばネフライトのことで、加工しやすく産出量も多いので装身具のほか彫刻工芸品として玉器がつくられ珍重されてきました。18世紀中期にビルマ(ミャンマー)から同じ緑色の宝石ジェイダイトが入ってくるまで、中国では古代からネフライトだけでした。本ヒスイはビルマ産ヒスイのジェイダイトを指し、ネフライトとは別種の宝石です。
NHKスペシャル番組「シルクロード」の中で、中国の古代の王たちは遺体にネフライトの小片を金の糸で編みこんだ「金縷玉衣」といわれるネフライトの衣裳をまとって埋葬された話、トルキスタンの「崑崙山脈」北側の白玉川から産出されるネフライトが砂漠を往く駱駝の背に乗せられてホータンから北京へ運ばれる「ヒスイの道」の映像が印象的でした。1295年マルコポーロはホータンを訪れた際にヒスイ産地のことを記述しています。なおネフライトの産地はニュージーランド、ロシア、台湾、米国、カナダなど世界に広く分布しています。
ネフライトの主要特長は 1.靭性強度には優れているがモース硬度では本ヒスイ(ジェダイト)に及ばない。 2.緑色を中心にホワイト、ブラックがかった多彩な色種 3.古代彫刻品にも近代デザインの装身具にも想像力をかきたてる 4.ヒスイに似た落ち着いた深い緑の色合い、てり、半透明度は、和服を含む東洋の衣裳にまた洋服にも似合い、シルク、ウール、ベルベットなど現代風の服地にも十分に合わせられます。
ネフライトは文化教養ある人、気品ある人、落ち着いた人、知的な人によく似合う宝石です。
「楽しいジュエリーセールス」
著者 早川 武俊