翡翠という宝石の名は、清流に住む「カワセミ」からつけられたものです。そうあの青緑の美しい色をした鳥ですね。翡翠、たしかに東洋を代表する宝石にふさわしい、なんとも美しい名前ですね。
この翡翠は、中国では「玉(ぎょく)」と呼ばれ、数ある宝石の中でも特別な地位を与えられています。たとえば「玉座」という言葉を聞いたこと、ありませんか?それは国王の席のこと。翡翠がここまで重要視されるのは、中国の紀元前1100年、殷王朝時代のある物語が背景になっているからです。それは、こんなお話です。
『ある日政治家の呂尚は、殷の支配下にあった周の国で釣りをします。
するとまもなく鯉が釣れ、鯉の腹から一枚の翡翠の板が出てきました。
その板にはメッセージが書かれていました。
<次の王朝は周である。そして黄金時代を迎える。
お前はその王朝の実現に手を貸さなければならない>
その時ひとりの若者が呂尚に声をかけます。呂尚は翡翠のことを話します。
と、若者はひざまずき、こういいます。
「わが父、太公はあなたが現われるのを待ち望んでいました。ぜひお力を」
やがて周は殷を倒して国を統一。目覚しい発展を遂げます』
翡翠が国王たちに大切にされてきた理由はこれでお解かりですね。それにしても、翡翠、カワセミ、川釣り、鯉・・・。背景に緑したたる美しく大きな自然を感じませんか?翡翠とはそういう資質をもった宝石なのかもしれませんね。余談ですが、釣り人のことを「太公望」と呼ぶのもこの故事を起源としています。