持ち主を必ず不幸のどん底に落とすダイヤモンドがあります。それは「フランスの青」、「王冠のブルーダイヤモンド」、「タベルニエ・ブルー」など、さまざまな別称がつけられている『ホープ・ダイヤモンド』と呼ばれるダイヤがそれです。1645年にインドからヨーロッパに持ち込まれて以来300年。絶えず持ち主は不幸・不運に見舞われます。
1645年、宝石商のタベルニエが鉱山で青いダイヤモンドを購入します。最初の持ち主、ルイ十四世は国家の財政悪化に悩まされ、子どもや孫に先立たれてしまう。ダイヤを受け継いだルイ十六世の妃のマリー・アントワネット、断頭台の露と消える。1792年新政府の王室財宝庫から盗難。
事実かどうかわかりませんが、こんな逸話もあります。1800年代に入ってまもなくアムステルダムのダイヤカット職人のもとに、3個に分割して欲しいとの依頼。職人の息子がその1個を盗む。父親は責任をとって自殺。息子も後を追う。
なんとも恐ろしいダイヤモンドですね。ところが不幸はまだこれで終りではありません。
1830年銀行家のヘンリー・ホープが入手。彼の死後、妻のアデーレが『ホープ・ダイヤモンド』を相続。しかし孫のヘンリー・フランシス・ホープの代で破産してしまう。次にロシア貴族が手に入れるが、ナゾの死を遂げる。1909年手に入れた宝石商が自動車事故死。売り先だったトルコ王も革命によって廃位の憂き目に。次にダイヤを手に入れたのはアメリカのマクリーン夫人。しかし夫人にも不幸が。9歳の息子は車にはねられて死亡。娘は睡眠薬で自殺。夫もアルコール依存症に。
マクリーン夫人の死後、ニューヨークの宝石商ハリー・ウィンストンに売却され、 10年程彼が個人コレクションとして所有した後にスミソニアン協会に寄贈されました。こうして数々の不幸をまきちらしてきた青いダイヤモンドは、いまはスミソニアン国立自然史博物館で静かに眠っているそうです。やれやれ。もう誰も盗まないでね。